「アメリカヤマゴボウの毒性」□□□□□□□□□□□□□□□□
水曜日, 12月 27th, 2017■対象物□□□□□□□□□□□□□□□□
*分類:ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属。
*別名:ヨウシュヤマゴボウ、洋種山牛蒡。
*学名:Phytolacca americana L.
*英名: ポークウィード(Pokeweed)、 Inkberry。
■成 分□□□□□□□□□□□□□□□□
*硝酸カリ、フィトラッカトキシン(phytolacca toxin)。
*phytolaccatoxin:フィトラッカゲニン phytolaccageninをaglycone(非糖部)とする数種の配糖体(サポニン)の混合物。主成分はフィトラッカサポニン E(phytolaccasaponin E )。有毒成分は煮沸により分解される。
■一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□
*北米原産。明治初期に渡来。観賞用に栽培され、野生化した多年草。根は肥大して肉質。茎は直立して上部で分枝。高さ1-2m。無毛、葉は互生で有柄、長さ10-30cm。花は6-9月。総状花序。萼片5。花弁無し。雄蕊10。花柱10。花穂は下に垂れ、宿存萼がある。液果、汁でインクの代用等着色に用いた。
*同じ仲間に中国原産と言われるヤマゴボウがあるが、「ヤマゴボウの漬物」として出回っている植物の根は別物。
■毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□
*全体(果実)。全草にサポニンのフィトラッカトキシンを含む。
*全草に硝酸カリ、phytolacca toxinを含む。
*全草特に根、実。
■症 状□□□□□□□□□□□□□□□□
*誤食で腹痛、嘔吐、下痢、痙攣を起こし、汁液で皮膚がかぶれる。子供がママゴト遊びで誤飲しないよう見守りが必要。モリアザミの根をヤマゴボウと称する地方は、名前による勘違いからの誤食に要注意。
*若芽の頃に良く茹でて水に十分に晒し食用にした結果、多食によって蕁麻疹、吐き気、下痢を起こした例が報告されている。重症になると脈拍が弱くなったり、血圧が異常に降下し、心臓麻痺を起こし、時には死亡する事例も見られるとされている。
*熟した液果は子供達がママゴトで物を染めるため手を赤くしている。フランスでは赤葡萄酒の着色に利用し、嘔吐や下痢を生じたため禁止されたとする報告も見られる。
*果実と根に有毒成分を含み、食べると腹痛・嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、痙攣を起こして死亡する。 皮膚に対しても刺激作用がある。
*嘔吐、下痢、血圧低下、心停止。
*症状発現時期:2時間。
■処 置□□□□□□□□□□□□□□□□
*①胃洗浄、②吸着薬、③下剤、④輸液、⑤対症療法。
*牛乳を飲んで吐かせ、活性炭を飲ませる。食べてから時間が経過していて吐いたり、下痢をしているようなら、催吐や下剤の投与は必要ない。水や電解質の補給のため、十分な輸液が必要である。発汗、流涎、下痢、腹痛等のコリン作動性神経刺激症状に対しては、atropinの静注を試みる価値がある。皮膚に付着したときは石鹸で洗い流す。
■事 例□□□□□□□□□□□□□□□□
*患者はヨウシュヤマゴボウの根を採取し、味噌漬け加工を行い、後日それを7名で喫食した。その後、約 2 時間経過して嘔吐症状、診察を受ける。採取した患者はキク科「ヤマボゴウ(モリアザミ)」の詳細な知識は無く、類似した名前であるヨウシュヤマゴボウが、市販されている「ヤマゴボウ」材料と誤認、食中毒に至った。
*茨城県で昼食にヤマゴボウの漬物を食べた9人全員が食後2-3時間して嘔気、嘔吐、腹痛等の症状を発現した。これは友人が自宅近くで採った洋種山牛蒡の根を漬物にしたものを貰って食べた結果だった。
■備 考□□□□□□□□□□□□□□□□
*長野県や山陰地方ではキク科のモリアザミ、フジアザミの根を『ヤマゴボウ漬け』と称して土産物として市販されていることからヤマゴボウは食べられると勘違いしてアメリカヤマゴボウの根を誤食する。
■文 献□□□□□□□□□□□□□□□□
1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 I;北隆館,2000
2)藤井伸二・監修:色で見わけ五感で楽しむ-野草図鑑;ナツメ社,2014
3)川原勝征:毒毒植物図鑑;南方新社,2017
4)中井將善:気をつけよう!毒草100種;金園社,2002
5)厚生労働省:食中毒-自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ヨウシュヤマゴボウ; http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079871.html,2017
6)森 博美・他:急性中毒ハンドファイル;医学書院,2011
7)内藤裕史・改訂第2版 中毒百科-事例・病態・治療;南江堂,2011
調査者:古泉秀夫 | 分類:63.099 | 記入日:2017.12.23 |