Archive for 10月, 2017

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「木立朝鮮朝顔の毒性」□□□□□□□□□□□□□□□□

土曜日, 10月 28th, 2017

対象物□□□□□□□□□□□□□□□□

キダチチョウセンアサガオ、木立朝鮮朝顔。
別名:エンジェルストランペット(園芸植物名)、ブルグマンシア。 
学名: Brugmansia suaveolens
英名: Angel’s Trumpet
分類:ナス科ブルグマンシア属(Solanaceae Brugmansia )。ダツラ属(Datura)から独立して、現在は別属として扱われる。
生育地:ブラジル中部原産。日本には明治時代に渡来し、日本各地で観賞用に栽培されている。

成 分□□□□□□□□□□□□□□□□

有毒成分image:全株にhyoscyamine(ヒヨスチアミン)、atropin(アトロピン)、scopolamine(スコポラミン)等alkaloid系の成分を含む。
atropine、scopolamine、l-hyoscyamine 等のtropane alkaloidを含む。

一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□

形態:低木又は高木の多年草で、春から秋にかけて、下向きに垂れ下がったロート状の花をつける。花色は一般に淡黄色から淡紅色と変化するが、白色や黄色などの園芸種も広く栽培されており、花色の違う品種が多くみられる。 耐寒性があり専ら観賞用として栽培される。エンジェルストランペットの他、属名であるブルグマンシアとも呼ばれる。以前は上向きの花をつけるチョウセンアサガオと同じDatura属に分類されたこともある。アサガオと呼ばれるが、ヒルガオ科のアサガオとは別物である。

毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□

有毒部位:全株。
tropane alkaloidは一般に副交感神経抑制作用、中枢神経興奮作用を示す。atropinは副交感神経を遮断し、中枢神経を初め亢進、次いで麻痺させ、また血圧の上昇、脈拍の亢進、分泌機能の抑制、瞳孔の散大を起こす。scopolamineはatropinと類似の作用を示すが、atropinよりも散瞳作用が強く、分泌抑制作用が弱い。
葉、根、種子。根をゴボウと間違える事例が多くある。つぼみをオクラと、また、種子をゴマと間違えて食べた事例もみられる。園芸品種が観賞用として身近に栽培されることが多く、果実や蕾がオクラと誤認される場合もあり、間違やすい野菜などの近くでの栽培を避ける 。

症 状□□□□□□□□□□□□□□□□

嘔吐、下痢、瞳孔散大、呼吸困難、痙攣、昏睡、狂乱状態、死亡。
image口渇、皮膚温上昇・乾燥・発赤、嗄声、悪心、嘔吐、嚥下困難、弛緩性便秘、失見当識、錯乱、興奮、記銘障害、幻覚、狂騒状態、譫妄、言語障害、不穏、情緒不安、高熱、頭痛、頭重感、眩暈、四肢麻痺、顔面紅潮、運動失調、筋無力、筋硬直、痙攣、血圧上昇、頻脈、血圧低下、呼吸数増加、鼾音性呼吸、散瞳、光線嫌悪、眼圧上昇、視力障害、眼振、複視、頻尿、尿閉、呼吸抑制、昏睡、対光反射消失、ショック、白血球増多症(特に小児)

処 置□□□□□□□□□□□□□□□□

①胃洗浄、②吸着薬、③下剤、④輸液、⑤対症療法。

呼吸管理、胃洗浄(長期間経過後も有効と思われるの報告)、吸着薬、下剤、輸液。拮抗薬(軽症時にはベタネコール塩化物)を経口、重症時にはネオスチグミンメチル硫酸塩、対症療法[興奮又は痙攣(diazepam筋注・静注等)]。
atropin硫酸塩は腎排泄型であるので、腎機能障害がある場合、常用量でも中毒が起きることがある。他の抗コリン薬の中毒でも、殆どがatropin硫酸塩と同様の中毒症状を示すと考えられ、処置方法もこれに準ずる。朝鮮朝顔の全草を摂取した場合も、本中毒と同様である。
atropinのヒト経口中毒量:5-10mg、ヒト経口推定致死量:成人>100mg。atropin 500mgを服用した症例でも、早期に適切な処置を行うことで救命した事例があるとの報告が見られる。

事 例□□□□□□□□□□□□□□□□

(症例1):2013 年 9 月、大阪府 。石垣市で購入した野草茶(マスイー茶)を飲んだ 2 名が食中毒症状を呈した。大阪市が当該野草茶の植物性自然毒について検査したところ、スコポラミン 10 mg / g、アトロピン image0.07 mg/ g が検出された。八重山保健所管内の施設で製造販売したキダチチョウセンアサガオを使用した石垣島産野草茶(マスイー茶)による食中毒が発生したとの報告から、当該品を含む野草茶の自主回収 。

( 症例 2 ):2009 年、岡山県倉敷市内の医療機関から倉敷市保健所へ「自分でチョウセンアサガオの花を調理して食べた後に、四肢弛緩等の神経症状を呈した者を診察した」との通報があった。事件の概要:岡山県備中保健所が調査したところ、患者は 9 月 10 日(木)昼に、自分でコダチチョウセンアサガオの花を調理して食べた後、めまい、四肢弛緩等の神経症状を訴えていることが確認された。

1977年10月18日岩手県の高校生13人が、朝鮮朝顔の種をそれぞれ数粒から400粒食べて中毒を起こした。摂食後30分から2時間して最初に出た症状は、口渇、喉の痛み、躯のふらつき、倦怠感、眠気、瞳孔の散大とされる。その後、興奮、譫妄状態、失見当識、虫を掴んだり、壁をまさぐったり、塵を掴むような動作、運動乱発状態を示す。尿失禁、強直性間代性痙攣も見られた。入院後48時間位で退院しているが、その間のことを覚えていないという健忘があり、退院時でも散瞳だけは残っていた。

1997年10月28日新潟県で、78歳の女性が亜米利加朝鮮朝顔の種を食べ、散瞳、口渇、意識混濁、譫妄の症状を呈したが、1日後には回復した。

備 考□□□□□□□□□□□□□□□□

imageキダチチョウセンアサガオやコダチチョウセンアサガオが、チョウセンアサガオとして報告される場合や、植物自然毒として報告されており、最近の統計資料には中毒発生の記載はない。しかし、キダチチョウセンアサガオが 混入した野草茶が販売された事例などの報告がある。

文 献□□□□□□□□□□□□□□□□

1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 I;北隆館,2000
2)佐竹元吉・監:フィールドベスト図書v.16-日本の有毒植物;学研教育出版,2012
3)川原勝征:毒毒植物図鑑;南方新社,2017
4)チョウセンアサガオ類;食品衛生の窓(東京都福祉保健局); http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/dokusou/01.html,2017.10.12.
5)チョウセンアサガオ類2(キダチチョウセンアサガオ);厚生労働省; http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061069.html,2017.10.12.
6)森 博美・他:急性中毒ハンドファイル;医学書院,2011
7)内藤裕史:中毒百科改訂第2版-事例・病態・治療-;南江堂,2001

 

調査者:古泉秀夫 分類:63.099 記入日:2017.10.17.

「屁糞葛の毒性-毒性無」□□□□□□□□□□□□□□□□

木曜日, 10月 5th, 2017

対象物□□□□□□□□□□□□□□□□

ヘクソカズラ(屁糞葛)
分類:あかね科、ヘクソカズラ属。
学名:Paederia scandens Merrili。
屁糞葛-001別名:ヤイトバナ・灸花、サオトメバナ・早乙女花。鶏屎藤(けいしとう:中国)。女青。
白鶏架屎藤(全草)(中国)。斑鳩飯(ハンキュウハン)、主屎藤(シュシトウ)、却節、階治藤、臭藤根、牛皮凍、臭藤、毛葫蘆(モウコロ)、甜藤(テントウ)、五香藤、臭狗藤(シュウクトウ)、香藤、母狗藤、鶏矢藤、清風藤。
*鶏屎藤果:鶏屎藤の果実。
基原:アカネ科の植物、鶏屎藤(和名ヘクソカズラ)の全草及び根。

成 分□□□□□□□□□□□□□□□□

*ペデロシド、スカンドシド、アスペルロシド等のイリドイド化合物及びγ-シトステロールを含む。葉にはアルブチン0.68%及び製油などが含まれる[鶏屎藤]。
*アルブチン0.69%、オレアノール酸1.5%、トリアコンタン、ヒドロキノン、及びフェノール、テルペンアルデヒド、ブチルデヒド、酢酸、プロピオン酸等の揮発成分を含む。種子は約9%の油を含むが、そのうちパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸の含有量が全体の10%を占める。非鹸化部分は約20%のステロールを含む[鶏屎藤果]。
*臭気の成分としてindole、arbutinを含む。全草にはイリドイド化合物のpaederoside( C 13H22O10S:ペデロシド)、scandoside(スカンドシド)、asperuloside(アスペルロシド)等が含まれる。
*全草は、イリノイド化合物のpaederoside、scandoside、asperulosideの他、γ-sitosterol(γ-シトステロール)、arbutin、テンペルアルデヒド、フェノールを含む。果実は、オレアノール酸、arbutin、トリアコンタンを含む。
*悪臭の素:細胞中に硫黄化合物ペテロシドを持ち、昆虫に食害されるなどして細胞が傷つけられると、分解して揮発性のメルカプタンを生じる。 このメルカプタンが特徴ある臭気の素。

屁糞葛-002*臭味のインドールの他、aldehydeやarbutin(アルブチン)などを含み有毒植物である。

*arbutin:α-arbutin、β-arbutinがあり、コケモモ、ウワウルシ、西洋ナシなどツツジ科のハーブに含まれており、歴史的にβ-arbutinのほうが長く使われていることから、一般的にarbutinといえばβ-arbutinを指すとされる。arbutinは天然型フェノール性配糖体である。メラニン合成に関わるチロシナーゼに直接作用し、メラニンの合成を阻害するため、美白効果があるとして、化粧品などに使用されている。また、利尿作用と尿路殺菌作用があり、尿路消毒薬とされる。

*asperuloside:CAS14259-45-1。asperulosideの働きを詳しくまとめると、
1.食べた脂肪のエネルギー変換をスムーズにサポート
2.基礎代謝をサポートし、摂取したエネルギーが消費されやすくする
3.基礎代謝が上がり、溜めにくい体へとサポート
等の効果が期待できる。またアスペルロシドは、古くなった胆汁酸の排泄を促進し、血中の新鮮な胆汁酸を増加させる。その結果、基礎代謝を向上させ、体脂肪を減らして肥満を改善する。ラットを使った試験においては、アスペルロシドの摂取により筋肉量が増加し、内蔵脂肪量が減少している。ヒト試験においては、アスペルロシドを摂取することにより、体重や体脂肪率及びBMIの減少効果があることが明らかになっているとされる。

*indole:別名:ベンゾ[b]ピロール(benzo[b]pyrrole)。C8H7N。コールタール、ジャスミン油中に含まれ、またトリプトファンの代謝生成物として動物の排泄物中に含まれる。無色結晶、融点53℃、沸点254℃、普通の有機溶媒に可溶。弱酸性化合物で、NHの駆は金属と置換する。強酸により樹脂化する。特有の悪臭を持つが、希薄溶液にすると特有の芳香になり、香料調合上に不可欠の成分の一つとして利用される。

*sitosterol: CAS:83-47-6。穀類に多く含まれる植物ステロールの一群で,炭素原子数は 29又は 30。α体が3種,β体,γ体が知られている。

*scandoside:CAS-18842-99-4。

一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□

*つる性草本。基部は木質、高さ2-3m、無毛あるいは僅かに毛がある。葉は対生し、葉柄を持つ。葉身は膜質に近く、卵形、楕円形、短円形ないし披針形を呈し、先端は短く尖るか次第に尖り、基部は円形あるいは楔形、屁糞葛-003両面とも無毛あるいは無毛に近い。円錐花序は腋生及び頂生し、広がり、分枝してサソリの尾状の集散花序となる。花は白紫色、無柄。萼は細い鐘形、長さ約3mm。花冠は鐘形、花筒は長さ7-10mm、上端は5裂し、毛抜き合わせに配列し、内側は紅紫色、粉状の柔毛に覆われている。雄蕊は5本、花糸は極めて短く花冠筒内に着生する[中薬大辞典,1985]。

*全体に悪臭があることから、命名された名前である。日本各地及び朝鮮、中国、フィリピン等温帯から熱帯に分布。草地や藪に多い蔓性の多年生。茎は右巻(左巻)きで、長く伸び他物に絡みつく。葉は幅4cm、長さ7cm程の披針形で対生する。有柄、長さ4~10cm。有毛、托葉あり。花は夏、短い柄を出し、集散花序を付ける。花冠は鐘形で、先は5浅裂し灰褐色、内側は鮮やかな紅紫色で、毛が多く、地味だがよく見ると美しい。長さ1cm位。内側に毛が多く、単柄である。

毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□

*果実の誤食で下痢、呼吸麻痺。
*有毒性成分と症状として、臭気の成分としてインドール、アルブチンを含み、果実の誤食で下痢、呼吸麻痺を起こす。
*鶏屎藤の場合、水煎餾液はマウスに対して毒性は示していない。腹腔内注射0.01mL/g体重は特に毒性を示していない。アルコール製剤は麻酔下の動物(ネコ、ウサギ、イヌ)に対して、降圧作用を示したとされるが、特に毒性は報告されていない。内服は煎じるか酒に浸して服用するとする記載も見られる。また内服では顕著な副作用及び毒性反応は見られなかったとする報告も見られる。

*屁糞葛について毒草という表記がされた図書も見られるが、全草について動物実験の結果、鶏屎藤として使用される中薬では、経口投与がされており、毒草という評価は、屁糞葛の持つ特異な臭気に由来する解釈に基づく物ではないかと思われる。但し、実については外用剤としての使用しか報告されておらず、有毒か否かの判断をするデータの入手はされていない。

症 状□□□□□□□□□□□□□□□□

*下痢、血尿、間質性痙攣、呼吸困難、呼吸麻痺。

処 置□□□□□□□□□□□□□□□□

*症状に対応した処置を講ずる。

事 例□□□□□□□□□□□□□□□□

屁糞葛-004*体質改善を目的に煎じて飲んだ人がいるが、飲用は全く不可とする報告がある。
*具体的な誤食例の報告は確認できなかった。

備 考□□□□□□□□□□□□□□□□

*黄褐色に完熟した果実のサラッとした果汁は「ヒビ」によいとされる。冬季に熟し、指で潰しても直ぐ潰れるので利用し易い。
局方アルコール 250mL
潰した果実        適量
約1週間冷暗所保存。時々この液を漉し、
グリセリン 200mL
浄水              適量      
全量              1000mL

*ヘクソカズラの果汁には抗菌性があり、皮膚に潤いを与える作用が強い。野外で毒虫に刺された場合、本品の花でも葉でも、よく揉んで汁液をなすり付けると効果がある。

*中国の鶏屎藤は、凍傷や毒虫に刺されたときに用いる。なお中国では全草を煎じて下痢、腹痛、関節痛、腫れ物に使用する。

*インドネシアでは駆風薬として知られている。

*果実は、抗菌作用が、根には、下痢止め、腎臓脚気の利尿薬の効果がある。全草を、黄疸、下痢、消化不良に用いる。ワセリンなどと練り合わせた実を手荒れに、果汁を霜焼け、ひび、あかぎれにつけ、焙った生葉は腫れ物に貼る他、ねんざ、神経痛、虫くだし、睾丸の腫れに薬効があるとされる。徳之島では、切傷に用いる。

*鶏屎藤果:液汁を塗布すれば毒虫による刺傷を治すことが出来る。また、凍瘡の薬にもなる。

文 献□□□□□□□□□□□□□□□□

1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 II;北隆館,2000
2)川原勝征:毒毒植物図鑑;南方新社,2017
3)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
4)水野瑞夫・他:くらしの薬草と漢方薬-ハーブ・民間薬・生薬-新日本法規,2014
5)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版,2011
6)奄美群島生物資源Wevデータベース; http://www.amami.or.jp/kouiki/seibutsusigen/detail_plant/plant_detail_911.html,2012.8.31.
7)中井将善:気をつけよう毒草100種;金園社,2002
8)http://boo-bee.cool.coocan.jp/plants/lamiids-gentiana-solana/yaitobana.htm
9)上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第一巻;(株)小学館,1985

 

調査者:古泉秀夫 分類:63.099. 期日:2017.10.4