「カタバミの毒性」 □□□□□□□□□□□□□□□□
金曜日, 5月 12th, 2017
■対象物□□□□□□□□□□□□□□□□
*カタバミ(酢漿草)。スイモノグサ。キイロハナカタバミ。別名:『傍食、片食、かがみくさ、すいば、しょっぱぐさ、すずめぐさ、ねこあし、もんかたばみ』等があり日本方言大辞典には180種以上が記載されているとする報告が見られる。
*分類:カタバミ科カタバミ属。
*学名:Oxalis corniculata L.
*分布:北海道-沖縄。英名:sorrel。
■成 分□□□□□□□□□□□□□□□□
*茎葉に蓚酸を含み、酸味がある。酸性蓚酸カリウム(蓚酸水素カリウム:KHC2O4)を10%程度含む。
■一般的性状□□□□□□□□□□□□□□□□
*傍食の意で、葉の1側が欠けているためだという。世界の温帯から熱帯に分布。日本各地の庭や道端に生える多年草である。日当たりの良い原野、道端、庭などに生育する。草丈は10-30cm。噛むと酸味を感じる。茎は地上を這うかやや斜上し、地面に接した節から根を出す。
*葉は互生し、葉身は三出複葉(ハート型)、夜間は合わせて閉じる。花は黄色、春から秋に咲く。果実は円柱形、熟すと開裂し種子をはじき飛ばする。多数分枝。柄の基部に托葉あり。3小葉、小葉は長さ1cm、昼間開き夜は閉じる。花は5-9月(写真撮影3月21日)、散形花序。萼片5、雄蕊10。
■毒 性□□□□□□□□□□□□□□□□
*毒性:全草。毒成分は蓚酸カリウムを10%程度含む。本成分等水溶性の蓚酸は、摂取後速やかに体内に吸収される。家畜に中毒を起こす。ヒト経口推定致死量は15-30g、ラット経口LD50値は7,500mg/kgである。
*植物に含まれる蓚酸には可溶性のものと不溶性のものがある。一般に家畜が中毒を起こすのは可溶性の蓚酸を含む植物で、カタバミ科カタバミ属は全草に酸性蓚酸カリウム(蓚酸水素カリウム:KHC2O4)を10%程度、あるいはそれ以上含んでいる。
*蓚酸中毒は、多くの場合、乾物量に対して10%以上の蓚酸を含む植物の摂取により起こるが、摂取蓚酸量と中毒の程度は必ずしも相関しない。
■症 状□□□□□□□□□□□□□□□□
*蓚酸を多量に摂取すると消化器粘膜を刺激して、炎症を起こす。また多量の蓚酸が体内に吸収されると、体液、組織のカルシウムと不溶性の塩(蓚酸カルシウム)を作るため、低Ca血症を起こす。腎臓では蓚酸カルシウムの結晶で、尿細管が塞がれることがあり、結晶が脳組織に及ぶこと、麻痺と中枢神経の障害が起こることがある。
中毒の主徴は流涎、胃腸炎、重度の下痢、筋肉の振戦、瞳孔散大、強直性痙攣、発汗、虚脱、体温低下等がある。血液生化学的所見では低Ca血症、高窒素血症が急性中毒の指標となる。
*可溶性蓚酸塩を含有する植物の場合、通常、口腔の刺激は少ないが、大量摂取時には舌・口腔咽頭の刺激、疼痛・浮腫や血性嘔吐・下痢が生じ、低Ca血症やそれに続くテタニー・不整脈(心室細動)、代謝性アシドーシス、呼吸抑制、意識障害、肝・腎障害等を惹起する。
■処 置□□□□□□□□□□□□□□□□
*摂取した植物名や部位、摂取量、誤食か食用として摂取したのか等を確認する。不溶性、可溶性いずれの蓚酸塩含有植物の場合も、食べたときには先ず牛乳や水で口の中をよく濯ぐ。牛乳にはカルシウムが含まれており、蓚酸が不溶性の蓚酸カルシウムとなって吸収され難くなる。冷たい水や氷を口に含ませると、局所の刺激を和らげる。大量摂取時は、牛乳や水を飲ませて催吐し、活性炭・下剤を投与する。下剤は硫酸ナトリウムを使用すると蓚酸ナトリウムが出来て吸収が促進されるので、硫酸マグネシウムを使用する。必要なら鎮痛薬投与、嘔吐が続けば、輸液等の脱水対策、浮腫が酷い場合は呼吸管理等の対症療法を行い、尿中に蓚酸カルシウムの結晶が出ているときは、輸液と利尿薬を投与し、十分な尿量を維持する。
*可溶性蓚酸塩含有植物の場合は、低Ca血症やテタニーがあれば、グルコン酸カルシウムを静注する。
*皮膚に付着した場合は、石鹸と水で十分に洗浄する。
■事 例□□□□□□□□□□□□□□□□
*酢漿草による事例は確認できなかったが、53歳の男性が500gの酸葉(すいば)で作った野菜スープを飲み、嘔吐、下痢、意識障害を来たし、著しい代謝性アシドーシスと低Ca血症、肝腎不全から、深昏睡になり、心室細動を起こして死亡した。剖検で肝臓の小葉中心性の壊死、腎糸球体の腫脹の他、腎皮質や肝臓の毛細血管、肺、心臓に蓚酸カルシウムの結晶が認められた。
■備 考□□□□□□□□□□□□□□□□
*カタバミは酢漿草と書き、別名「スイモノグサ」とも云う。茎や葉に蓚酸が含まれ、噛むと「すいもの」と云う意味である。[食用法]若い葉を塩で揉んで生で食べる。煮たり漬物にしても良い。
■文 献□□□□□□□□□□□□□□□□
1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 I;北隆館,2000
2)佐竹元吉・監:フィールドベスト図書v.16-日本の有毒植物;学研教育出版,2012
3)清水矩宏・他編著:牧草・毒草・雑草図鑑;(社)畜産技術協会,2005
4)(財)日本中毒情報センター:症例で学ぶ中毒事故とその対策;じほう,2000
5)佐合隆一:救荒雑草;全国農村教育協会,2012
6)内藤裕史:中毒百科改訂第2版:南江堂,2001
調査者 古泉秀夫 記入日 2017.3.27. |