『小待宵草(コマツヨイグサ)について』
金曜日, 11月 4th, 2016
KW:民間薬・漢方薬・コマツヨイグサ・小待宵草・ヨイマチグサ・山芝麻・アカバナ科・マツヨイグサ属
Q:小待宵草について
A:今年、街路樹の植木枡に奇妙に目立つ草が繁茂していた。草の上部に赤茶けた小さな花が巻き付いた形で付いている。何だろうと見ているうちに、夜間に見る機会があり、街灯の明かりでは色は解らなかったが、花は昼間見るのとは異なり立派に咲いていた。それで早朝に覗いてみると、見事な黄色の花が咲いていた。花を参考に図鑑を見ていたら『コマツヨイグサ(小待宵草)に辿り着いた。
[学名]Oenothera laciniata
[別名]ヨイマチグサ、裂叶月见草(中国名)、山芝麻
[英名]cutleaf eveningprimrose
[分類]アカバナ科マツヨイグサ属。
[分布]北アメリカ原産。日本全土に帰化。海岸の砂地、その近辺の草地。河原でよく見られる。近年では街中の空き地、造成地、道端等に広がっている。
[形態]越年草ないし多年草。1910年代の渡来とされる。1950年代から急に増え始め、海岸の砂浜に群生するようになった。夕方に花が咲く待宵草の仲間で、小さい花を付けることから名付けられた。直径2-3cmの花は淡黄色で、薄い4枚の花弁がある。昼間まで咲く場合もあるが殆どは朝方迄にはしぼむようである。しぼむと赤味を帯びるが、その赤味は特に美しいとは思えない。茎は根本から別れて地面を這って広がるのが特徴で、草丈は20-60cmになる。葉は羽状に裂けるものや縁が波打つものなど、変異が多いとされる。花期は5-10月。花粉同士は、粘って糸を引く。蜜を吸いに来た蛾等の昆虫に着いて別の雌蕊に着く繁殖戦略。子房は熟すと開裂する。
[薬用部分]全草。
[成分]待宵草として『完熟種子にはガンマリノレン酸及び必須脂肪酸が約7-10%含まれている。一般にはプリムローズ(月見草油、月見草オイル、英: Evening primrose oil)の名で知られるメマツヨイグサ O.biennisの種子油は、月経前症候群 (PMS) による生理痛を抑えるのに使用される。また、ガンマリノレン酸は乳癌治療に対しても有効であると言われている。しかし、ヒトの有効性に対するデータは十分ではない。
[薬効・薬理]小待宵草について、報告の確認ができなかったが、待宵草で『全草を煎じて収斂剤あるいは鎮静剤に使用する。これらは喘息に対する鎮咳効果や、胃腸障害に対する鎮静効果があるとされている。かつてはメマツヨイグサ O.biennis を材料にした湿布薬が外傷治療に用いられ、全治までの日数を短縮させたこともある。cure-all king(万能薬の王様)というマツヨイグサの俗名の一つは、こうした多岐に渡る薬効にちなんだものだが、その有効性が臨床試験で示されなかった。なお漢方でも同様の薬効があるとされ、山芝麻の名で生薬とされる。
[使用法]煎じて服用する。湿布薬として使用。
[その他]『要注意外来生物』。
追伸:街路樹の下の植木枡に群生していた小待宵草は、業者が入って街路樹の下草刈りが始まり、あっという間に全滅した。どこまで広がるかと見ていたが、1本も見られなくなった。さて、来年は同じ場所に出てくるかどうか。
1)藤井伸二・監:色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑;ナツメ社,2014
2)岩瀬 徹・他:新版形とくらしの雑草図鑑;全国農村教育協会,2016
[015.9.CUT:2016.11.3.古泉秀夫]