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「医学的判断に基づいて」

日曜日, 10月 23rd, 2016

     魍魎亭主人

認知症治療薬の使用に関して、厚生労働省保険局医療課は、「公益社団法人 国民健康保険中央会」宛に事務連絡を出した。認知症治療薬の使用に際して、医師が患者の状況に応じて選択する投与量について、添付文書の規定に係わらず、「診療報酬明細書の摘要欄に記載されている投与の理由等」を勘案し、機械的に査定しないで頂きたいとするものである。
原則的には、添付文書の記載事項を順守する事が前提となるが、認知症の場合、患者の状態によっては添付文書と異なった使用がされるとしても、投与理由の記載を勘案し、機械的な対応を避けて欲しいということの様である。
                                                                        事務連絡
                                                              平成28年6月1日

公益社団法人 国民健康保険中央会 御中

                                                          厚生労働省保険局医療課

 

    先発品医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品の取扱い等について(依頼)

先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品の取扱については、既に「先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品の取扱について」(平成24年1月17日保発0117第1号)
において示しているところです。
今般、改めて、一律に査定を行うのではなく、個々の症例に応じて医学的に判断して審査して頂くようお願い致しますので、都道府県国民健康保険連合会に対し周知方よろしくお願い致します。

なお、 認知症治療薬についても、患者の症状等により、添付文書の規定によらず当該規定の用量未満で投与される場合がありますが、一律に査定を行うのではなく、診療報酬明細書の摘要欄に記載されている投与の理由等も参考に、個々の症例に応じて医学的に判断していただくようお願い致しますので、併せて、都道府県国保連合会に対し周知方よろしくお願い致します。

認知症治療薬について


1]ガランタミン臭化水素酸塩:錠・OD錠・内服液
アルツハイマー型認知症治療剤
[効果] 軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
[用法・用量] 通常、成人にはガランタミンとして1日8mg(1回4mgを1日2回)から開始し、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量し、経口投与する。なお、症状に応じて1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量できるが、増量する場合は変更前の用量で4週間以上投与した後に増量する。

2]メマンチン塩酸塩:錠・OD錠
NMDA受容体拮抗 アルツハイマー型認知症治療剤
[効果]中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
[用法・用量]通常、成人にはメマンチン塩酸塩として1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口投与する。

3]リバスチグミン:パッチ
アルツハイマー型認知症治療剤
[効果]軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
[用法・用量]*通常、成人にはリバスチグミンとして1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、維持量として1日1回18mgを貼付する。また、患者の状態に応じて、1日1回9mgを開始用量とし、原則として4週後に18mgに増量することもできる。本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.*リバスチグミンとして1日1回9mgより投与を開始し、原則として4週後に1日1回18mgまで増量する投与方法については、副作用(特に、消化器系障害(悪心、嘔吐等))の発現を考慮し、本剤の忍容性が良好と考えられる場合に当該漸増法での投与の可否を判断すること。
2.*本剤を慎重に投与することが推奨される患者(「慎重投与」の項参照)については、リバスチグミンとして1日1回4.5mgより投与を開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ1日1回18mgまで増量する投与方法を選択すること。
3.1日18mg未満は有効用量ではなく、漸増又は一時的な減量を目的とした用量であるので、維持量である18mgまで増量すること。
4.*本剤は、維持量に到達するまでは、1日量として18mgを超えない範囲で症状により適宜増減が可能である。消化器系障害(悪心、嘔吐等)がみられた場合は、減量するかこれらの症状が消失するまで休薬する。休薬期間が4日程度の場合は、休薬前と同じ用量又は休薬前に忍容であった用量で投与を再開する。それ以外の場合は本剤の開始用量(4.5mg又は9mg)を用いて投与を再開する。投与再開後は、再開時の用量を2週間以上投与し、忍容性が良好であることを確認した上で、減量前の用量までは2週間以上の間隔で増量する。
5. 本剤の貼付による皮膚刺激を避けるため、貼付箇所を毎回変更すること。(「重要な基本的注意」及び「適用上の注意」の項参照)
6. 原則として、1日1回につき1枚のみ貼付すること。
7. 他のコリンエステラーゼ阻害作用を有する同効薬(ドネペジル等)と併用しないこと。
8. 医療従事者又は介護者等の管理のもとで投与すること。

4]ドネペジル塩酸塩:錠・細粒
アルツハイマー型、レビー小体型認知症治療剤
[効果] **アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
[用法・用量] **アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制 通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1-2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
(参考)細粒通常、成人には1日1回0.6gから開始し、1-2週間後に1.0gに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、1.0gで4週間以上経過後、2.0gに増量する。なお、症状により適宜減量する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1-2週間を超えて使用しないこと。
2. 10mg/日に増量する場合は、消化器系副作用に注意しながら投与すること。
3. 医療従事者、家族などの管理のもとで投与すること。

以上が認知症治療薬について添付文書に記載されている用法・用量であるが、この記載に外れた少量処方がされた場合でも、単純に適応外として診療報酬上の査定において、機械的な対応をしないようにという事務連絡文書であり、拡散を依頼する文書だと云うことである。

1)レミニール錠添付文書, 2015.10.改訂
2)メマリー錠添付文書, 2016.3.改訂
3)イクセロンパッチ添付文書, 2016.7.改訂
4)アリセプト錠添付文書, 2014.9.改訂

                   (2016.10.20.)