§蹌々踉々[8]
水曜日, 6月 1st, 2016鬼城竜生
『本当に環境は整ったのか?』
日本産婦人科学会は29日(2015.8.)国に対し、子宮頸がんワクチンの接種の勧奨再開を求める声明を発表した。ワクチンは2013年4月に国の定期予防接種となったが、接種後に体の痛みなどの症状が出たという報告が相次ぎ、現在、積極的な接種の勧奨は中止されている。同学会は、日本医師会などが今月、接種後の症状に対する診療の手引を公表したことから、接種できる環境は整ったとした[読売新聞,第50143号,2015.8.30.]。しかし、この産婦人科学会の『接種できる環境が整った』とする意見には、急ぎすぎではないかと首を捻らざるを得ない。日本医師会などが出した文書はワクチンの安全性を証明した文書ではなく、接種後に痛みが出る原因は、現段階では分からないとしている。つまり原因が分からないと云うことは、避けようがないと云うことであり、接種を受けた方が、報告された副作用に見舞われた場合には、それぞれ注射をした医師が、賠償責任を取ると云うことになるのか。副作用とは施術者には何ら被害がなく、受ける側に被害が出る。原因の解明が出来るまで、接種の勧奨再開は待つべきではないか(呑)。
『情と云うこと』
『情』という字は、情愛、深い思いやりの気持ち。なさけ/情感、感情/ 情熱・熱情燃え上がるような激しい感情/情欲、欲望/情理、人情と道理等々、どちらかというと、人の情念に結びつく言葉が多い。白川静氏の“常用字解”によれば、情は「学ばずして能くするもの」即ち才能であるとする解釈があるという。その言葉が“情報”という組合せになると些か無機的な表情になるが、決して無機的な物ではなく、その根底に優しさを秘めた物でなければならないのではないか。群大の腹腔鏡による肝臓手術で多くの患者が死亡した例では、殆ど情報の公開はされていなかったようである。患者に伝達する情報は、相手に理解される情報でなければならない。まだ、全てが解明されたわけではないが、最近になって開腹手術でも失敗しているとの報告がされた。いずれもキチッとした説明はされていなかったと思われる。キチッと説明するに十分な力量があれば、これほど酷い失敗はしなかったはずである(呑)。
『安ければいいのか』
『スキーバス転落14人死亡』の記事を読んだ。業界最安値を標榜する運行会社(イーエスピー)だという。1泊3日又は2泊4日のツアーで料金は1万3000円から2万円弱だという。東京・原宿から長野県北部のスキー場を目指し、戸狩温泉スキー場(飯山市)等を経由して斑尾高原スキー場(飯山市)に到着する予定だったという。 代理店手数料、旅行会社利益、往復バス代、宿泊代金、リフト代、高速代金、その他のオプション等の必要経費が、本当にこの代金で賄えると云えるのだろうか。どう考えても無理に無理を重ねた料金設定で、特に安全に関する経費は間違いなく一銭も入っていないのではないかと思われる。案の定バスの代金について、国が距離と走行時間を合算して、旅行会社がバス会社に支払う貸し切りバスの代金を決めているにもかかわらず、今回の旅行に見合う額の下限額の約27万円を、約19万円という金額で請け負っていた。安く旅行に行けるというのはある意味魅力かもしれない。一方、安物買いの銭失いも一つの真実である(呑)。
『用語の統一を図るべし』
『臨床薬学推論』という言葉を聞いた直ぐ後で、『臨床薬学判断』という言葉を耳にした。どちらも薬剤師のやるべき仕事に関連してのことのようであるが、同じ内容のことを云っているのだとすれば、薬剤師が迷わなくて済むよう、用語の統一を図るべきではないか。更に他の職種の誤解を招かないようにするためにも、用語の統一化を急ぐべきである。所で臨床薬学推論の内容について、詳細は聞いたことがないので、一方的に想像するしかないが、“医師の処方箋を見て、患者の病状を予測する”と云うことではないかと勝手に考えさせて頂いている。だとすれば、院内処方の場合、処方内容からの推論をする前に、処方箋に診断名を書くように話し合えばいいわけで、チーム医療という以上、医師以外の要員が、医師の診断名を理解できるよう明確にすることは必要だといえる。何なら処方監査による適正処方への助言というような観点から、療担規則に処方箋上に病名を書くよう記載することを考えてもいい(呑)。