『本気でそう思っているのでしょうか』
水曜日, 12月 2nd, 2015魍魎亭主人
『徴兵制の指摘も当たらない。今の戦闘は、ハイテクに頼っており、たんに素人を集めても役に立たない』と国際大学長の北岡伸一氏が“語る”“安全保障法制”(読売新聞第50145号,2015.9.1.)の中で記述していた。この点に関して甚だしく誤解があるのではないかと思うが、戦闘が全てハイテクに頼っているわけではないだろう。銃に弾を込めることが出来て、引き金を引くことさえ出来れば、弾は飛ぶ。
イスラム過激派組織“イスラム国”の戦闘員の全てがハイテクで制御されている兵器を持参しているとは思えない。それでも戦闘が出来ているということは、最前線で人対人が向き合ってする戦闘では、特段ハイテクで制御された武器が必要とされるわけではなく、どんな過酷な状況下でも間違いなく弾が飛び出すAK-47カラシニコフなどの銃があればそれで十分ではないか。更には米国で販売されているMk13グレネードランチャーなどの軽量の武器があれば、十分に戦闘になる。これだって別にハイテクの必要性はない。
それに北岡氏は徴兵制をどのように解釈しているのだろうか。18歳で召集するか、20歳で召集するか、大卒で直ちに召集するか。それは召集する側の都合で決まる。それから徹底的に教育すればコンピュータに馴れた今の若者は十分に戦車を動かすことは出来るし、飛行機でさえ操縦できるのではないか。今の機械は殆どがCPで制御されている。ゲームで馴れた最近の若者なら、年寄りが考えるほど、ハイテクの武器が扱い難いとは考えられない。それとも若年者の召集は企業から人材の枯渇を招くという反対意見が出るだろうから導入はされないということだろうか。
嘗て敗戦の我が国は、満州で40代の中年を召集し、現地に集めたが、集められた人手200人に対し、馬は3頭、本来はサーベルを腰につるのにゴボウ剣を配布され、そのゴボウ剣も着剣すべき銃はなく、木銃を渡されたという。本来騎兵を召集し、乗る馬がないこれでは戦にならないと云うことで、勝手に解散して逃げ出したという話を聞いたが、こういう徴兵の仕方をすれば、おっゃる通りハイテク兵器は使えない。
更に北岡氏は戦後70年の安倍晋三談話に関する有識者懇談会(21世紀構想懇談会)座長代理をお勤めになっている。
その彼が安全保障関連法案の国会審議について「違憲か合憲か」という入口論や、「戦争法案だ」「徴兵制に繋がる」といった荒唐無稽な批判が目立ち、法案の必要性や「これで十分なのか」「行きすぎはないのか」という具体的論議が出来ていない。また、法案に対する批判の中には、自衛隊の海外派遣に「歯止めがない」という指摘があるが、事実と違う。最大の歯止めはシビリアンコントロール(文民統制)だ。時の政権が判断を誤り、無用な犠牲を出した場合、国民の厳しい審判を受けて内閣は倒れる。だからこそ内閣は慎重に決断せざるを得ないと宣っている。
しかし、この様な楽天的思考でいいのだろうか。日本国内に基地があり、そこからミサイルや飛行機が飛んでくる。あるいは物資が送り込まれると云うことが解れば、そこを叩こうとするのが普通は常識だろう。ミサイルを数発撃ち込まれれば、文民統制で国民の審判などといっている暇はない。
こう云えば、だからこそ抑止力としての今回の法案成立が必要だというかもしれないが、膨張主義を取る国家や、常識を越えた判断をされる国家からすれば、そんな物は歯牙にもかけないと云うことではないのか。
(2015,9,24.)