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『健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会』

火曜日, 8月 4th, 2015

        魍魎亭主人

厚生労働省は2015年6月18日に、地域の健康情報拠点に相応しい薬局の基準作りの前提となる『拠点薬局の定義』について、大筋で合意が得られたと公表したの報道がされた[薬事日報;第11588号,2015.6.22.]。

それによると“かかりつけ薬局の基本的な機能を持った上で、一般薬の適正使用に関する助言や健康に関する地域住民からの相談を幅広く受け付けて専門の職種や機関に繋ぐ等、健康サポート機能も併せ持つ薬局”と位置づけている。次回以降、この定義に基づいて、拠点薬局の基準や名称などについて議論を深めていくとされている。

拠点薬局の定義は、患者情報の一元化や、24時間対応・在宅対応等、かかりつけ薬局としての基本的な機能を備えた上で、►要指導薬・一般薬・機能性食品等の適正使用に関する助言を行う。►地域住民のファーストアクセスの場としての健康に関する相談を幅広く受け付け、必要に応じかかりつけ医を始め適切な専門職種や関係機関に紹介する。►健康に関する情報提供を積極的に行うこと等を例示し、「地域包括ケアの一員として、国民の病気の予防や健康づくりに貢献する薬局」と位置づけた。

「かかりつけ薬局と健康情報拠点薬局の関係」では、かかりつけ薬局の機能に上乗せする形で、一般薬・衛生材料の提供や健康相談応需等によって、病気の予防や健康づくりに貢献する「健康サポート機能」を持つ一方で、抗癌剤や免疫抑制剤等の選択、投与量の調整支援といった「高度薬学管理機能」を備えた薬局を健康情報拠点と位置づけている。更に医療機関との連携を通して、疑義照会や処方提案、副作用・服薬情報のフィードバック、受診勧奨等を行うことをあげているという。

これに対し羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は、薬局によっては薬剤師が頻繁に異動するケースも見られるため、かかりつけ薬局を増やすのではなく、「かかりつけ薬剤師を増やすことが望ましい」と指摘。休日・夜間対応についても「医師だったら、声を聞くだけで患者のことがだいたい想像がつく」とし、「薬局も強い覚悟を持ってほしい。商売優先になってしまうと残念」と述べたという。名称に「拠点」という言葉が使われていることに対しても「健康情報拠点が薬局である必要は全くない。違和感がある」と主張。「窓口ぐらいがいいのでは」と提案したという。

『地域の健康情報拠点に相応しい薬局の基準』については、まだ論議の途中であり、最終的にどこに着陸する気か解らないが、現在論議されている中身がそのまま残ると考えた場合、個人経営の薬局が、これの要件に全て対応するのは甚だ難しい。少なくとも地域別に『かかりつけ薬局をグループ化し、そのグループの頂点に期待される薬局?』を配置し、地域内のネットワーク化を図るということが必要ではないか。そのためには地域を統轄する行政機関は当然のこととして、薬剤師会、医師会、看護師会等々がそれぞれ意見を持ち寄り、その地域の医療をどう構築するのかを考え、その中で全体的なシステムを作るという考え方に立つことが必要なのではないのか。

いずれにしろ今の医薬分業は異常である。門前に大型チェーンの調剤薬局が並びあたかも大謀網で魚を掬うようなことがされている。これでは従前の病院薬局と同じで、十分な患者サービスは出来ていない。特に患者に対する情報提供などは、調剤する患者数が多ければ多いほど、十分な対応は出来ない。紙に抽出した情報を抜き出して印刷し、手渡すということがされているが、毎回同じ内容の説明書を手渡し、説明が済んでいるとして技術料を取るのは詐欺に等しい。更にOTC薬については、殆ど扱っていない。

その意味では「薬局」として、街中の薬局を中心にして、調剤とOTC薬=患者が使用する薬の全てを薬局で管理するという考え方は、薬局の在り方を本来の意味に戻そうと云うことであり、間違ってはいない。更に今後の在宅指向の中で街の薬局の果たすべき役割は重要なものがあり、情報発信機関として整備されることは重要である。

しかしその際、医療の中心は飽くまで医師であるという発想は捨ててもらわなければならない。医療の中心に置くべきは患者であり、その患者の望むべき医療はいかにあるべきかという観点から対応を決めていくべきではないか。

               [2015.8.3.]