「メチルフェニデート塩酸塩について」
土曜日, 8月 29th, 2015
KW:薬名検索・ADHD・注意欠陥・attention-deficit ・多動性障害・hyperactivity disorders・コンサータ錠・メチルフェニデート塩酸塩・methylphenidate hydrochloride・ストラテラカプセル・アトモキセチン塩酸塩・atomoxetine hydrochloride
Q:ADHDの薬について。学校の先生から服用を勧められているが、子供に薬を服ませるのは心配があるので。
A:『小児期における注意欠陥(attention-deficit )/多動性障害(hyperactivity disorders)(AD/HD) 』を適応とする薬として「コンサータ錠(ヤンセン)」・「ストラテラカプセル(イーライリリー)」が市販されている。
コンサータ錠(ヤンセン)
▶1錠中にメチルフェニデート塩酸塩(methylphenidate hydrochloride)18mg・27mgを含有する製剤である。
▶本品の小児投与量は18mgを初回服用、18-45mgを維持量として、1日1回朝(適宜増減)服用する。
本品の服用上の注意として「増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。但し、1日用量は54mgを超えないこと。」の記載がされている。
▶AD/HD患児を対象として国内で実施した第II相試験、第III相試験及び長期投与試験の総症例216例中、副作用(臨床検査値異常を含む)は174例(80.6%)470件に認められた。その主なものは、食欲不振72例(33.3%)、初期不眠症29例(13.4%)、体重減少26例(12.0%)、食欲減退19例(8.8%)、頭痛18例(8.3%)、不眠症13例(6.0%)、腹痛12例(5.6%)、悪心12例(5.6%)、チック11例(5.1%)、発熱11例(5.1%)であった。(承認時)
ストラテラカプセル (イーライリリー)
▶1Cap.中にアトモキセチン塩酸塩(atomoxetine hydrochloride)5mg・10mg・25mgを含有する製剤が市販されている。
▶本品の小児投与量は1日0.5mg/kgより開始し、その後1日0.8mg/kgとし、更に1日1.2mg/kg迄増量した後、1日1.2-1.8mg/kgで維持。
投与に関連した注意事項として、「1.6歳未満の患者における有効性及び安全性は確立していない。2.AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM*)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。」の記載がされている。
▶小児を対象とした国内臨床試験における安全性評価対象例278例中209例(75.2%)に副作用が報告され、主なものは頭痛(22.3%)、食欲減退(18.3%)、傾眠(14.0%)、腹痛(12.2%)、悪心(9.7%)であった。
日本人及びアジア人の成人を対象とした臨床試験における安全性評価対象例392例(日本人患者278例を含む)中315例(80.4%)に副作用が報告され、主なものは悪心(46.9%)、食欲減退(20.9%)、傾眠(16.6%)、口渇(13.8%)、頭痛(10.5%)であった。(成人適応追加時)
コンサータ錠には次の警告が指示されている。「警告 本剤の投与は、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の診断、治療に精通し、薬物依存を含む本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ行うとともに、それらの薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤を行うこと」
また、適応上の注意として次の指示がされている。
1)6歳未満、13歳以上の小児及び成人における有効性及び安全性は未確立。
2)18歳未満で本剤での治療を開始した患者において、18歳以降も継続して投与する場合は、治療上の有益性と危険性を考慮して慎重に、定期的に有効性・安全性を評価し、有用性が認められない場合には中止を考慮し、漫然と投与しない。
3)AD/HDの診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM*)等の標準的で確立した診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。
*Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders
その他、用法・用量に関する注意事項として、次の指示がされている。
1.本剤は中枢神経刺激作用を有し、その作用は服用後12時間持続するため、就寝時間等を考慮し、午後の服用は避けること。
2.初回用量:本剤投与前に他のメチルフェニデート塩酸塩製剤を服用している場合には、その用法・用量を考慮し、本剤の初回用量を18-45mgの範囲で決定する。ただし、本剤若しくは他のメチルフェニデート塩酸塩製剤の服用を1ヵ月以上休薬した後に本剤を服用する場合は、18mgを初回用量とすること。
3.本剤は徐放性製剤であるため分割して投与することは適切でなく、本剤は18mg錠と27mg錠の2種類のみで18mgが最小単位であるため、9mg単位の増減量が必要な場合には錠剤の種類を変更して投与すること。
本品の使用に際し、禁忌として次の事項が指示されている。
1.過度の不安、緊張、興奮性のある患者[中枢神経刺激作用により症状を悪化させることがある。]
2.緑内障のある患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]
3.甲状腺機能亢進のある患者[循環器系に影響を及ぼすことがある。]
4.不整頻拍、狭心症のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]
5.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
6.運動性チックのある患者、Tourette症候群(トウーレット症候群)又はその既往歴・家族歴のある患者[症状を悪化又は誘発させることがある。]
7.重症うつ病の患者[抑うつ症状が悪化するおそれがある。]
8.褐色細胞腫のある患者[血圧を上昇させるおそれがある。]
9.モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤を投与中又は投与中止後14日以内の患者[「相互作用」の項参照]
本品の副作用として、次の事項が添付文書に記載されている。
重大な副作用
1.剥脱性皮膚炎(頻度不明):広範囲の皮膚の潮紅、浸潤、強いそう痒等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2.狭心症(頻度不明):症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
3.悪性症候群[Syndrome malin](頻度不明):発熱、高度の筋硬直、CK(CPK)上昇等があらわれることがあるので、このような場合には体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。
4.脳血管障害[血管炎、脳梗塞、脳出血、脳卒中](頻度不明):症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用
1.感染症:(5%未満)鼻咽頭炎、鼻炎、胃腸炎、ヘルペスウイルス感染、インフルエンザ、麦粒腫、中耳炎、咽頭炎。(頻度不明):上気道感染、副鼻腔炎。
2.血液障害:(頻度不明)白血球減少症、汎血球減少症、血小板減少症、血小板減少性紫斑病。
3.免疫系障害:(5%未満)季節性アレルギー。免疫系障害(頻度不明):アナフィラキシー反応、過敏症反応、耳介腫脹、水疱形成、表皮剥脱。
4.代謝障害:(5%以上)食欲不振、食欲減退。(5%未満):体重増加不良、食欲亢進。
5.精神障害:(5%以上)初期不眠症、不眠症、チック。(5%未満):気分変動、神経過敏、無感情、抑うつ気分、抜毛、早朝覚醒、中期不眠症、睡眠障害。(頻度不明):攻撃性、不安、感情不安定、うつ病、気分動揺、怒り、激越、過覚醒、涙ぐむ、錯乱状態、失見当識、幻覚、幻聴、幻視、躁病、落ち着きのなさ、リビドー減退、パニック発作、歯ぎしり、緊張。神経系障害:(5%以上):頭痛。(5%未満):浮動性めまい、体位性めまい、自律神経失調、ジスキネジー、鎮静、緊張性頭痛。(頻度不明):傾眠、精神運動亢進、振戦、痙攣、大発作痙攣、錯感覚、嗜眠。
6.眼障害:(5%未満)アレルギー性結膜炎、近視、眼そう痒症、結膜充血。(頻度不明):霧視、複視、散瞳、視覚障害、ドライアイ。
7.耳障害:(5%未満)耳痛。(頻度不明):回転性めまい。
8.心臓障害:(5%未満)上室性期外収縮、徐脈。(頻度不明):頻脈、動悸、狭心症、期外収縮、上室性頻脈、心室性期外収縮。
9.血管障害:(5%未満)血圧変動。血管障害(頻度不明):高血圧、レイノー現象、ほてり。
10.呼吸器障害:(5%未満)咳嗽、アレルギー性鼻炎、喘息、上気道の炎症、咽頭紅斑、鼻漏。(頻度不明):咽喉頭疼痛、呼吸困難。
11.胃腸障害:(5%以上)腹痛、悪心。(5%未満):嘔吐、下痢、胃不快感、上腹部痛、異常便、便秘、口内炎、歯肉腫脹。(頻度不明):口内乾燥、口渇、消化不良。
12.皮膚障害:(5%未満)発疹、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、そう痒症、接触性皮膚炎。(頻度不明):脱毛症、斑状皮疹、紅斑、多汗症。
13.筋骨格系障害:(5%未満)関節痛、四肢痛。(頻度不明):筋痛、筋攣縮、筋緊張、筋痙縮。
14.生殖系障害:(5%未満)精巣上体炎、陰茎癒着。(頻度不明):勃起不全。
15.全身障害:(5%以上)発熱。(5%未満):易刺激性、倦怠感。(頻度不明):疲労、胸痛、胸部不快感、異常高熱、無力症。
16.臨床検査:(5%以上)体重減少。(5%未満):血圧上昇、最低血圧上昇、脈拍異常、QT延長、QTc延長、異常Q波、白血球数減少、好中球数減少、好酸球数増加、血中アミラーゼ増加、CK(CPK)増加、ALT(GPT)増加、AST(GOT)増加、肝機能異常、トリグリセリド増加、血糖増加、血中尿素増加、血中尿酸増加、蛋白尿、尿中ケトン体陽性、尿潜血。(頻度不明):心雑音、ALP増加、血中ビリルビン増加、肝酵素上昇、血小板数減少、白血球数異常。
17.傷害、中毒:(5%未満)足骨折、手骨折。
また『重要な基本的注意』として、次の指示が添付文書中に見られる。
1.本剤を投与する医師又は医療従事者は、投与前に患者及び保護者又はそれに代わる適切な者に対して、本剤の治療上の位置づけ、依存性等を含む本剤のリスクについて、十分な情報を提供するとともに、適切な使用法について指導すること。
2.小児に中枢神経刺激剤を長期投与した場合に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。中枢神経刺激剤の小児の成長への影響は確立していないが、本剤の投与が長期にわたる場合には患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくない時は投与を中断すること。[「小児等への投与」の項参照]
3.本剤を長期間投与する場合には、個々の患者に対して定期的に休薬期間を設定して有用性の再評価を実施すること。また、定期的に血液学的検査を行うことが望ましい。
4.患者の心疾患に関する病歴、突然死や重篤な心疾患に関する家族歴等から、心臓に重篤ではないが異常が認められる、若しくはその可能性が示唆される患者に対して本剤の投与を検討する場合には、投与開始前に心電図検査等により心血管系の状態を評価すること。
5.心血管系に対する影響を観察するため、本剤の投与期間中は、定期的に心拍数(脈拍数)及び血圧を測定すること。
6.まれに視覚障害の症状(調節障害、霧視)が報告されている。視覚障害が認められた場合には、眼の検査を実施し、必要に応じて投与を中断又は中止すること。
7.めまいが発現するおそれがあるため、自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。
8.攻撃性はAD/HDにおいてしばしば観察されるが、本剤の投与中にも攻撃性の発現や悪化が報告されている。投与中は、攻撃的行動の発現又は悪化について観察すること。
9.通常量の本剤を服用していた精神病性障害や躁病の既往がない患者において、幻覚等の精神病性又は躁病の症状が報告されている。このような症状の発現を認めたら、本剤との関連の可能性を考慮すること。投与中止が適切な場合もある。
尚、小児への投与に関し、次の注意が指示されている。
小児等への投与
1.低出生体重児、新生児、乳児、6歳未満の幼児、並びに国内では13歳以上の小児に対する安全性は確立していない。[6歳未満の患者及び国内では13歳以上の患者を対象とした試験は、実施されていない。]
2.長期投与時に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。
Tourette症候群:トゥーレット障害又はトゥーレット症候群とは、チックという一群の神経精神疾患のうち、音声や行動の症状を主体とし慢性の経過をたどるものを指す。小児期に発症し、軽快・増悪を繰り返しながら慢性に経過する。
Tic障害:チック症とは、ピクピクっとした素早い動きなどが、本人の意思とは関係なく、繰り返しおきてしまうものをいう。一番多いのは瞬きで、そのほかにも、肩をぴくっと動かす、頭をふる、顔をしかめる、口を曲げる、鼻をフンフンならす等、種々の状態が見られる。また声を出すチックも見られる。
ストラテラカプセルの投与禁忌として次の指示が見られる。
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
2.MAO阻害剤を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者。
3.重篤な心血管障害のある患者[血圧又は心拍数を上昇させ、症状を悪化させるおそれがある。
4.褐色細胞腫又はその既往歴のある患者[急激な血圧上昇及び心拍数増加の報告がある。]
5.閉塞隅角緑内障の患者[散瞳があらわれることがある。]
用量・用量に関する注意として次の指示がされている。
1.CYP2D6阻害作用を有する薬剤を投与中の患者又は遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では、本剤の血中濃度が上昇し、副作用が発現しやすいおそれがあるため、投与に際しては忍容性に問題がない場合にのみ増量するなど、患者の状態を注意深く観察し、慎重に投与すること。
2.中等度(Child-Pugh Class B)の肝機能障害を有する患者においては、開始用量及び維持用量を通常の50%に減量すること。また、重度(Child-Pugh Class C)の肝機能障害を有する患者においては、開始用量及び維持用量を通常の25%に減量すること。
重要な基本的注意
1. **本剤を投与する医師又は医療従事者は、投与前に患者(小児の場合には患者及び保護者又はそれに代わる適切な者)に対して、本剤の治療上の位置づけ及び本剤投与による副作用発現等のリスクについて、十分な情報を提供するとともに、適切な使用方法について指導すること。
2.本剤を長期間投与する場合には、必要に応じて休薬期間を設定するなどして、定期的に有用性の再評価を実施すること。
3.臨床試験で本剤投与中の小児患者において、自殺念慮や関連行動が認められているため、本剤投与中の患者ではこれらの症状の発現について注意深く観察すること。
4.攻撃性、敵意はAD/HDにおいてしばしば観察されるが、本剤の投与中にも攻撃性、敵意の発現や悪化が報告されている。投与中は、攻撃的行動、敵意の発現又は悪化について観察すること。
5.通常量の本剤を服用していた精神病性障害や躁病の既往がない患者において、幻覚等の精神病性又は躁病の症状が報告されている。このような症状の発現を認めたら、本剤との関連の可能性を考慮すること。投与中止が適切な場合もある。
6.眠気、めまい等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
7.心血管系に対する影響を観察するため、本剤の投与開始前及び投与期間中は定期的に、血圧及び心拍数(脈拍数)を測定すること。
8.本剤は血圧又は心拍数に影響を与えることがあるので、本剤を心血管障害のある患者に投与する際は、循環器を専門とする医師に相談するなど、慎重に投与の可否を検討すること。また、患者の心疾患に関する病歴、突然死や重篤な心疾患に関する家族歴等から、心臓に重篤ではないが異常が認められる、若しくはその可能性が示唆される患者に対して本剤の投与を検討する場合には、投与開始前に心電図検査等により心血管系の状態を評価すること。
9.小児において本剤の投与初期に体重増加の抑制、成長遅延が報告されている。本剤の投与中は患児の成長に注意し、身長や体重の増加が思わしくないときは減量又は投与の中断等を考慮すること。
また慎重投与として、次の指示が添付文書に記載されている。
1.肝機能障害のある患者[血中濃度が上昇するおそれがある。]
2.腎機能障害のある患者[血中濃度が上昇するおそれがある。]
3.痙攣発作又はその既往歴のある患者[痙攣をおこすことがある。]
4.心疾患(QT延長を含む)又はその既往歴のある患者[症状を悪化又は再発させるおそれがある。]
5.先天性QT延長症候群の患者又はQT延長の家族歴のある患者[QT延長を起こすおそれがある。]
6.高血圧又はその既往歴のある患者[症状を悪化又は再発させるおそれがある。]
7.脳血管障害又はその既往歴のある患者[症状を悪化又は再発させるおそれがある。]
8.起立性低血圧の既往歴のある患者[本剤の投与による起立性低血圧の報告がある。]
9.下記の精神系疾患のある患者[行動障害、思考障害又は躁病エピソードの症状が悪化するおそれがある。]-精神病性障害、双極性障害
10. 排尿困難のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]
重大な副作用として、次の事項が添付文書に記載されている。
1.肝機能障害、黄疸、肝不全(頻度不明):肝機能検査値の上昇を伴う肝機能障害、黄疸、肝不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
2.アナフィラキシー様症状(頻度不明):血管神経性浮腫、蕁麻疹等のアナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用[副作用が認められた場合には、必要に応じ、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと。]次の記載が添付文書に見られる。
消化器:(5%以上)悪心、食欲減退、腹痛、嘔吐、便秘、口渇。(1-5%未満):下痢、消化不良、口内乾燥。(頻度不明):鼓腸。
精神神経系:(5%以上)頭痛、傾眠、浮動性めまい。(1-5%未満):体位性めまい、睡眠障害、易刺激性、不快気分、不眠症。(1%未満):早朝覚醒型不眠症、気分変化、振戦、抑うつ気分、錯感覚、不安、感覚鈍麻、幻覚を含む感覚障害、うつ病、攻撃性、リビドー減退、チック、激越、落ち着きのなさ。(頻度不明):びくびく感。
過敏症:(1-5%未満)そう痒症。(1%未満): 発疹、蕁麻疹 。
循環器(5%以上):動悸。(1-5%未満):頻脈、血圧上昇、心拍数増加 。(1%未満):心電図QT延長、失神。(頻度不明):レイノー現象、潮紅。
皮膚:(1-5%未満)多汗症。(1%未満):皮膚炎。
泌尿・生殖器:(1-5%未満)排尿困難、勃起不全。(1%未満):生殖器痛、尿閉、月経困難症、射精障害、不規則月経、前立腺炎、頻尿。(頻度不明):持続勃起、勃起時疼痛、射精不能、精巣痛、オルガズム異常、尿意切迫。
その他:(5%以上)体重減少。(1-5%未満):胸痛、無力症、疲労、ほてり、悪寒、味覚異常。(1%未満):擦過傷、結膜炎、胸部不快感、末梢冷感、冷感、筋痙縮。その他(頻度不明):散瞳。
国内外における臨床試験の併合解析より、以下のような結果が得られた。
CYP2D6活性欠損(PM)患者において、2%以上かつCYP2D6通常活性(EM)患者に比べ2倍以上の発現率が認められ、かつ統計学的有意差をもって多く認められた事象:早朝覚醒、振戦、失神、擦過傷、結膜炎、散瞳。
methylphenidate hydrochlorideの作用機序 | methylphenidate hydrochlorideの作用機序 |
メチルフェニデートは、ドパミン及びノルアドレナリントランスポーターに結合し再取り込みを抑制することにより、シナプス間隙に存在するドパミン及びノルアドレナリンを増加させて神経系の機能を亢進するものと考えられているが、AD/HDの治療効果における詳細な作用機序は十分に解明されていない。 | 臨床における有用性には神経終末のノルアドレナリントランスポーターに対する選択的阻害作用が関与していることが可能性としては考えられるものの、明確な機序は不明である。 |
AD/HDの病態
前頭前野・眼窩野や線条体におけるdopamine作動系神経細胞の機能問題により実行機能や報酬系機能に障害を生じ、注意のコントロールと統合や自己の行動を抑制する機能に問題を来していると考えられる。
AD/HDの診断
DSM-IV-TRの診断基準
A.(1)か(2)のどちらか
(1)以下の不注意の症状のうち六つ(又はそれ以上)が少なくとも6ヵ月間持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しいもの:
<不注意>
(a)学業、仕事、又はその他の活動において、しばしば綿密に注意することが出来ない、又は不注意な間違いをする。
(b)課題又は遊びの活動で注意を集中し続けることがしばしば困難である。
(c)直接話しかけられた時にしばしば聞いていないように見える。
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、又は職場での義務をやり遂げることが出来ない(反抗的な行動、又は指示を理解できないためではなく)。
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
(f)(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、又は嫌々行う。
(g)課題や活動に必要なもの(例:おもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、又は道具)をしばしばなくしてしまう。
(h)しばしば外からの刺激によって直ぐ気が散ってしまう。
(i)しばしば日々の活動で忘れっぽい。
(2)以下の多動性-衝動性の症状のうち六つ(又はそれ以上)が少なくとも6ヵ月間持続したことがあり、その程度は不適応で、発達水準に相応しない:
<多動性>
(a)しばしば手足をそわそわと動かし、又は椅子の上でもじもじする。
(b)しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
(c)しばしば、不適切な状況で、余計に走り回り高いところへ上ったりする(青年又は成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない)。
(d)しばしば静に遊んだり余暇活動につくことが出来ない。
(e)しばしば“じっとしていない”、又はまるで“エンジンで動かされるように”行動する。
(f)しばしば喋りすぎる。
<衝動性>
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう。
(h)しばしば順番を待つことが困難である。
(i)しばしば人の話をさえぎったり、割り込んだりする(例:会話やゲームに干渉する)。
B.多動性-衝動性又は不注意の症状の幾つかが7歳以前に存在し、障害を引き起こしている。
C.これらの症状による障害が二つ以上の状況[例:学校(又は職場)と家庭]において存在する。
D.社会的、学業的、又は職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。
E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、又は他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安障害、解離性障害、又はパーソナリティ障害)ではうまく説明されない。
(診断基準の詳細はその他ICD-10を参照)。
AD/HDの治療方針[心理社会的対応と薬物療法の二つから成る]。
心理社会的対応では、環境調整と子供への対応を行う。環境調整では、子供に対する周囲の人の対処能力を高めることと、不適切な対応状況の改善を行う。具体的には、保護者や学校教師に対してAD/HDに関する知識やAD/HDのある子供への対応スキルを習得して貰うよう助言や指導を行う。
子供への対処スキルの基本は応用行動分析による行動変容技法である。AD/HDに限らず行動面の問題を示す発達障害のある子供に対応する上で、応用行動分析の知識とスキルは不可欠である。そうしたスキルを体系立てて保護者が学習するものとしてペアレントトレーニングという方法があり、その解説書は保護者・教師への助言に有用である。
子供への対応では、子供自身の対処能力の向上と心理面の安定を行う。AD/HDの特性を説明し自身に対する子供の理解を高める。特性をカバーする方法の習得、問題行動が起こりやすい場面での適切な行動の習得、年齢相当の集団活動の保障、学習が楽しいと感じられる体験の保障、気持ちを聞いて貰える場の設定などに関して、保護者や学校教師に助言、指導を行う。子供が適切な対人行動・集団行動を体系立てて学習する方法としてソーシャルスキルトレーニングがあり、地域の教育機関や学校の特別支援教育の中で行っている所があれば、そうした場を紹介する。
薬物療法は、心理社会的対応だけでは問題の改善が不十分な場合や、他児とのトラブルが絶えないなど早急に子供の行動の改善が望まれる場合に行われる。現在、我が国でAD/HDへの適応が承認されている薬は2剤のみで、コンサータ錠では食欲不振、頭痛、腹痛、不眠が、ストラテラカプセルでは頭痛、悪心、眠気、頭痛が生じやすい。
薬物療法は、心理社会的対応を行った後で、考えるべき手段である。従ってAD/HDの診断や治療に精通し、薬物依存のリスクなどについても十分に管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局で対応すべしとされており、医師の資格のない教師が、簡単に薬の服用を勧めるような発言をするのは、安易すぎると言わざるを得ない。
1) 高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012
2)コンサータ錠添付文書,2011.8.改訂
3)ストラテラカプセル添付文書,2012.8.改定
4)山口 徹・他総編集:今日の治療指針;医学書院,2011
5)高橋三郎・他訳:DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版;医学書院,2010
[011.1.ADHD:2012.12.13.古泉秀夫]