Archive for 7月 10th, 2015

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「悪茄子の毒性について」

金曜日, 7月 10th, 2015

KW:植物・ワルナスビ・わるなすび・悪茄子・オニナスビ、アレチナスビ、ノハラナスビ・ソドムのリンゴ・悪魔のトマト・ソラニン・Solanum carolinense

Q:悪茄子の毒性について

A:ワルナスビ(悪茄子)について、次の報告が見られる。
[学名]Solanum carolinense。[別名] オニナスビ、アレチナスビ、ノハラナスビ。[英名]Carolina horse nettle、 horsenettle、Apple of Sodom(ソドムのリンゴ)、Devil’s tomato (悪魔のトマト)。
[分類]ナス科ナス属。[原産]北アメリカ。ヨーロッパ原産の帰化植物。
image[形態]多年草。牧場や牧草地の付近に多く生育するが、最近では道端、時に畑地にも入り込んでいる。地下茎が土中深く長く伸びる。茎は屈曲しながら直立し、分枝して高さ25-50cm。茎や葉には鋭い棘がある。葉は茄子の葉に似るが、縁が波状に浅く切れ込み、両面に褐色の星状毛が密生する。6-9月に葉腋に茄子に似た白色-淡紫色の花を付ける。花枝は節間に付き、数個-10個の花を付ける。花冠は5裂、径2.5cm、葯は黄色で花糸より長い。果実は球形で1.5cm、熟すと橙黄色。本品は食用にならない。花が白色のものはシロバナワルナスビと呼ばれる。畑地、樹園地、牧草地、荒地、路傍、河川敷に生育する。
[温度選好性]温帯~熱帯。種子繁殖・地下茎による栄養繁殖を行う。花は両性花。地下茎の断片による繁殖力が強く、1cm以下の断片からも再生可能。
[繁殖期]6-9月。土壌環境での適応性は大きい。耐旱性や耐陰性がある。
沖縄を含むほぼ全。牧草に混入し、非意図的に導入された(千葉県三里塚の牧場)。家畜の糞にまじり、飼料畑で拡散。明治時代に侵入。1943年に最初の報告。
[影響]在来種、畑作物との競合。棘のため家畜の採食性を低下させ、取り扱いも厄介。数種の虫、菌類、ウイルスの寄主。
[成分]悪茄子を初めとするナス科の植物は、solanine(家畜に有毒なアルカロイド)等の有毒物質を含む。solanineはステロイドアルカロイドのソラニジンを非糖体(aglycone)とする配糖体で、コリンエステラーゼ阻害活性を持つ。C45H73NO15=868.04。ジャガイモの新芽に含まれる毒物。その他、イヌホオズキ、ヒヨドリジョウゴ等に含まれる。原形質毒で有り、強力にな溶血作用を示し、体液の電解質バランスを狂わせる。中毒症状は流涎、運動失調、痙攣、昏睡等が見られる。大量摂取しない限り致命的になることは稀れだとされている。マウス(LD50)42mg/kg。
solanineは6つの成分α-、β-、γ-solanineとα-、β-、γ-チャコニン(chaconine)に分割できる。これらの化合物は共通のaglycone(非糖部)としてソラニジン(solanidine)を有し、違いは糖部分である。Solanumの多くの種類は有毒な配糖体、solanine並びにその加水分解産物、solanidine、その他の有毒化合物を含む。
[法的取扱]ナス科植物は、一部を除き地中海ミバエ、コロラドハムシ、ジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモシロシストセンチュウ、ジャガイモがん腫病菌、タバコべと病菌蔓延地域からの輸入禁止(植物防疫法)。指定外来種(滋賀県では飼養禁止。ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例)。韓国では輸入禁止。

1)廣田伸七・編著:ミニ雑草図鑑-雑草の見分けかた;全国農村教育協会,2000
2)国立研究開発法人国立環境研究所:侵入生物データベース,2015
3)清水矩宏・他:牧草・毒草・雑草図鑑:社団法人畜産技術協会,2005
4)舟山信次:毒と薬の科学-毒から見た藥・薬から見た毒;朝倉書店,2007
5)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005

       [11.141.CAR:2015.6.3.古泉秀夫]

『ツルニチニチソウについて』

金曜日, 7月 10th, 2015

KW:植物・ツルニチニチソウ・蔓日々草・ペリウィンクル・periwinkle・レッサーペリウィンクル・姫蔓日々草・ビンカ・アルカロイド・姫蔓日々草・ヒメツルニチニチソウ

Q:ツルニチニチソウについて

A:ツルニチニチソウ(蔓日々草)は、キョウチクトウ科ツルニチニチソウ属の常緑蔓性植物の一種である。学名:Vinca major。日々草の名前は、1日ごとに新しく花をつけるという意味の命名であるとされる。ただし蔓日々草は、日々草の同属ではなく、それぞれ別属である。
[別名]ペリウィンクル。
[英名]Large periwinkle、periwinkle。

[分布]明治時代に渡来した地中海沿岸地方原産の外来種である。蔓性で地面を覆うように生育する。原産は南ヨーロッパ、北アフリカ。北アメリカ及びオーストラリアでは、蔓日々草を侵入雑草と見なす地域もある。日本にも帰化している。耐寒性小低木image。匍匐性なので、花壇の縁取りやグラウンドカバー、又は鉢植えや吊り鉢に適している。半日影でもよく育ち、積雪地帯でも生育は旺盛。

[形態]花の形は日々草に似ているが、色は青紫色である。柱頭は円盤状をしており、その上に毛のある突起物がある。この様な柱頭の植物は珍しく葉は幅広い。日々草同様に繁殖力が強く、観賞用として栽培されている。開花期:春-初夏(3-5月)、高さ30cm、蔓の長さ1m。早春から夏にかけて長い間、花をつけている。花径は4-5cmで、花冠はスクリュー型に5裂している。

[成分]alkaloidを生産する。alkaloidは糖尿病、癌、高血圧症、脳卒中等、多岐にわたる疾患の治療のために研究がされ、実際の治療にも用いられている。但し、本種にはビンカ・アルカロイドが含まれいるため、栄養補助食品としての使用は推奨されない。ビンカ・アルカロイドは、肝臓、腎臓及び神経に対する損傷を惹起する恐れがある。死に至る恐れもある。

[用法・用量]ヨーロッパでは催吐薬として民間で使われ、抗癌剤としての効果も云われている。その他、夫婦間の営みを促進する、眼の痛みに効く優れた治療薬、葉は手のあかぎれに効く等の資料が見られる。
しかし一方で、脳障害の予防、扁桃炎、咽喉痛、腸の炎症(腫脹)、歯痛、胸部痛、創傷、高血圧症等に対する効果について化学的dataは不十分とされいる。

[安全性]本種の使用は安全ではなく悪心、嘔吐、胃腸症状等の障害が起こる可能性がある。また神経障害、腎障害、肝障害が起こることもある。大量に摂取すると血圧が異常に下がることがある。低血圧症、高血圧症、便秘、2週間以内に手術を受ける予定の人は使用回避。妊娠中、授乳中の女性には禁忌。

[相互作用]降圧薬(カプトプリル、エナラプリル、ロサルタン、バルサルタン、ジルチアゼム、アムロジピン、ヒドロクロロチアジド、フロセミド等)→蔓日々草は血圧を低下させる作用があり、血圧低下作用が増強される可能性がある。

▶蔓日々草について、姫蔓日々草と同様の収斂作用があるとされいる。

ヒメツルニチニチソウ(姫蔓日々草)

[学名]Vinca minor。キョウチクトウ科ツルニチニチソウ属。
[英名]Lesser Periwinkle(レッサーペリウィンクル)
[形態]主に地面を匍匐する常緑性低木で、45cm程のアーチを形成する。根茎があり、光沢のある楕円形の葉と5弁の青紫色の花を付ける。
[分布]ヨーロッパの原産で、生垣となる低木列や林地の境界に沿って生育する。園芸植物としても栽培される。葉は春に採集される。
[使用部位]葉
[成分]インドールアルカロイド(ビンカミン、ビンキン・ビンカミン等)を7%、及びビスインドールアルカロイド(ビンカルビン)、タンニンを含有する。ビンカミンは血流をまし、脳への酸素補給を促す。
[民間伝承]2世紀のローマで出版された「薬草標本」の中で姫蔓日々草の効能を「悪魔の病と悪魔憑き及び蛇や野獣と戦うものである」と述べられているとする資料がある。
[効果と用法]収斂や止血薬として用いられる。収斂作用は、咽喉炎、歯肉炎、口内潰瘍に対するうがい薬としの効果を発揮する。止血作用は、内出血、経血過多、鼻血に効果がある。ビンカミンが葉の中に発見されてから、動脈硬化症や脳への血流の異常による痴呆に使われきた。
[注意]妊婦には使用できない。

1)ネーチャー・プロ編集室:ハーブ・スパイス館;小学館,2000
2)舟山信次:アルカロイド-毒と薬の宝庫;共立出版株式会社,1998
3)景山敬吾・企画編:散歩で見かける草花・雑草図鑑;三省堂書店,2011
4)ツルニチニチソウ:http://ja.wikipedia.org/wiki,2015
5)奥本裕昭・訳:イギリス植物民俗事典;八坂書房,2001
6)難波恒雄・監訳:世界薬用植物百科事典;誠文堂新光社,2000
7)日本医師会・他総監修:ナチュラルメディシン・データベース;jahfic,2015

               [11.141.MAJ:2015.5.5.古泉秀夫]

『ハハコグサについて』

金曜日, 7月 10th, 2015

 

KW:薬草・ハハコグサ・母子草・御形・ごぎょう・おぎょう・餅花・モチバナ・ホオコグサ・鼠麹草・ソキクソウ

Q:ハハコグサについて

A:ハハコグサ(母子草)は、きく科ハハコクサ属の越年草である。学名:Gnapalium multiceps Wall. Gnaphalium affine。春の七草の一つ『御形』でも有り、茎葉の若い葉を食用(七草粥)にする。冬は根出葉がややロゼット状に育ち、春になると茎を伸ばして花を付ける。

[分布]北海道から沖縄及び亜細亜(中国、インドシナ、マレーシア、印度)に分布し、原野や人家の近くなどに普通に見られる。日本では全国的に見られるが、古い時代に朝鮮半島から伝来されたものとする意見が見られる。

image[形態]草丈は20-30cm、茎は基部から分枝して直立し、葉と共に白軟毛を被る。葉は線状倒皮針形で縁はやや波状。花期は4-6月。茎の頂きに散房状に淡黄色の小頭花が密集する。

[別名]御形(ごぎょう・おぎょう)、餅花(モチバナ)、ホオコグサ(母子草)。

[漢方名]鼠麹草<ソキクソウ>と云う生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使用されない。

[薬用部分]全草(鼠麹草<ソキクソウ>)。開花期の頃、全草を採集し、水洗い後、日干しにして乾燥させる。

[成分]全草にルテオリン(luteolin)、モノグルコサイド、フィトステロール(phytosterol)、無機物の硝酸カリを含有する。

*luteolin:フラボンの1つ。他のフラボノイドと同様、黄色の結晶状になる。抗酸化物質活性、炭化水素代謝の促進、免疫系の調整、2型糖尿病の治療等の作用を持つ可能性示唆。
*phytosterol:又は植物ステロール(plant sterol)は、sterol(ステロイドアルコール)に分類される一群の化合物。植物に含まれるフィトケミカルの一種である。特有の臭気のある白色固体で、水に溶けないがアルコールには可溶である

[薬効・薬理]西洋医学では未開発であるが、中医学では去痰剤とする文献もある。主に鎮咳、去痰に有効で、他に利尿作用などがある。花にはジギタリス葉に含まれるルテオリンやカリウム塩が含まれる。

[用法・用量]咳止めには1日10gに200mLの水を加え、半量になるまで煎じて3回に分けて服用する。また乾燥した全草を細切りにして1回量20gを火にくべて立ち上がる煙を吸ってもよい。急性扁桃腺炎には全草10gを煎じて含嗽するとよい。急性腎炎(浮腫)には煎液(5-10%水煎液を作り1日200mLを服用)を食間3回に分割して服用すると利尿に効果があるとされる。
田虫、白雲、畑毛等の皮膚病には、全草を適当に切り、塩を混ぜて濡らした和紙に包み、これを炭火の中に入れて黒焼きにし、黒焼きを擂り潰して胡麻油で練り合わせたものを患部に塗布する。

[その他]鼠麹草<ソキクソウ>は、葉に毛があって鼠の耳のような形をしていることと、花が粒状で黄色の麹に似ていることから名付けられた。嘗ては草餅(母子餅)の材料に使われたが、色が薄いので蓬が使用されるようになった。

1)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
2)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
3)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版,2011

            [11.141.AFF:2015.5.3.古泉秀夫]