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『フジについて』

水曜日, 5月 27th, 2015

KW:薬用植物・フジ・藤・ヤマフジ・山藤・ムラサキフジ・紫藤・ノダフジ・野田藤・紫藤・イソフラボノイド・WTTC

Q:フジについて

A:我が国に生育するフジの仲間は2種類有り、ヤマフジとフジ(別名:ノダフジ、ムラサキフジ)である。

[分布]ヤマフジは近畿地方以西の本州、四国、九州の暖帯に生育する。フジは本州、四国、九州、対馬の温帯、暖帯に分布する。藤はしばしば観賞用に栽植される日本特産の蔓性落葉低木である。

[学名]Wisteria floribunda。マメ科フジ属。ムラサキフジ(紫藤)、ノダフジ(野田藤)ともいう。ノダフジ(野田藤)の名称は、この種が植物学者の牧野富太郎により命名されるきっimage

 

 

 

 

 

 

 

かけとなった、フジの名所であった大阪市福島区野田に由来するとされる。中国の『藤』はシナフジ(紫藤:Wisteria sinensis)のことであり、別の植物である。山藤と藤との区別は、蔓の巻imageき付き方で分別し、山藤は左巻き、藤は右巻きである。

[形態]藤の幹は著しく伸長して分枝し、右巻きに他の物に巻き付き、長さ10m以上に達する。葉は互生し、奇数羽状複葉で、小葉は11-19個。卵形から皮針形でやや鋭尖頭、全縁。花期は5-7月。淡紫色か白色の蝶型花を多数下垂する総状花序に付ける。果実は莢果。

[薬用部分]樹皮に出来る瘤(藤瘤、別名:藤の実)が用いられる。老木に多く出来る瘤を採集し、水洗い後、日干しにして保管する。種子は7-8月頃に莢ごと採取する。天日で乾燥させ、種子のみを収集する。藤瘤は多くは地上部にあるが、稀れに地下に埋もれていることもある。

[成分]樹皮にイソフラボン配糖体のウェスチン、ウエスタリン、tannin、樹脂、花に蛋白質、vitamin等を含む。藤瘤のメタノール抽出成分としてイソフラボノイドがあり、発がん抑制作用があるとする報告がある。また、藤の樹皮には有毒なウイスタリン(wistarin)、種子にシチシン(cytisine)等が含まれているとする報告もある。

*シチシン(cytisine):毒性のあるalkaloidで、過剰摂取は呼吸を妨げ、死に至ることもある。
*ウイスタリン(wistarin):藤類の植物体にはウィスタリン配糖体が含有まれており、有毒であるが、少量で腹痛等の薬として利用されることがある。

[薬効]薬理作用及びその効果に関しての詳細は不明。民間療法として消炎、止瀉などの効果があるとされた。下痢止め、口内炎、歯肉炎、扁桃炎等に用いられる。

[使用方法]口内炎、歯肉炎、扁桃炎等に藤瘤1日量3-5gに300mLの水を加え、1/3になるまで煎じて煮詰め、この煎液でうがいをするとよい。また粉末を脇の下に付けると、腋臭症を防ぐ効果があると云われている。

藤瘤は民間療法として胃癌に制癌剤として用いられるが、効果は必ずしも明らかではない。
単独では藤瘤を刻み粉末として用いる。1日量10g、2-3回に分けて水で服用する。多くは藤瘤(10g)・菱の実(10g)・訶子(カシ*)(5g)・薏苡仁(10)を配合したものを1日量とし、水約0.7-0.8Lで煎じ、約半量まで煮詰め、1日3回食間に服用する。
訶子により嘔吐の症状が出る場合、タラノキの根皮を用いることがある。
種子は緩下剤として使用される。種子1-3gを1日量とし、水約200mLを加え、半量になるまで煮詰めたものを空腹時に3回に分けて服用すると、下痢止めになると云われている。

[その他]
WTTC(ダブリュティーティーシー)について
・藤瘤(Wisteria floribunda)
・訶子(Terminalia chebula)
・菱実(Trapa japonica)
・薏苡仁(Coix lacyma-jobi)
の植物名(ラテン名)の頭文字を並べたもので、古くから横須賀市の薬局で、「船越の胃腸薬」と称して用いていたものを、昭和30年代に、千葉大学の中山恒夫教授がガンに有効だと発表して有名になったとされる。

*訶子:印度・ビルマを原産とし、中国では雲南等で植栽されているシクンシ科の落葉高木。ミロバラン(Terminalia chebulo)の果実。

1)水野瑞夫・他:くらしの薬草と漢方薬-ハーブ・民間薬・生薬-新日本法規,2014
2)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版株式会社,2011
3)三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988

                    [11.141.FLO:2015.5.2.古泉秀夫]