OTCエパデール「試験的販売」へ
火曜日, 3月 31st, 2015魍魎亭主人
高脂血症治療薬「エパデール」(一般名:イコサペント酸エチル)のスイッチOTC薬が4月中旬にも発売される見通しだった。しかし、販売に際して「薬局・薬店が適正に販売できているか」を見極めるというOTC薬としては前代未聞の「適正使用調査」が義務付けられることになったという。そのため調査が終わるまでは店舗を限定した「試験的な販売」が行われるという。調査は最短でも3ヵ月は要すると見られ、「本格販売」までにはまだ相当の時間がかかりそうだという報道がされていた。
「エパデール」のスイッチOTC薬については、承認段階から問題があったと云うことである。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の一般用医薬品部会で、日本医師会の常任理事が、エパデールのOTC化に断固反対の姿勢を崩さず、審議は難航を極めた。しかも全会一致の慣例を無視して、医師会の常任理事以外が賛成するという賛成多数の原則論で珍しく厚生労働省が押し切ったという経緯がある。
「エパデール」のスイッチOTC薬化に、厚生労働省が珍しく執念を燃やしたのは、今後のself-medicationの導入推進の手段として、導入を図りたいと考えていたからではないかと思われる。従って今後も慢性疾患の治療薬をswitch化すると云う底意が隠れている。医師会はそれを見抜き、断固反対という姿勢を見せていたのではないか。それからすると今回の「適正使用調査」は、簡単に済むような話にはならないのではないかと思われる。
医師会の意見が種々加味されれば、「適正使用調査」の内容は、簡単なものにはならないことが予測される。現在、具体的な内容が未だ見えてこないので何とも云いようがないが、厚生労働省も経緯があるだけに、抵抗できないのではないか。
不思議なことは、「エパデール」のような、血液検査をしなければその効果が判定できないような薬を何故OTC薬化しようとするのか。更に何回か薬を服めば治癒するという性質の薬ではない。この様な厄介な薬をOTC薬化するのでは無く、短期間の使用で結果の出る薬はもっと有りはしないか。
例えば肉芽形成作用のある傷薬の外用剤あるいは化膿性皮膚疾患に使用可能な外用剤等々、医師の処方では無く、医師の指示書に基づいて薬局で個人が購入する、その様な手法の薬の導入があってもいいのでは無いか。
「エパデール」のOTC薬は2社が販売したが、1社は「適正使用調査」の困難さから撤退したと聞く。これでは仏造って魂入れずで、意味がない。医療用医薬品のOTC薬化については、どの範囲の薬を取り上げるのか、基本的なところを決めてから話を進行させるべきではないのか。何でもかんで槍玉に挙げるというやり方をしていたのでは、医師会の反論を受けるだけで終わってしまう。
(2015.3.31.)