「タミフルの予防投与について」
日曜日, 3月 8th, 2015KW:薬物療法・タミフル・予防投与・抗インフルエンザウイルス剤・oseltamivir phosphate・A型インフルエンザウイルス・B型インフルエンザウイルス
Q:TVでタミフルの予防投与について紹介されていたが、詳細な情報について知りたい。
A:抗インフルエンザウイルス剤『タミフル』(中外製薬)は、oseltamivir phosphate(JAN)を75mg/Cap.の製剤と30mg/gの3%ドライシロップ剤が市販されている。
本剤の適応は『A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防』(添付文書,2014.11.)。
また、本剤の効能・効果については、以下の通り記載されている。
『1.治療に用いる場合には、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症と診断された患者のみが対象となるが、抗ウイルス薬の投与がA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の全ての患者に対しては必須ではないことを踏まえ、患者の状態を十分観察した上で、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。
特に、幼児及び高齢者に比べて、その他の年代ではインフルエンザによる死亡率が低いことを考慮すること。
2.予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。
(1)高齢者(65歳以上)。
(2)慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者。
(3)代謝性疾患患者(糖尿病等)。
(4)腎機能障害患者(<用法・用量に関連する使用上の注意>の項参照)。
また、本剤の用法及び用量は
『1.治療に用いる場合:通常、成人及び体重37.5kg以上の小児にはオセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間経口投与する。』
『2. 予防に用いる場合:(1) 成人 通常、オセルタミビルとして1回75mgを1日1回、7~10日間経口投与する。(2) 体重37.5kg以上の小児 通常、オセルタミビルとして1回75mgを1日1回、10日間経口投与する。』とされている。
また、本剤の使用上の注意として
『3.1歳未満の患児(低出生体重児、新生児、乳児)に対する安全性及び有効性は確立していない。4.本剤はA型又はB型インフルエンザウイルス感染症以外の感染症には効果がない。5. 本剤は細菌感染症には効果がない』の記載がされている。
本剤は警告として次の記載がされている。
警 告
1.本剤の使用にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。
2.10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。
3.**インフルエンザウイルス感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤の予防使用はワクチンによる予防に置き換わるものではない。
用法及び用量に関連する使用上の注意として
『1.治療に用いる場合には、インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること(症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない)。
2.予防に用いる場合には、次の点に注意して使用すること。
(1) インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始すること(接触後48時間経過後に投与を開始した場合における有効性を裏付けるデータは得られていない)。(2) インフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は、本剤を連続して服用している期間のみ持続する。
3.成人の腎機能障害患者では、血漿中濃度が増加するので、腎機能の低下に応じて、次のような投与法を目安とすること(外国人における成績による)。小児等の腎機能障害患者での使用経験はない。
Ccr(mL/分)>30投与法(治療):1回75mg 1日2回
Ccr(mL/分)>30投与法(予防):1回75mg 1日1回
Ccr(mL/分)10<Ccr≦30投与法(治療):1回75mg 1日1回
Ccr(mL/分)10<Ccr≦30投与法(予防):1回75mg 隔日
Ccr(mL/分)≦10投与法:推奨用量は確立していない
[Ccr:クレアチニンクリアランス]
本剤により『重大な副作用』として、次の副作用が報告されている。
1.ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、顔面・喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下等発現)2.肺炎(薬剤性、感染性等鑑別)。3.劇症肝炎、肝機能障害、黄疸(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-Pの著しい上昇等を伴う肝機能障害、黄疸)。4.皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)。5.急性腎不全。6.白血球減少、血小板減少。7.精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等発現)。8.出血性大腸炎(血便、血性下痢等の異常)。
尚、本剤の作用機序について、オセルタミビルリン酸塩の活性体はヒトA型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し(IC50:0.1~3nM)、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制するとされている。
本剤の『薬事法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項』として、「予防」投与に関する通知文書は『保医発1218第1号(平成21年12月18日)』-「タミフルカプセル75及び同ドライシロップ3%の薬事法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正について」により通知されている。
1)タミフルカプセル75添付文書,2014.11.
2)厚生労働省保険局医療課長発 地方厚生(支)局医療指導課長等宛通知 保医発1218第1号,平成21年12月18日
[035.1.OSE:2015.1.15.古泉秀夫]