『キンミズヒキについて』
木曜日, 2月 5th, 2015
KW:生薬・キンミズヒキ・金水引・金水挽・仙鶴草・龍牙草・竜牙草・救荒本草・Agrimonia pilosa
Q:生薬「キンミズヒキ」の作用について
A:本州、四国、九州、台湾、中国大陸の山谷に広く見られる多年草。陽の当たる道端、山野、丘陵等に自生する。水挽に似た黄色い総状花序の花をつけるので、キンミズヒキ(金水引・金水挽)の名前がある。草丈は30-80cmに直立し、枝分かれする。葉は互生し、羽状複葉。8-9月に黄色い5弁花を穂状に咲かせる。開花期は7~9月、結実期は9~10月。荒地、山の斜面、道端、草地に生える。
処方名:仙鶴草。
異名:竜牙草、施州竜牙草、瓜香草[救荒本草]、黄竜尾、鉄胡峰、金頂竜牙、子母草、毛脚茵、黄竜牙、草竜牙、地椒、黄花草、竜頭草、寸八節、過路黄、毛脚鶏、傑里花、線麻子花、脱力車、刀口薬、大毛薬、地仙草、路辺鶏、毛将軍、鶏爪沙、路辺黄、五蹄風、牛頭草、瀉痢草、黄花仔、異風頸草、子不離母、父子草、毛鶏草、群蘭敗毒草、狼牙草。
基原:バラ科(Rosaceae)龍牙草(Agrimonia pilosa Ledeb.(キンミズヒキ)の全草を乾燥したもの。キンミズヒキ属。
学名:Agrimonia pilosa Ledeb.var japon(Miq.)Nakai。救荒本草に竜牙草と記載。
生薬名:キンミズヒキ、金水挽、龍牙草(リュウガソウ)。
性味:味は苦、性は涼。
薬用部分:全草。花期の全草。
成分:全草にはagrimonin(アグリモニン)・agrimonin A(C29H19O5)・agrimonin B(C14H19O10)・agrimonin C・エナメル質・ビタミンK1等。
その他、アグリモノリド、tannin(ピロカテコール系tannin、没食子tanninなど)、ステロール、有機酸、フェノール性成分、サポニンなどを含む。flavonoid、isocoumarin。主有効成分はtanninで、主に地下部を用いる。根はtannin8.9%を含み、茎はtannin6.5%を含む。葉はtannin16.4%を含む。茎と葉はその他ルテオリン-7-β-グルコシドとアビゲニン-7-β-グルコシドを含む。水性エキスには利胆(胆汁の流れを良くする)作用もあると云われている。疎毛竜牙草はアグリモールA・B・C・D・Eを含み、マラリア原虫に対して抑制作用を持つ。
西洋医学では未開発で、中医学でも殆ど使用されていないとする報告も見られる。
薬効:根に粘膜収縮作用のあるtanninを含み、粘膜腫脹を取る作用がある。歯茎の出血や腫れ、痛み、口内炎に効果があるとされる。下痢止めにも用いられる。下痢止めとして、その程度に応じて4-20%水煎液を内服する方法もあるが、嘔気が来たり、大量では嘔吐する場合もあるので、外用として使用する方がよい。
効能:歯茎の出血、腫れ、口内炎、下痢。
①咽頭炎、扁桃炎、咽頭ジフテリア、口内炎、舌炎、齲歯、歯齦炎(歯茎の腫れ)、歯槽膿漏、抜歯後の腫れ等に、地下部の10%水溶液を冷やした後、この液で1日3-10回程度うがいする。1回あたり口に含む量は8-10mLでよい。味に違和感がある場合は、1.5倍程度に希釈してもよい。
②急性湿疹、お灸の跡、靴ずれ等には地下部の2-10%水煎液で冷湿布する。
③各種の疱疹、とびひ、水疣には地下部の25%以上の濃い水煎液を水疱を破いて塗布する。
④おでき、汗疹のより(固結)には地下部の20-30%濃厚水煎液で冷湿布する。
⑤創傷では根の5-10%消毒用アルコール冷浸液(局方アルコールに根を浸し、時々振り混ぜて1週間冷暗所に保存、一度漉した液)は、tannin質とアルコールの消毒作用で、優れた治療薬となる。傷口の洗浄には2倍程度に希釈した液を使用する。
救荒草本:実は収穫し、搗いたり磨麺として食べる。4月ごろ新葉をお浸しとして食べる。荒年には種子を搗きあるいは摺り、粉麺として糧物に充てる。
1)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報,2003
2)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
3)上海科学出版社・編:中薬大辞典 第三巻;小学館,1998
4)神戸中医学研究会・訳編:漢薬の臨床応用;医歯薬出版株式会社,1979
5)佐合隆一:救荒雑草-飢えを救った雑草たち-;全国農村教育協会,2012
[011.1.AGR:2015.1.8.古泉秀夫]