『群大の腹腔鏡手術・他の肝臓術手も』
金曜日, 1月 2nd, 2015魍魎亭主人
ここ何日か群大の手術ミスの話題が、マスコミを賑わせていた。最初は肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が死亡したと云うものである。群大病院は2014年12月19日に、病院の所在地である前橋市内記者会見し、調査の中間報告を発表した。
それによると、「8人とも術前検査が不十分で、手術が過大な負担になり容体を悪化させた可能性がある」との認識が示されたが、執刀医が高難度手術を続けた動機など事態の背景にはいまだ不透明な部分が多い。野島美久病院長は「大変残念に思い、責任を感じている」と苦渋の表情を浮かべたとされている。
同病院の第二外科が2010年12月~14年6月に行った腹腔鏡を使う肝臓手術を受けた患者92人中58人が保険適用外の高難度手術だったとみられ、うち8人が手術後100日以内に死亡している。
更に驚くべきは、手術後に死亡した患者について問題点を検証する死亡症例検討会を、この8人の患者が死亡しても開かれていなかったと云う。病院長もその事実を認め、「診療科長(第二外科教授)の責任は重い」と述べたが、なぜ3年半にわたり死亡症例の検討さえ行われなかったのか明確な理由は明かさず、「認識の問題だと思う」とするにとどまった。執刀医が高難度手術を繰り返した意図について問われると、言葉に詰まり、返答に窮する場面もあったとされている。
事態を受けた改善策として、第一外科、第二外科など番号制の診療体制を廃止し、診療科を臓器別に再編成することが打ち出された。群馬大病院では第一外科、第二外科ともに、内部に消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科といった診療グループを持ち、重複する。このことが、限られた人材の分散化や閉鎖性を生み、問題の一因となったとみられる。
ただ、同病院では2006年、第一外科が手がけた生体肝移植で臓器提供者に重い障害が残る深刻な医療ミスが発覚している。何年も前にすでに見直しの機会がありながら、今まで本格的な再発防止策に着手できなかった理由もはっきりしていない。今月初旬、次期学長への就任が決まった野島病院長は、自らの責任問題について、「まずなすべきことは、何が問題だったか調査、検証すること。しっかり応えなければと思う」と語ったという。[読売新聞,第49891号,2014.12/.20.]
群大でこの手術をやった方は、開腹手術においても何例かの死亡例を出しているという報道がされていたが、その意味ではどの程度の技術をお持ちの方だったのか。それとも症例数を稼ぎたいと云うことで、手術適応外の重症患者も含めて手術をしたという事なのだろうか。
腹腔鏡手術の場合、開腹手術との比較で云えば、患者側の負担は明らかに少ない。それもあって外科の医師は、安易に手術を勧める傾向があるのではないか。確かに開腹手術と異なり、患者の負担は少ないかもしれない。しかし、手術野は極端に狭くなり、患部を切除する場合も、ある意味遠隔操作である。技術的には相当熟練した技を必要とするのではないか。更に患者の負担が少ないからと云うことで簡単に手術の適応にし、臓器を摘出する。今回の群大の手術例には、そういう事例も含まれていたのではないか。
更に驚くべきは、死亡者が出た事例について、何ら検証がされていなかったという点では、群大の第二外科というのは組織であって組織ではないと云われても仕方が無い。それぞれが好き勝手に自分の仕事をしていたということなのか。
12月26日の報道では、塩崎厚労大臣が医療法に基づく立入り検査を行う方針を明らかにしたという。詳細な事実関係と安全管理体制について調べると発表したようである。厳密な調査結果が報告されることを期待している。
(2014.12.26.)