「地に落ちた製薬会社の権威」
水曜日, 12月 3rd, 2014魍魎亭主人
製薬大手のノバルティスファーマ社は2014年6月9日、営業担当者が、副作用など薬剤の何らかの問題を把握しながら、同社の内規に違反して安全性担当部門に24時間以内の報告を怠ったケースが約1万例に上った、と発表した。この中には、厚生労働省に報告が必要な重要事例が含まれているという。
同社は今年4月、東大病院などが行う白血病治療薬の研究不正問題の発覚を受け、全社員を対象に、報告漏れの調査を実施。2002年から現在までのケースが集まったが、約2割はいまだ薬剤名が分かっていない。同社では「現場に意識の甘さがあった」とコメントしている[読売新聞,第49697号,2014.6]。
製薬会社ノバルティスファーマが、国に報告義務がある副作用約1万件を放置していた問題で、同社は2014年10月1日、因果関係が否定できない重い副作用がさらに1299件あったと発表した。死亡例もあるが、因果関係は不明とされている。8月末にも2579件の報告漏れを発表しており、合計3878件。これらが報告漏れに当たる可能性があり、厚生労働省は、報告すべき事案だったかを最終的に判断する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の調査を待って、処分を検討する。
同社によると1299件の薬の内訳は、白血病薬「グリペック」621件、同「タシグナ」299件、鉄過剰症治療薬「エクジェイド」152件などとなっている。薬事法では死亡や知られていない重い副作用は15日以内、その他の重い副作用は30日以内に報告するよう定めている。しかし、同社の営業担当者は、患者や医師のアンケートを回収するなどして把握した副作用情報約1万件を、情報を集める社内の部署に伝えていなかった。
厚労省は7月、21件の副作用報告義務違反で同社に業務改善命令を出したが、さらに報告義務違反の恐れがある1万件について調査を求めていた。[産経新聞,10月1日;http://headlines.yahoo.co.jp,副作用]
クドいようであるが、薬物によるadverse drag reactionは処方医がその被害を受けるわけではなく、調剤する薬剤師が被害を受けるわけでもない。まして薬を売ることで稼いでいる製薬会社で働いている社員御一統様でもない。いわゆる患者と云われ、高い金を支払い薬物治療の恩恵を受けるとされる人々である。
ハッキリ申し上げて、患者は、adverse drag reactionの被害を得るために治療を受けているわけではない。治るという期待の元に薬を服用し、期待しない効果としてadverse drag reactionの被害に遭うのである。場合によっては、命に係わるadverse drag reactionの可能性がある。その貴重な情報をルール通り報告せず、隠蔽することがあってはならない。どのような場合であれ、患者の貴重な経験を無にするような行動を製薬会社があるいは関係者が取ってはならない。今回の問題は恥ずべき問題であることを肝に銘ずべきである。
(2014.10.15.)