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『小石川後楽園から明治神宮外苑』

日曜日, 5月 4th, 2014

                        鬼城竜生

そろそろ紅葉が見られるのではないかと云うことで、11月23日(土曜日)にかみさんと二人で小石川後楽園に紅葉を見に行くことにした。大江戸線飯田橋駅C3出口を出た鼻ッ先に小石後楽園-01川運動場があり、右手には日中友好会館の建物が見える。信号を運動場側に渡り、運動場の塀に沿って少し行くと、既に紅葉したモミジのある小石川後楽園の入口が見える。

小石川後楽園の庭園は、江戸時代初期、寛永年間(1624年~1643年)に、水戸徳川氏の初祖である徳川頼房によって、江戸の中屋敷(後に上屋敷となる。)の庭として造られたもので、二代藩主の光圀の代に完成した庭園である。

光圀は作庭に際し、明の儒学者である朱舜水(しゅしゅんすい)の意見をとり入れ、円月橋、西湖堤等の中国の風物を取り入れ、庭園名も舜水の撰名により、中国の范仲淹(はんちゅうえん)の『先憂後楽』(士はまさに天下の憂いに先だって憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ:岳陽楼記)から取って「後楽園」と名づけられたとされる。

庭園は池を中心にした「回遊式築山泉水庭園」になっており、随所に中国の名所の名前をつけた景観を配し、中国趣味豊かなものになっている。また、後楽園の特徴として各地の景勝を模した湖・山・川・田園などの景観が巧みに表現されている所だという。

後楽園-02後楽園-03この地は小石川台地の先端にあり、神田上水を引入れて築庭されたという。また光圀の儒学思想の影響の下に築園されており、明るく開放的な六義園と好対照をなしている。なお、後楽園は昭和27年3月、文化財保護法によって特別史跡及び特別名勝に指定されている。特別史跡と特別名勝の重複指定を受けているのは、都立庭園では浜離宮恩賜庭園と後楽園の二つだけだとされる。全国でも京都市の鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)、醍醐寺三宝院、奈良県の平城京左京三条ニ坊宮跡、広島県の厳島、岩手県の毛越寺庭園、福井県の一乗谷朝倉氏庭園を合わせ9ヶ所だけだと報告されている。

西門から入り、枝垂れ桜の木を左手に見て西行堂跡に出る。西行堂跡とは、藩祖頼房の時代に、御鞍打師「小野荘兵衛」作の木像を安置したことから西行堂と名づけられた。ここにある西行の歌碑は、九代斉昭の「駐歩泉」の碑にちなみ同夫人が建てたものである。なおこの堂は戦災により焼失したとされている。此処に二対の狛犬が置かれているが、いずれも火を被ったと見えて、原形をとどめていないが、それなりに風格のある狛犬に見える。

次に駐歩泉の碑の前に出るが、これは九代斉昭が、西行堂側の流れを西行の和歌「道のべにしみづながるる柳かげしばしとてこそたちどまりつれ」にちなみ「駐歩泉」と命名し、自ら筆をとり碑後楽園-04後楽園-05を建てたものであるとされている。右に大泉水を見ながら紅葉林、龍田川を過ぎて『延段』にいたる。延段とは中国風の素朴な石だたみで、切石と玉石を巧みに組み合わせたものである。これを登ると右に『木曽川』、『寝覚滝』と続き、唐門跡に至る。『寝覚滝』は内庭池水が滝となって木曽川に落ちるところで、木曽路の名所「寝覚め床」に因んでそう呼ばれているという。

唐門跡から池側によると鳴門、竹生島。続いて七代治紀は将軍家から賜った鷹を大切にしていたという。鷹は、治紀が没した四年後に死んだため、八代斉脩(なりのぶ)がこれを哀しんで、建てた碑が癭鷂碑(えいようひ)であるとする説明が見られる。

その他円月橋がある。円月橋は朱舜水の設計と指導により名工「齣橋嘉兵衛」が造ったと云われている。橋が水面に映る形が満月になることからこの名がつけられた。後に八代将軍吉宗が江戸城吹上の庭に造ろうとしたが遂に果たせなかったといわれている。驚いたことに円月橋の下の浅い水量の流れに後楽園-06後楽園-07カワセミが餌を撮りに来るという話を池の周りにカメラを据え付けていた人が話してくれた。彼らは専らカワセミの写真を撮るために待期しているようである。

橋としては他に通天橋がある。通天橋は東福寺にある通天橋を模したもので、この呼び名がある。東福寺のそれは朱塗りではないが、小石川後楽園の通天橋は朱塗りで景観に映える容姿である。冬の寒々しい景観の中にあっても、一際輝きを放つ魅惑の橋となっている。橋越しに見えるのは水戸光圀が建立した得仁堂。朱塗りの橋越し、林の中にひっそりと佇む姿が京都の侘び寂びの精神を彷彿とさせると云われている。

後楽園は一部工事中であったが、そこそこ紅葉を見ることはできた。ただ、全体的に少し早すぎたのか、それとも遅かったのか、その辺はよく解らなかった。来たついでにと云うことで、大江戸線青山一丁目駅C1出口から出て、左に青山二丁目の信号を目指すと、青山通りから神宮外苑エリアを望む通りにイチョウ並木がある。黄葉の時期、此処の公孫樹は見物人が多いところで、都内では有名な黄葉点である。見頃には一日二日早いような気もしたが、風が吹けば一発で終わる話、取り敢えず夕日に輝くイチョウの写真を撮り本日の全行程を終了した。本日の総歩行数7,970歩。

              (2013.12.22.)