トップページ»

「長時間作用型のインスリン製剤について」

金曜日, 4月 25th, 2014

 

KW:臨床薬理・長時間作用型・インスリン製剤・インシュリン製剤・インスリングラルギン・インスリンデテミル・ランタス注・レベミル注・エキセナチド・exenatide・ビデュリオン皮下注用

Q:介護施設の通所者が1週間に1回のインシュリン注射で治療を受けていると入っているが、そのインシュリン製剤の商品名は

A:長時間作用型のインスリン製剤として、次の製剤が市販されている。

①インスリングラルギン(遺伝子組換え)       insulin glargine(genetical recombination)
[商]ランタス注(サノフィ)1000単位/10mL/v 1日1回
②インスリンデテミル(遺伝子組換え)         insulin detemir(genetical recombination)
[商]レベミル注(ノボ) 300単位/3mL/筒 1日1回
両剤は「持続型溶解インスリンアナログ製剤」に分類される製剤で、いずれも1日1回の投与で、週1回の投与のインスリン製剤は見当たらない。

糖尿病治療剤で週1回の注射で治療可能とされている製剤は、『2型糖尿病治療薬』エキセナチド(exenatide)の注射剤で商品名は『ビデュリオン(イーライリリー)』である。本品は『2mgを週に1回、皮下注射する』とされている。

本剤の有効成分であるexenatideは39個のアミノ酸からなる合成ペプチドで、ヒトGLP-1に対して53%の相同性を示すGLP-1受容体アゴニストであり、GLP-1受容体に結合してcAMPを増加させ、グルコース濃度依存的にインスリン分泌を促進させる。薬理作用については、グルコース依存性のインスリン分泌促進作用、高血糖時における過度のグルカゴン分泌抑制作用、膵β細胞の保護作用などが考えられており、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する。化学構造的には、exenatideはN末端から2番目のアミノ酸がヒトGLP-1のアラニンと異なりグリシンであることから、内因性ペプチド分解酵素であるジペプチジルアミノペプチダーゼ-4(DPP-4)による分解に抵抗性を示し、作用が持続する。

本剤はexenatideを生分解性のd,l-ラクチド・グリコリド共重合体(50:50)(PLG)のマイクロスフェア内に包埋することにより、1週間に1回の皮下投与で、exenatideを1日2回皮下投与する製剤(バイエッタ皮下注)と同様な効果を示すよう設計された徐放製剤である。

exenatideは化学合成されたペプチドで、トカゲ(Heloderma Suspectum)由来のエキセンディン-4(Exendin-4)と同じ39個のアミノ酸配列を有している。

GLP-1とは、グルカゴン様ペプチド-1 (Glucagon-like peptide-1) の略で、1983年に同定された消化管ホルモンである。GLP-1は消化管に入った炭水化物を認識して、消化管粘膜上皮から分泌される。1971年に同定されたGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とともにインクレチンと呼ばれ、膵臓からのインスリン分泌を促進するものなので、糖代謝に密接に関連する。

ビデュリオン®皮下注用2mgの有効成分であるexenatideは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1:glucagon like peptide-1)の主成分であるGLP-1(7-36)amideの対応部分のアミノ酸配列において53%の相同性を示し化学合成により製造されている。

ビデュリオン®皮下注用は、血糖値が高いときだけインスリンを出させて、血糖値を低下させる。本剤はexenatideを有効成分とする薬剤で、GLP-1と同じ作用を有し、すい臓にあるβ細胞を刺激することによって、血糖値が高いときだけインスリンを出させて、血糖値を低下させる

1)ビデュリオン皮下注用2mg 添付文書,2014.3.
2)ビデュリオン皮下注用2mgインタビューフォーム,2014.3.
3)高久史麿・他監:治療薬マニュアル;医学書院,2014

 

                     [015.4.EXE:2014.4.22.古泉秀夫.]