トップページ»

「有機ゲルマニウムについて」

金曜日, 3月 21st, 2014

 

KW:薬名検索・健康食品・ゲルマニウム・有機ゲルマニウム・乳癌・術後・副作用・相互作用・禁忌

Q:乳癌の術後に健康食品として売られている有機ゲルマニウムを摂取しているが、効果は期待できるか

A:ゲルマニウム及び有機ゲルマニウムについて、次の報告が見られる。

英名

germanium

品名 ゲルマニウム 有機ゲルマニウム化合物
英名 germanium organogermanium
性状等

Ge.原子番号32の元素、原子量72.59。周期表、典型元素IV族に属する非金属元素の一つ。
1885年C.Winklerにより発見された。地表近くのケイ酸塩岩石中に広く分布。銀、スズ、砒素などの鉱物、特に閃亜鉛鉱(硫化物)が主原料。地核中の存在度1.5ppm(52位)。硫化物より金属を作る時の副産物として得られる。mp937.2℃。灰黒色金属光沢を持つ。その他、青白色の硬い金属で、融点936℃、沸点約2700℃、d5.325、空気中ではかなり安定で、酸、アルカリにも侵されにくい。粉末は濃硝酸に溶ける。王水には溶けるが塩酸には溶けないとする報告が見られる。
二酸化ゲルマニウム(毒性がある)。

germanium-炭素(水素も含む場合が多い)結合を持つ化合物の総称。1887年C.WinklerによるテトラエチルゲルマニウムGe(C2H5)4の合成が最初である。同じIVB族のケイ素化合物に似たところが多く、ケイ素の場合のシランに相当するゲルマンGeH4を母体として命名される。現在の所4価のgermaniumの有機化合物だけが知られている。
アルキル化合物、アリール化合物は、空気、水に対して安定である。また有機ゲルマンGeR4は化学的にも熱的にも安定で、アルキル化合物は無色で蒸留可能な液体、アリール化合物は結晶として単離出来る。

次に有機ゲルマニウムの製品として市販されている商品について、医薬品として厚生労働大臣の承認を受けている医薬品と、いわゆる健康食品として市販されている商品について紹介する。

商品名 セロシオンカプセル10
(アステラス)
Ge-132
一般名

プロパゲルマニウム(propagermanium)。
化学名:3-oxygermylpropionic acid polymer。
治験記号:SK-818。
CAS番号:12758-40-6。

一般化学名:カルボキシ・エチル・ゲルマニウム・セキスオキサイド:poly-trans[(2-carboxyethl)germasesquioxsane]。略号:p・t-CEtGeO。化学名:Carboxyethylgelmanium sesquioxide。
性状 (C3H5GeO35)n 。プロパゲルマニウムは、白色の結晶性の粉末で、臭いはなく、味は僅かに酸味がある。水に溶け難く(1g/150-210mL)、エタノール、アセトン、エーテル、ジクロルメタン又はヘキサンに殆ど溶けない。0.02N-水酸化ナトリウム液に溶ける。融点:約230℃(分解)。

浅井ゲルマニウム研究所が水溶性の有機ゲルマニウムの合成に成功、Ge-132として治験の検討がされた。
元素記号:Ge、原子番号:32、原子量:72.61。炭素族元素の一つ。空気中で安定、赤熱すると白色の酸化ゲルマニウムを作る。アルカリ溶液、塩酸に不溶。王水に可溶。Ge2+、Ge4+があり4価が安定である。

作用機序

propagermaniumは、IL-1、IL-2、INF-γ産生増強等により、細胞障害性T細胞、NK(natural killer)細胞を賦活し、ウイルス感染細胞を破壊する。また、抗体産生増強によりウイルス関連抗原の排除を促す。更にIFN-α/β産生増強により、ウイルスの増殖を抑制する。

ウイルス感染防御作用(in vivo):単純ヘルペスII型ウイルス感染マウスの死亡率を低減、ワクシニアウイルス感染マウスに発現するポック数抑制。

免疫賦活作用:細胞性免疫及び液性免疫賦活作用。T細胞賦活作用。細胞障害性T細胞(Tc細胞)誘導作用。NK細胞活性化作用。IFN産生増強作用。

肝障害に対する作用:動物実験で四塩化炭素、ガラクトサミン等による急性肝障害に対して血清トランスアミナーゼの上昇抑制。▼主要排泄臓器:腎臓(尿中:41.9%/24時間・糞中:50.1%/72時間)。

germaniumはヒトにおけるミネラルとしての必須性は認められていない。しかし微量で循環器や免疫系に対する働きがあると考えられているが、その役割と機序は不確定である。食品ではムツ、鰊、鮪等の魚類や干しひじき、トマトジュース等に含まれている。
抗酸化作用があり、高血圧、高脂血症、心臓病、脳への血液循環を改善する作用。体内の酸素の消耗を防ぎ、認知症等を予防する可能性、鎮痛、抑鬱症状に作用。インターフェロンの産生を促し、免疫機能亢進、食物アレルギーの改善。骨関節炎、リウマチ性関節炎、骨粗鬆症の改善。
ラットにおいてゲルマニウム欠乏により骨変化、脛骨DNA減少。ケイ素欠乏による変化抑制。

効能
・効果

HBe抗原陽性B型慢性肝炎におけるウイルスマーカーの改善
[有効以上:32.9%・やや有効以上:62.2%]。

ヒトでの有効性については、信頼できる実証データは十分に揃っていない。効能・効果の標榜は薬事法違反。
用法
・用量

1日30mg・分3 食後。
投与開始16週目にvirusesmarker(HBe抗原等)を含めた臨床検査を実施、virusesmarkerの改善が見られなかった場合、他の療法を考慮する。

1日250mg-500mg服用の指示がされている資料がある。
1日200mg-600mg服用の指示が出されている資料もある。

相互作用 現段階では報告されていない。 germaniumを含むオタネニンジン製品によりフロセミド耐性が1例報告されている。
警告 慢性肝炎が急性増悪することがあり、死亡例が報告されている。 経口摂取回避。安全性未確認。2-36カ月で15-300g摂取で腎障害、死亡が31例報告されている。
禁忌

(1)黄疸のある患者[B型慢性肝炎が重症化することがある。]
(2)肝硬変の患者、あるいは肝硬変の疑われる患者[B型慢性肝炎が重症化することがある。]
(3)本剤に対し過敏症の既往歴のある患者

具体的な情報はないが、医薬品と同様な事象が類推される。
副作用

総症例2,015例中副作用報告は10.9%であった。主な症状はGOT上昇(1.89%)、GPT上昇(1.99%)、倦怠感(.34%)、食欲不振(0.89%)。
重大な副作用:B型慢性肝炎の急性増悪:黄疸、肝不全(投与開始直後2,4,6週-肝機能検査)。
過敏症:発疹、掻痒、蕁麻疹、湿疹。
消化器:食欲不振、腹痛、嘔気、嘔吐、下痢、便秘、腹部膨満感、胸焼け、口内炎。胃もたれ感。
精神神経系:抑鬱、眠気、眩暈、頭痛、手足の痺れ。不眠、振戦。
肝臓:黄疸、GOT上昇、ALT上昇、ビリルビン値上昇。
血液:好酸球増多。白血球減少。
その他:月経異常、脱毛、倦怠感、血圧上昇、発熱、関節痛、胸痛、浮腫。

経口摂取により貧血、筋障害、末梢神経障害、腎不全が起こり、また死に至った例が報告されている。

いわゆる健康食品としての有害事象の報告は現段階で限られているが、可能性として左記の有害事象の発現は起こりえる。

ゲルマニウムの解毒効果によるダイエット効果を標榜した食品に対し、景品表示法違反(優良誤認)で公取委排除命令→合理的根拠認められない[読売新聞,第4744号,2008.4.2.]。

 

1)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999
2)広川薬科学大辞典[第2版];株式会社廣川書店,1990
3)世間の薬学;薬局,35(8),1984
4)清水俊雄・編:改訂増補版 機能性食品素材便覧;薬事日報社,2006
5)奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典2006-2007改訂新版;東洋医学舎,2006
6)セロシオンカプセル10添付文書,2005.4.改訂

[011.1.PRP:2011.5.27.古泉秀夫]