「有機ゲルマニウムについて」
金曜日, 3月 21st, 2014
KW:薬名検索・健康食品・ゲルマニウム・有機ゲルマニウム・乳癌・術後・副作用・相互作用・禁忌
Q:乳癌の術後に健康食品として売られている有機ゲルマニウムを摂取しているが、効果は期待できるか
A:ゲルマニウム及び有機ゲルマニウムについて、次の報告が見られる。
品名 | ゲルマニウム | 有機ゲルマニウム化合物 |
英名 | germanium | organogermanium |
性状等 |
Ge.原子番号32の元素、原子量72.59。周期表、典型元素IV族に属する非金属元素の一つ。 |
germanium-炭素(水素も含む場合が多い)結合を持つ化合物の総称。1887年C.WinklerによるテトラエチルゲルマニウムGe(C2H5)4の合成が最初である。同じIVB族のケイ素化合物に似たところが多く、ケイ素の場合のシランに相当するゲルマンGeH4を母体として命名される。現在の所4価のgermaniumの有機化合物だけが知られている。 |
次に有機ゲルマニウムの製品として市販されている商品について、医薬品として厚生労働大臣の承認を受けている医薬品と、いわゆる健康食品として市販されている商品について紹介する。
商品名 | セロシオンカプセル10 (アステラス) |
Ge-132 |
一般名 |
プロパゲルマニウム(propagermanium)。 |
一般化学名:カルボキシ・エチル・ゲルマニウム・セキスオキサイド:poly-trans[(2-carboxyethl)germasesquioxsane]。略号:p・t-CEtGeO。化学名:Carboxyethylgelmanium sesquioxide。 |
性状 | (C3H5GeO35)n 。プロパゲルマニウムは、白色の結晶性の粉末で、臭いはなく、味は僅かに酸味がある。水に溶け難く(1g/150-210mL)、エタノール、アセトン、エーテル、ジクロルメタン又はヘキサンに殆ど溶けない。0.02N-水酸化ナトリウム液に溶ける。融点:約230℃(分解)。 |
浅井ゲルマニウム研究所が水溶性の有機ゲルマニウムの合成に成功、Ge-132として治験の検討がされた。 |
作用機序 |
*propagermaniumは、IL-1、IL-2、INF-γ産生増強等により、細胞障害性T細胞、NK(natural killer)細胞を賦活し、ウイルス感染細胞を破壊する。また、抗体産生増強によりウイルス関連抗原の排除を促す。更にIFN-α/β産生増強により、ウイルスの増殖を抑制する。 *ウイルス感染防御作用(in vivo):単純ヘルペスII型ウイルス感染マウスの死亡率を低減、ワクシニアウイルス感染マウスに発現するポック数抑制。 *免疫賦活作用:細胞性免疫及び液性免疫賦活作用。T細胞賦活作用。細胞障害性T細胞(Tc細胞)誘導作用。NK細胞活性化作用。IFN産生増強作用。 *肝障害に対する作用:動物実験で四塩化炭素、ガラクトサミン等による急性肝障害に対して血清トランスアミナーゼの上昇抑制。▼主要排泄臓器:腎臓(尿中:41.9%/24時間・糞中:50.1%/72時間)。 |
*germaniumはヒトにおけるミネラルとしての必須性は認められていない。しかし微量で循環器や免疫系に対する働きがあると考えられているが、その役割と機序は不確定である。食品ではムツ、鰊、鮪等の魚類や干しひじき、トマトジュース等に含まれている。 |
効能 ・効果 |
HBe抗原陽性B型慢性肝炎におけるウイルスマーカーの改善 |
ヒトでの有効性については、信頼できる実証データは十分に揃っていない。効能・効果の標榜は薬事法違反。 |
用法 ・用量 |
1日30mg・分3 食後。 |
1日250mg-500mg服用の指示がされている資料がある。
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相互作用 | 現段階では報告されていない。 | germaniumを含むオタネニンジン製品によりフロセミド耐性が1例報告されている。 |
警告 | 慢性肝炎が急性増悪することがあり、死亡例が報告されている。 | 経口摂取回避。安全性未確認。2-36カ月で15-300g摂取で腎障害、死亡が31例報告されている。 |
禁忌 |
(1)黄疸のある患者[B型慢性肝炎が重症化することがある。] |
具体的な情報はないが、医薬品と同様な事象が類推される。 |
副作用 |
総症例2,015例中副作用報告は10.9%であった。主な症状はGOT上昇(1.89%)、GPT上昇(1.99%)、倦怠感(.34%)、食欲不振(0.89%)。 |
経口摂取により貧血、筋障害、末梢神経障害、腎不全が起こり、また死に至った例が報告されている。 いわゆる健康食品としての有害事象の報告は現段階で限られているが、可能性として左記の有害事象の発現は起こりえる。 *ゲルマニウムの解毒効果によるダイエット効果を標榜した食品に対し、景品表示法違反(優良誤認)で公取委排除命令→合理的根拠認められない[読売新聞,第4744号,2008.4.2.]。 |
1)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999
2)広川薬科学大辞典[第2版];株式会社廣川書店,1990
3)世間の薬学;薬局,35(8),1984
4)清水俊雄・編:改訂増補版 機能性食品素材便覧;薬事日報社,2006
5)奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典2006-2007改訂新版;東洋医学舎,2006
6)セロシオンカプセル10添付文書,2005.4.改訂
[011.1.PRP:2011.5.27.古泉秀夫]