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『2,4-ジニトロフェノール(DNP)について』

火曜日, 2月 11th, 2014

KW:薬名検索・毒性・2,4-ジニトロフェノール・DNP・dinitrophenol・やせ薬・肥満クリニック

Q:2,4-ジニトロフェノールについて

A:本品について、厚生労働省から次の注意文書が発出されている。

         事務連絡    
                                                            平成25年10月31日

都道府県
各保健所設置市衛生主管部(局)食品衛生担当課 御中
特別区

                                      厚生労働省医薬食品局局食品安全部基準審査課

健康食品の原材料として使用された成分(2,4-ジニトロフェノール(DNP))の取り扱いについて

今般、英国FSA (英国食品基準庁)が2,4-ジニトロフェノール(DNP)を含む製品の使用後に若者が死亡した最近の事例を受けて、当該成分を含むいずれの製品も使用しないよう強く警告した旨の情報を入手しました。
当該情報によるとDNP は工業用化学物質であり、ヒトが摂取するのは適さないものの、DNP 含有製品(カプセル、タブレット、粉末)が減量目的でボディビルダー等へ販売されており、当該品を摂取した場合、ヒトの健康へ深刻な危害(死亡含む)が生じる可能性がある旨の報告(以下URL 参照)がされています。
日本におけるDNP 含有食品の業としての輸入実績はありませんが、管轄の関係事業者及び消費者からの相談等に対し、健康被害を未然に防止する目的から情報提供していただくようお願いします。
なお、英国FSA の情報については、以下URL で確認できます。

http://www.food.gov.uk/news-updates/news/2013/oct/dnp

 

                                                                      【照会先】
                                                                               
                                                  基準審査課新開発食品保健対策室

      英国FSAが有毒なDNP (2,4-ジニトロフェノール) を含む製品に注意喚起

■勧告内容

2012年11月1日、英国FSA (Food Standards Agency) が有毒なDNP (2,4-ジニトロフェノール) を含む製品「fat-burner」に注意喚起。当該製品摂取との因果関係が疑われる死亡事例が2例報告されている。英国FSAは当該製品を使用しないように、また、使用して体調に不安を感じている場合は医療機関を受診するように勧告。

■解説

当該製品は過剰な脂肪を除去する製品と謳って主にボディビルダー向けに販売されていた。錠剤またはパウダー状の当該製品を摂取したと思われる2名の死亡事例が報告されており、有害なDNP (2,4-ジニトロフェノール) を含むことが判明。

■関連成分

2,4-ジニトロフェノール (2,4-dinitrophenol) (略号:DNP) 。CAS 番号:51-28-5。C6H4N2O5=184.11。エタノールに可溶、アルカリ性で水に可溶。溶液は光に対し不安定。古くから知られている脱共役剤の一種 。5×10-5Mでミトコンドリアをほぼ完全に脱共役させる。解離型、非解離型とも脂溶性で生体膜をよく通過する。葉緑体に対して弱い活性しか持たないが、バリノマイシン共存下で活性が上昇する。

DNPはウォルマン塩系防腐剤と云われる木材防腐剤の成分の一つである。本物質の主な用途は、黒色硫化染料中間体、防腐剤、pH指示薬、試薬である。写真の現像液としても使用される。

DNPを摂取すると食べたものが栄養として蓄えられず、熱として発散してしまうため、体重減少が起きる。嘗て主に米国で“やせ薬”として使われたことがある。1933年、1年間にスタンフォードだけで100mg入りカプセル120万個が処方され、全米で10万人以上がこの治療を受けたと推定されている。しかし、白内障や失明、肝障害、心室細動、顆粒球減少等、重篤な副作用が明らかになり、薬としては使用されなくなった。第二次世界大戦中レニングラードの戦いで、体温上昇を目的に旧ソ連軍が使用したと云われている。
イーストマン・コダック社からDNPを入手した米国の医師が肥満クリニックを開き、1986年に告発されるまでの短期間で、最低11,000人にDNPを処方し、死亡者も出ているとされる。

高濃度のDNPは、口腔や咽頭に化学熱傷を造る。経口摂取により吐き気、嘔吐、動悸、虚脱、発汗、皮膚の紅潮、めまい、頭痛、多呼吸、不整脈が生じ、昏睡や死に至る可能性もある 。少量の長期的な摂取により白内障、皮膚損傷、末梢神経系、心臓への影響などが生じる可能性がある 。

DNP誤飲による治療の基本は酸素吸入と体冷却であり、アルコールガーゼ等で冷却するより水風呂に入れる方がより有効だとされている。
解熱目的でのアスピリン使用は絶対禁忌である。発汗が著しい場合のアトロピンの使用も絶対禁忌であるとされている。水や電解質バランス、輸液には電解質だけではなく、ブドウ糖を補給する。

(1) 生化学辞典 (第3版) ;東京化学同人,1998
(2)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001
(3)国際化学物質安全性カード (2,4-ジニトロフェノール),2003.05

                                                  [011.1.DNP:2013.12.8.古泉秀夫]