「T-705について」
火曜日, 2月 11th, 2014
KW:治験薬・T-705・ファビピラビル・favipiravir・A型インフルエンザウイルス・B型インフルエンザウイルス・インフルエンザ治療薬・RNAポリメラーゼ阻害剤
Q:治験記号T-705の薬剤について
A:T-705とは、富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬。2007年から人を対象とした臨床試験が始まり、2011年厚生労働省に対して製造販売承認を申請した。2009年にタミフルが効き難い高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)にも効果があることを東大の研究チームが確認、米科学アカデミー紀要に発表した。
米国においても承認に向けた臨床治験中で、国防総省は1億3850万ドル(約145億円)の助成をしているという。
既販抗インフルエンザ剤とT-705の作用様式
T-705は富山化学研究所における抗ウイルス剤研究の中から見出されたものであり、富山大学医学部の白木公康教授との共同研究により、感染実験での有効性が確認され、最終的な開発化合物として選定された。
T-705は、各種インフルエンザウイルスに対して試験管レベル並びに感染動物モデルで強い活性を示す。更に、パンデミックが懸念されている鳥インフルエンザに関しても強い活性を示すことがユタ大学から報告されている。
T-705の最大の特徴は、これまでの抗インフルエンザウイルス剤と異なる新規な作用機序である。細胞内でT-705が活性体である三リン酸体に変換され、インフルエンザウイルスの複製酵素であるRNAポリメラーゼを選択的に阻害してウイルスの増殖を直接阻止する。また、新規な作用機序であることから、既販薬剤に対する耐性株に対しても効果を示すと考えられている。
一般名:ファビピラビル(favipiravir)
.化学名:フルオロ-3-ヒドロキシ-2-ビラジンカルポキサミト
申請適応症:「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」。
作用機序:ウイルスの細胞内での複製を阻害することで増殖を防ぐ新しいメカニズムを有するRNAポリメラーゼ阻害剤である。動物試験では、季節性ウイルスのみならず、neuraminidase阻害剤耐性ウイルス、鳥由来の高病原性ウイルスにも効果を示すことが確認されている。また、neuraminidase阻害剤に比べ投与開始時期が遅れても効果を示すことが確認されている。
剤形:経口剤。
2014年2月3日開催された『薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会』において、富山化学が申請した新型・再興型インフルエンザウイルス感染症治療薬「アビガン錠」など3件を審議し、了承した。現時点でアビガンは、新型インフルエンザ等のパンデミックに備える医薬品と位置づけ、季節性インフルエンザへの使用は想定されていない。厚生労働省は承認後も製造販売業者の富山化学に出荷を差し控えるよう要請する。動物などを用いた非臨床試験で、催奇形性(胎児に奇形をもたらす作用)が確認されており、ヒトにおいても同様に起こると考えられている。そのため、妊婦への投与は禁忌である。
□アビガン錠200mg(一般名ファビピラビル)
・富山化学工業がT-705の名称で開発、申請。
・備蓄の準備。
・条件:既存の薬が効かない新型インフルが発生した場合にだけ出荷。有効性の検証が十分でないためで、季節性インフル患者へのさらなる臨床試験が必要。
薬審会の資料を見るとアビガン錠は、耐性ウィルスに対してのみ使用可。更に、承諾書への患者の署名が必要。臨床試験が未実施で、動物実験でも催奇形作用の副作用が報告。
1)新型インフル新薬備蓄;読売新聞,第49546号,2014.1.9.
2)富山化学工業株式会社;http://www.toyama-chemical.co.jp/rd/area/infection.html,2014.1.9.
3)伊藤勝彦:我が国の医薬品産業の現状と将来;都薬雑誌、34(5):35-39(2012)
[011.1.FAV:2014.1.14.古泉秀夫]