Archive for 2月 11th, 2014

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『漢方便秘薬の副作用』

火曜日, 2月 11th, 2014

KW:副作用・漢方・漢方薬・便秘薬・尿閉・排尿困難・酸化マグネシウム

Q:永年に亘り『酸化マグネシウム』を便秘薬として使用していたが、重篤な副作用の報告がされた。そこで薬局で相談したら『タケダ漢方便秘薬』を紹介され、服用したところ尿閉が発現した。高齢者の場合、そのような副作用の原因となるのか

A:『タケダ漢方便秘薬』は、生薬の「大黄」と「甘草」を配合した、漢方処方「大黄甘草湯」の製剤であると報告されている。組成は次の通り。
大黄甘草湯エキス散 200mg(大黄:267mg、甘草:67mgより抽出)。添加物として無水ケイ酸、セルロース、カルメロースCa、ステアリン酸Mg。
尚、本剤の副作用として

関係部位 症状
皮ふ 発疹
消化器 はげしい腹痛を伴う下痢、腹痛、悪心・嘔吐

が報告されている。その他、『次の症状があらわれることがあるので、このような症状の継続または増強が見られた場合には、服用を中止し、医師または薬剤師に相談すること:下痢』とする記載も見られる。

その他の資料を検索したが、大黄甘草湯に由来する副作用として尿閉の報告は見られなかった。他に服用中の薬があれば、その薬についても検討することが必要がある。

1)武田漢方便秘薬添付文書,D1
2)曽野維喜:続東西医学 臨床漢方処方学-優秀処方の組み立て方・東西薬物の併用;南山堂,1996
3)伊田喜光・他監:モノグラフ生薬の薬効・薬理;医歯薬出版株式会社,2003

                    [065.RHE:2013.10.30.古泉秀夫]

『2,4-ジニトロフェノール(DNP)について』

火曜日, 2月 11th, 2014

KW:薬名検索・毒性・2,4-ジニトロフェノール・DNP・dinitrophenol・やせ薬・肥満クリニック

Q:2,4-ジニトロフェノールについて

A:本品について、厚生労働省から次の注意文書が発出されている。

         事務連絡    
                                                            平成25年10月31日

都道府県
各保健所設置市衛生主管部(局)食品衛生担当課 御中
特別区

                                      厚生労働省医薬食品局局食品安全部基準審査課

健康食品の原材料として使用された成分(2,4-ジニトロフェノール(DNP))の取り扱いについて

今般、英国FSA (英国食品基準庁)が2,4-ジニトロフェノール(DNP)を含む製品の使用後に若者が死亡した最近の事例を受けて、当該成分を含むいずれの製品も使用しないよう強く警告した旨の情報を入手しました。
当該情報によるとDNP は工業用化学物質であり、ヒトが摂取するのは適さないものの、DNP 含有製品(カプセル、タブレット、粉末)が減量目的でボディビルダー等へ販売されており、当該品を摂取した場合、ヒトの健康へ深刻な危害(死亡含む)が生じる可能性がある旨の報告(以下URL 参照)がされています。
日本におけるDNP 含有食品の業としての輸入実績はありませんが、管轄の関係事業者及び消費者からの相談等に対し、健康被害を未然に防止する目的から情報提供していただくようお願いします。
なお、英国FSA の情報については、以下URL で確認できます。

http://www.food.gov.uk/news-updates/news/2013/oct/dnp

 

                                                                      【照会先】
                                                                               
                                                  基準審査課新開発食品保健対策室

      英国FSAが有毒なDNP (2,4-ジニトロフェノール) を含む製品に注意喚起

■勧告内容

2012年11月1日、英国FSA (Food Standards Agency) が有毒なDNP (2,4-ジニトロフェノール) を含む製品「fat-burner」に注意喚起。当該製品摂取との因果関係が疑われる死亡事例が2例報告されている。英国FSAは当該製品を使用しないように、また、使用して体調に不安を感じている場合は医療機関を受診するように勧告。

■解説

当該製品は過剰な脂肪を除去する製品と謳って主にボディビルダー向けに販売されていた。錠剤またはパウダー状の当該製品を摂取したと思われる2名の死亡事例が報告されており、有害なDNP (2,4-ジニトロフェノール) を含むことが判明。

■関連成分

2,4-ジニトロフェノール (2,4-dinitrophenol) (略号:DNP) 。CAS 番号:51-28-5。C6H4N2O5=184.11。エタノールに可溶、アルカリ性で水に可溶。溶液は光に対し不安定。古くから知られている脱共役剤の一種 。5×10-5Mでミトコンドリアをほぼ完全に脱共役させる。解離型、非解離型とも脂溶性で生体膜をよく通過する。葉緑体に対して弱い活性しか持たないが、バリノマイシン共存下で活性が上昇する。

DNPはウォルマン塩系防腐剤と云われる木材防腐剤の成分の一つである。本物質の主な用途は、黒色硫化染料中間体、防腐剤、pH指示薬、試薬である。写真の現像液としても使用される。

DNPを摂取すると食べたものが栄養として蓄えられず、熱として発散してしまうため、体重減少が起きる。嘗て主に米国で“やせ薬”として使われたことがある。1933年、1年間にスタンフォードだけで100mg入りカプセル120万個が処方され、全米で10万人以上がこの治療を受けたと推定されている。しかし、白内障や失明、肝障害、心室細動、顆粒球減少等、重篤な副作用が明らかになり、薬としては使用されなくなった。第二次世界大戦中レニングラードの戦いで、体温上昇を目的に旧ソ連軍が使用したと云われている。
イーストマン・コダック社からDNPを入手した米国の医師が肥満クリニックを開き、1986年に告発されるまでの短期間で、最低11,000人にDNPを処方し、死亡者も出ているとされる。

高濃度のDNPは、口腔や咽頭に化学熱傷を造る。経口摂取により吐き気、嘔吐、動悸、虚脱、発汗、皮膚の紅潮、めまい、頭痛、多呼吸、不整脈が生じ、昏睡や死に至る可能性もある 。少量の長期的な摂取により白内障、皮膚損傷、末梢神経系、心臓への影響などが生じる可能性がある 。

DNP誤飲による治療の基本は酸素吸入と体冷却であり、アルコールガーゼ等で冷却するより水風呂に入れる方がより有効だとされている。
解熱目的でのアスピリン使用は絶対禁忌である。発汗が著しい場合のアトロピンの使用も絶対禁忌であるとされている。水や電解質バランス、輸液には電解質だけではなく、ブドウ糖を補給する。

(1) 生化学辞典 (第3版) ;東京化学同人,1998
(2)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001
(3)国際化学物質安全性カード (2,4-ジニトロフェノール),2003.05

                                                  [011.1.DNP:2013.12.8.古泉秀夫]

「T-705について」

火曜日, 2月 11th, 2014

 

 

KW:治験薬・T-705・ファビピラビル・favipiravir・A型インフルエンザウイルス・B型インフルエンザウイルス・インフルエンザ治療薬・RNAポリメラーゼ阻害剤

Q:治験記号T-705の薬剤について

A:T-705とは、富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬。2007年から人を対象とした臨床試験が始まり、2011年厚生労働省に対して製造販売承認を申請した。2009年にタミフルが効き難い高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)にも効果があることを東大の研究チームが確認、米科学アカデミー紀要に発表した。

米国においても承認に向けた臨床治験中で、国防総省は1億3850万ドル(約145億円)の助成をしているという。

既販抗インフルエンザ剤とT-705の作用様式

image

T-705は富山化学研究所における抗ウイルス剤研究の中から見出されたものであり、富山大学医学部の白木公康教授との共同研究により、感染実験での有効性が確認され、最終的な開発化合物として選定された。
T-705は、各種インフルエンザウイルスに対して試験管レベル並びに感染動物モデルで強い活性を示す。更に、パンデミックが懸念されている鳥インフルエンザに関しても強い活性を示すことがユタ大学から報告されている。
T-705の最大の特徴は、これまでの抗インフルエンザウイルス剤と異なる新規な作用機序である。細胞内でT-705が活性体である三リン酸体に変換され、インフルエンザウイルスの複製酵素であるRNAポリメラーゼを選択的に阻害してウイルスの増殖を直接阻止する。また、新規な作用機序であることから、既販薬剤に対する耐性株に対しても効果を示すと考えられている。

一般名:ファビピラビル(favipiravir)
.化学名:フルオロ-3-ヒドロキシ-2-ビラジンカルポキサミト
申請適応症:「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」。
作用機序:ウイルスの細胞内での複製を阻害することで増殖を防ぐ新しいメカニズムを有するRNAポリメラーゼ阻害剤である。動物試験では、季節性ウイルスのみならず、neuraminidase阻害剤耐性ウイルス、鳥由来の高病原性ウイルスにも効果を示すことが確認されている。また、neuraminidase阻害剤に比べ投与開始時期が遅れても効果を示すことが確認されている。
剤形:経口剤。

2014年2月3日開催された『薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会』において、富山化学が申請した新型・再興型インフルエンザウイルス感染症治療薬「アビガン錠」など3件を審議し、了承した。現時点でアビガンは、新型インフルエンザ等のパンデミックに備える医薬品と位置づけ、季節性インフルエンザへの使用は想定されていない。厚生労働省は承認後も製造販売業者の富山化学に出荷を差し控えるよう要請する。動物などを用いた非臨床試験で、催奇形性(胎児に奇形をもたらす作用)が確認されており、ヒトにおいても同様に起こると考えられている。そのため、妊婦への投与は禁忌である。

□アビガン錠200mg(一般名ファビピラビル)
・富山化学工業がT-705の名称で開発、申請。
・備蓄の準備。
・条件:既存の薬が効かない新型インフルが発生した場合にだけ出荷。有効性の検証が十分でないためで、季節性インフル患者へのさらなる臨床試験が必要。
薬審会の資料を見るとアビガン錠は、耐性ウィルスに対してのみ使用可。更に、承諾書への患者の署名が必要。臨床試験が未実施で、動物実験でも催奇形作用の副作用が報告。

1)新型インフル新薬備蓄;読売新聞,第49546号,2014.1.9.
2)富山化学工業株式会社;http://www.toyama-chemical.co.jp/rd/area/infection.html,2014.1.9.
3)伊藤勝彦:我が国の医薬品産業の現状と将来;都薬雑誌、34(5):35-39(2012)

                             [011.1.FAV:2014.1.14.古泉秀夫]