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『ワーファリンとアスピリンの併用について』

金曜日, 1月 3rd, 2014

 

KW:相互作用・ワーファリン・アスピリン・warfarin potassium・aspirin・ワーファリン錠・バイアスピリン錠・併用注意

Q:ワーファリンとアスピリンの併用は可能でしょうか

A:両剤の添付文書の記載は次の通りである。

ワーファリン錠(エーザイ)はwarfarin potassiumを含有する製剤で、その作用機序として『本薬は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第VII、第IX、及び第X因子)の生合成を抑制して抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮する。また、本薬によって血中に遊離するPIVKA(Protein induced by Vitamin K absence or antagonist:プロトロンビン前駆体)が増加することにより抗凝血作用及び血栓形成抑制作用を持つ。』と報告されている。

また、吸収・排泄については、経口投与後、上部消化管より極めて良く吸収され、血漿中ではアルブミンと97%が結合して存在する。尿中への未変化体の排泄率は、ごく微量であり、代謝は、アセトニル基の還元によるワルファリンアルコールへの変換と6-あるいは7-ヒドロキシワルファリンが主である。本薬の代謝に関与する主な肝薬物代謝酵素CYPの分子種はCYP2C9(光学異性体のS体)であり、CYP1A2、CYP3A4(光学異性体のR体)も関与することが報告されている(外国人のデータ)とする報告が見られる。

なお、本剤との併用について『併用注意』として、『抗血栓剤-血小板凝集抑制作用を有する薬剤:アスピリン』として『本剤の作用を増強することがあるので、併用する場合には血液凝固能の変動に十分注意しながら投与すること。』とし『相手薬剤の血小板凝集抑制作用による。本剤が相手薬剤の副作用である消化管出血を助長することがある。相手薬剤が本剤の血漿蛋白からの遊離を促進する。』とする理由が記載されている。

一方、抗血小板剤aspirinの製剤であるバイアスピリン錠100(バイエル薬品)の添付文書によると、低用量aspirinはシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)を阻害(セリン残基のアセチル化)することにより、トロンボキサンA2(TXA2)の合成を阻害し、血小板凝集抑制作用を示す。血小板におけるCOX-1阻害作用は、血小板が本酵素を再合成できないため、不可逆的である。一方、血管組織ではCOX-1の再合成が行われるため、プロスタサイクリン(PGI2)合成阻害作用は可逆的で比較的速やかに回復する。なお、代謝物であるサリチル酸はCOX-1を阻害せず、血小板凝集抑制作用を有しない。

また、本剤の排泄については、本剤100mgを空腹時単回経口投与したとき、投与後24時間までに投与量の大部分がサリシレートとして尿中に排出され、投与24時間の尿中累積排泄率は約90%であった。サリチル酸の腎クリアランスは尿pH依存性を示し,低pHでは5%未満であるが,pH>6.5では80%以上となることから、尿のアルカリ化は過量投与の処置上重要であるとする報告がされている。

aspirinとの相互作用としてクマリン系抗凝血剤(warfarin potassium)は、クマリン系抗凝血剤の作用を増強し、出血時間の延長、消化管出血等を起こすことがあるので、クマリン系抗凝血剤を減量するなど慎重に投与すること。また、本剤は血漿蛋白に結合したクマリン系抗凝血剤と置換し、遊離させる。また、本剤は血小板凝集抑制作用、消化管刺激による出血作用を有する。

warfarinと低用量aspirinの併用については、併用禁忌の扱いとはなっていない。但し、warfarinは血漿中では97%がalbuminと結合しており、aspirinの投与によりwarfarinと置換してwarfarinの血漿中濃度を高める可能性がある。更に患者の腎機能が低下している場合、
aspirinの血中濃度が高位に維持されることが考えられるので、血液凝固能の変動に十分注意しながら投与することが必要である。

1)ワーファリン錠添付文書,2013.5.改訂
2)バイアスピリン錠添付文書,2008.8.改訂
3)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2013

                                                

[015.2.WAR:2013.12.14.古泉秀夫]