「マラロン配合錠について」
日曜日, 9月 1st, 2013
KW:薬名検索・抗マラリア剤・マラロン配合錠・アトバコン・atovaquone・プログアニル塩酸塩・proguanil
Q: マラロン配合錠について
A:マラロン配合錠(グラクソ・スミスクライン)は抗マラリア剤として承認された薬剤である。
本剤1錠中にアトバコン(atovaquone)250mg・プログアニル塩酸塩(proguanil hydrochloride)100mgを含有する。
atovaquoneの作用機序については、マラリア原虫ミトコンドリアの電子伝達系複合体III(チトクロームbc1、complex III)の選択的阻害であり、熱帯熱マラリア原虫から分離したミトコンドリアのチトクロームcレダクターゼ活性を約1nMのEC50で阻害した。この阻害作用を介してミトコンドリア電子伝達系とリンクしたジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼを阻害し、ピリミジンのde novo合成を阻害することにより抗マラリア原虫活性を示す。
proguanilの作用機序については、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)阻害であり、活性代謝物であるcycloguanilは0.78nMのKiで阻害作用を示した。proguanilはDHFR阻害作用によりdTMP合成などに必要な補酵素であるテトラヒドロ葉酸の産生を低下させ、DNA合成を阻害することで抗マラリア原虫活性を示す。このように、本剤は2種類の異なる作用機序に基づき抗マラリア原虫活性を示す。
[適応症] マラリア
[用法・用量] 通常、治療目的での投与は、成人には1日1回4錠(アトバコン/プログアニル塩酸塩として1000mg/400mg)を3日間、食後に経口投与する。通常、小児には体重に応じてアトバコン/プログアニル塩酸塩として250mg/100mg(1錠)~1000mg/400mg(4錠)を1日1回3日間、食後に経口投与する。体重別の投与量は、下記のとおりである。
11-20kg 250mg/100mg(1錠)
21-30kg 500mg/200mg(2錠)
31-40kg 750mg/300mg(3錠)
>40kg 1000mg/400mg(4錠)
予防投与:通常、成人及び体重40kgを超える小児には1日1回1錠(アトバコン/プログアニル塩酸塩として250mg/100mg)を、マラリア流行地域到着24-48時間前より開始し、流行地域滞在中及び流行地域を離れた後7日間、毎日食後に経口投与する。
<用法及び用量に関連する使用上の注意>
1.本剤の配合成分であるアトバコンは絶食下では吸収量が低下するため、食後又は乳飲料とともに1日1回毎日定められた時刻に服用させること。
2.下痢又は嘔吐を来している患者ではアトバコンの吸収が低下する可能性がある。本剤の投与後1時間以内に嘔吐した場合には、再投与させること(「重要な基本的注意」の項参照)。
[重要な基本的注意]
1.本剤の使用に際しては、マラリアに関して十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行うこと。
2.本剤を予防に用いる場合には、渡航先のマラリア汚染状況も踏まえて、本剤の必要性を慎重に検討すること]。
3.意識障害や臓器不全を伴う重症マラリア患者においては、本剤の効果が十分に得られない可能性があるため、他の治療を考慮すること。
4.本剤の投与後にマラリアが再燃した場合、又は予防的化学療法が失敗した場合には、マラリアの赤血球期に有効な別の薬剤の投与を考慮すること。
5.三日熱マラリアに対しアトバコン及びプログアニルを単独投与したとき、再発がしばしば報告されている。三日熱マラリア又は卵形マラリアに曝露された旅行者及びこれらの原虫によるマラリア発症者には、マラリア原虫の休眠体に対する活性を示す薬剤による治療を考慮すること。
6.腎障害のある患者において、本剤の配合成分であるプログアニルの排泄が遅延し、血中濃度が上昇する可能性がある。重度の腎障害のある患者に予防の目的で投与しないこと。なお、重度の腎障害のある患者に治療の目的で使用する場合、副作用が発現する危険性が高いため、投与にあたっては、十分に観察すること。
7.下痢又は嘔吐が認められている急性マラリアの患者では、代替治療を検討すべきであるが、本剤を用いる場合には、血液中のマラリア原虫数を慎重にモニターすること。
[重大な副作用]
1.皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(頻度不明注(1)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2.重度の肝機能障害、肝炎、胆汁うっ滞(頻度不明注(1)があらわれることがあるので、必要に応じ肝機能検査を行うこと。
3. アナフィラキシー(頻度不明注(1)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4. 汎血球減少症(頻度不明注(1、注(2)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
注1)自発報告又は海外のみで認められている副作用については頻度不明とした。
注2)重度の腎障害患者で報告されている。
[その他の副作用]
1. 血液(頻度不明注1): 貧血、好中球数減少
2. 過敏症(頻度不明注1): 血管浮腫、血管炎
3. 精神神経系(頻度不明注1)):幻覚、頭痛、不眠症、浮動性めまい
4. 消化器(頻度不明注1)):腹痛、悪心・嘔吐、下痢、口内炎、胃障害、口腔内潰瘍形成
5. 皮膚(頻度不明注1)): 発疹、脱毛、蕁麻疹
6. その他 (頻度不明注1)): 低ナトリウム血症、食欲不振、アミラーゼ上昇、肝酵素上昇、発熱、咳嗽
注1)自発報告又は海外のみで認められている副作用については頻度不明とした。
1)マラロン配合錠添付文書,2013.2.
[011.1.ATO:2013.8.2.古泉秀夫]