Archive for 9月 1st, 2013

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「亜鉛含有量の多い食品について」

日曜日, 9月 1st, 2013

Q:亜鉛含有量の多い食品を知りたい。

A:次の通り報告されている。

食品名 含有量(μg) 食品名 含有量(μg)
牡 蠣 40000(40mg) 小麦胚芽 15000(15mg)
スモークレバー 9000(9mg) パルメザンチーズ 7300(7.3mg)
煮 干 し 7200(7.2mg) 胡 麻 7100 (7.1mg)
豚 肝 臓 6900(6.9mg) 畳 鰯 6600(6.6mg)
凍り豆腐 5500 (5.5mg) す る め 5400(5.4mg)

                                                                              

以上、可食部100g中の含有量である。

1)科学技術庁資源調査会資料;日本経済新聞,1991.11.30.
2)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1333,1996.7.11.より転載

            [322.FD34.015.11ZN:1995.8.3.古泉秀夫.第三改訂2013.3.]

「やけど虫について」

日曜日, 9月 1st, 2013

 

KW:毒性中毒・やけど虫・アオバアリガタハネカクシ・ハネカクシ・青葉蟻型羽根隠・Rove beetle・ランプ虫・電気虫・火傷虫・ペデリン

Q:「やけど虫」について

A:「やけど虫」とは、アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes Curtis)の俗称である。ハネカクシとは、甲虫目ハネカクシ下目(Staphyliniformia)、ハネカクシ上科(Staphylinoidea)、ハネカクシ科(Staphylinidae)の昆虫で英名:Rove beetle。前翅が小さく、前翅に大きな後翅を細かく折りたたんで隠しているように見えるものが多いことからこの名が付けられたとされる。インドネシアではBinatang Tomcat(ビナタン・トムキャット:ビナタンは動物・生物の意味)と呼ばれている。また灯火に誘引されるので、ランプ虫、電気虫等の別称で呼ぶ地方もある。その他、火傷虫等といわれている。

生殖場所:アオバアリガタハネカクシ(青葉蟻型羽根隠)は、日本全土に分布(北海道、本州、四国、九州、沖縄諸島)しており、水田、畑、池沼の周辺や川岸に棲み成虫は夏期灯火に飛来する。昼間は上記の草むらや石の下などに見られる。成虫は5月から10月頃まで灯火に飛来するが、6、7月の夜間に多い。雌成虫が越冬する。

鑑別法:成虫は約6.5-7mmで、蟻のような形をしている。頭部は黒く、前胸と中胸は橙黄色、後胸は黒い。翅鞘は青緑色で、脚は黄褐色。腹背は橙赤色で、尾端の2節が黒い(写真参照)。

生態:成虫・幼虫ともに雑食性であるが、肉食性の傾向が強く、他の昆虫類やダニ、植物のやや腐敗したものなどを摂食する。成虫はよく飛翔し、灯火、特に蛍光灯や水銀灯に、よく飛来する。image

予防:夜間灯火に飛来するので、網戸、蚊帳などで防ぐ。屋外に誘蛾灯を付けるのも良いとされている。虫体液が付着すると皮膚炎を惹起するので虫が躯に止まったら虫を潰さないようにそっと払い除けるようにする。

毒性:卵、幼虫、蛹、成虫ともに体液に有毒なペデリンを有しており、これに触れると人の皮膚は数時間後に赤く腫れ、まもなく水疱が生じる。

症状:有毒物質のペデリンは体液中に含まれており、虫体液が皮膚に付着すると、約2時間程度で痒みが起こり、次いで発赤、小水疱が生じ(線状皮膚炎)、更に膿痂疹となり痛みと熱感を伴う。眼に入ると激しく痛み、結膜炎、角膜潰瘍、虹彩毛様体炎などを起こす。

応急手当:体液が皮膚に付着した場合、石鹸を用いて流水で洗滌し、湿疹やかぶれ用の塗り薬あるいはステロイド軟膏を塗布、冷湿布する。やけど虫には虫除けスプレーの効果は殆ど期待できない。放置すると治癒するのに2週間以上掛かる。細菌感染を防ぐため、抗生物質を含んだステロイド軟膏塗布。眼に入った場合には早めに水で洗い流し、直ちに眼科医を受診する。

駆除:体に付着した場合や屋内に侵入してきた場合には、むやみに素手で触らないように取り除くか、市販のエアゾール剤で殺虫する。また、光への誘引を防ぐために、夜間は窓を閉める、網戸にするなど開放しないよう注意する。

ペデリン[pederin]はアオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)の有毒成分。C25H45NO9、融点114℃。二つのテトラヒドロピラン環を持つ水疱を発生させる毒性アミドの一つである。アオバアリガタハネカクシを含むハネカクシ科Paederus属の甲虫の血液リンパに含まれている。pederinは、2,500万匹の採取されたアオバアリガタハネカクシを処理することで初めて同定された。化合物名はこの昆虫の属名に由来する。pederinの含有量はアオバアリガタハネカクシの体重のおよそ0.025%である。pederinの生産は、Paederus属昆虫内での内部共生生物(シュードモナス属)の活動によるものであることが明らかにされている。pederinの製造は概して雌の成虫のみに限られる。幼虫および雄は母親から卵を通して獲得するか、摂取したpederinのみを貯蔵する。

1)(財)日本自然保護協会・編・監修:フィールドガイドシリーズ② 野外における危険な生物;平凡社,1994
2)志田正二・編集代表:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1985
3)北園大園:毒のいきもの;彩図社,2007
4)大木幸介:動物雑学事典-ヘビ毒から発ガン物質まで;講談社,1999
5)株式会社環境コントロールセンター,2013.7.30.
6)篠永 哲・他監:フィールドベスト図鑑v.17-危険・有毒生物;学研教育出版,2013

         [63.099.PAE:2013.8.1.古泉秀夫]

「マラロン配合錠について」

日曜日, 9月 1st, 2013

 

KW:薬名検索・抗マラリア剤・マラロン配合錠・アトバコン・atovaquone・プログアニル塩酸塩・proguanil

Q: マラロン配合錠について

A:マラロン配合錠(グラクソ・スミスクライン)は抗マラリア剤として承認された薬剤である。
本剤1錠中にアトバコン(atovaquone)250mg・プログアニル塩酸塩(proguanil hydrochloride)100mgを含有する。

atovaquoneの作用機序については、マラリア原虫ミトコンドリアの電子伝達系複合体III(チトクロームbc1、complex III)の選択的阻害であり、熱帯熱マラリア原虫から分離したミトコンドリアのチトクロームcレダクターゼ活性を約1nMのEC50で阻害した。この阻害作用を介してミトコンドリア電子伝達系とリンクしたジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼを阻害し、ピリミジンのde novo合成を阻害することにより抗マラリア原虫活性を示す。
proguanilの作用機序については、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)阻害であり、活性代謝物であるcycloguanilは0.78nMのKiで阻害作用を示した。proguanilはDHFR阻害作用によりdTMP合成などに必要な補酵素であるテトラヒドロ葉酸の産生を低下させ、DNA合成を阻害することで抗マラリア原虫活性を示す。このように、本剤は2種類の異なる作用機序に基づき抗マラリア原虫活性を示す。

[適応症] マラリア

[用法・用量] 通常、治療目的での投与は、成人には1日1回4錠(アトバコン/プログアニル塩酸塩として1000mg/400mg)を3日間、食後に経口投与する。通常、小児には体重に応じてアトバコン/プログアニル塩酸塩として250mg/100mg(1錠)~1000mg/400mg(4錠)を1日1回3日間、食後に経口投与する。体重別の投与量は、下記のとおりである。
11-20kg 250mg/100mg(1錠)
21-30kg 500mg/200mg(2錠)
31-40kg 750mg/300mg(3錠)
>40kg 1000mg/400mg(4錠)

予防投与:通常、成人及び体重40kgを超える小児には1日1回1錠(アトバコン/プログアニル塩酸塩として250mg/100mg)を、マラリア流行地域到着24-48時間前より開始し、流行地域滞在中及び流行地域を離れた後7日間、毎日食後に経口投与する。

<用法及び用量に関連する使用上の注意>

1.本剤の配合成分であるアトバコンは絶食下では吸収量が低下するため、食後又は乳飲料とともに1日1回毎日定められた時刻に服用させること。
2.下痢又は嘔吐を来している患者ではアトバコンの吸収が低下する可能性がある。本剤の投与後1時間以内に嘔吐した場合には、再投与させること(「重要な基本的注意」の項参照)。

[重要な基本的注意]

1.本剤の使用に際しては、マラリアに関して十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行うこと。
2.本剤を予防に用いる場合には、渡航先のマラリア汚染状況も踏まえて、本剤の必要性を慎重に検討すること]。
3.意識障害や臓器不全を伴う重症マラリア患者においては、本剤の効果が十分に得られない可能性があるため、他の治療を考慮すること。
4.本剤の投与後にマラリアが再燃した場合、又は予防的化学療法が失敗した場合には、マラリアの赤血球期に有効な別の薬剤の投与を考慮すること。
5.三日熱マラリアに対しアトバコン及びプログアニルを単独投与したとき、再発がしばしば報告されている。三日熱マラリア又は卵形マラリアに曝露された旅行者及びこれらの原虫によるマラリア発症者には、マラリア原虫の休眠体に対する活性を示す薬剤による治療を考慮すること。
6.腎障害のある患者において、本剤の配合成分であるプログアニルの排泄が遅延し、血中濃度が上昇する可能性がある。重度の腎障害のある患者に予防の目的で投与しないこと。なお、重度の腎障害のある患者に治療の目的で使用する場合、副作用が発現する危険性が高いため、投与にあたっては、十分に観察すること。
7.下痢又は嘔吐が認められている急性マラリアの患者では、代替治療を検討すべきであるが、本剤を用いる場合には、血液中のマラリア原虫数を慎重にモニターすること。

[重大な副作用]

1.皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(頻度不明注(1)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2.重度の肝機能障害、肝炎、胆汁うっ滞(頻度不明注(1)があらわれることがあるので、必要に応じ肝機能検査を行うこと。
3. アナフィラキシー(頻度不明注(1)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4. 汎血球減少症(頻度不明注(1、注(2)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

注1)自発報告又は海外のみで認められている副作用については頻度不明とした。
注2)重度の腎障害患者で報告されている。

[その他の副作用]

1. 血液(頻度不明注1): 貧血、好中球数減少
2. 過敏症(頻度不明注1): 血管浮腫、血管炎
3. 精神神経系(頻度不明注1)):幻覚、頭痛、不眠症、浮動性めまい
4. 消化器(頻度不明注1)):腹痛、悪心・嘔吐、下痢、口内炎、胃障害、口腔内潰瘍形成
5. 皮膚(頻度不明注1)): 発疹、脱毛、蕁麻疹
6. その他 (頻度不明注1)): 低ナトリウム血症、食欲不振、アミラーゼ上昇、肝酵素上昇、発熱、咳嗽
注1)自発報告又は海外のみで認められている副作用については頻度不明とした。

1)マラロン配合錠添付文書,2013.2.

         [011.1.ATO:2013.8.2.古泉秀夫]