『アナカルジン酸について』
火曜日, 5月 21st, 2013KW:薬名検索・TDP-43・ALS患者・アナカルジン酸・アナカルディック酸・アナカルド酸・anacardic acid・カシューナッツ・勾玉・マガタマの木
Q:アナカルジン酸について
A:脳からの指令を筋肉に伝える運動神経の細胞内で、遺伝子の働きの強弱を調節する蛋白質「TDP-43」が変性し、蓄積することがALS患者の約9割で確認されているとする報告が見られる。このALS患者の細胞にTDP-43の正常な働きを補うことで知られる4種類の化合物を加えたところ、そのうちカシューナッツの殻から抽出した「アナカルジン酸」によって、変性したTDP-43が減少、TDP-43の影響で健康人より短くなった運動神経の突起の長さも2倍になり、健康な人の細胞と同じになったとする報告が見られる。
名称:アナカルド酸
英名:anacardic acid
別名:アナカルディック酸、アナカルジン酸
分子式:C22H32O3
概要:脂溶性のサリチル酸誘導体。ウルシや、ウルシ科の植物であるカシューナッツなどに多く含まれる。アナカルド酸には強い抗菌作用をはじめ複数の有益な作用のあることが知られている。カシューナッツを収穫した際の副産物となるカシューナッツ殻などから、アナカルド酸を含む「殻液」の抽出などが行われている。
『カシュー(カシューナッツ)』。 [英]Cashew、East indian almond。 [学名]Anacardium occidentale。和名:匂玉。勾玉の木。
概要:熱帯アメリカ原産の常緑樹。インドや東アフリカなどの熱帯地域で広く栽培されている。花の柄の部分が大きく肥大し、長さ5-6cmの洋ナシ形となって黄色に熟す。この部分は「カシューアップル」と呼ばれ、生食又はジャムやジュースにする。肥大した柄の先端に本来の果実がつき、長さ2-3cmのまが玉状になる。中の堅果をカシューナッツと呼ぶ。カシューナッツを通常の食品として摂取する場合はおそらく安全と思われる。妊娠中・授乳中に多量に摂取した場合の安全性は、信頼できるデータが見当たらないため避ける。また、カシューナッツの摂取によるアレルギーが多数報告されている。
§.法規・制度:日本では「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」にも「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」にも該当しない。・堅果は米国では「一般的に安全と認識される物質 (GRAS) 」に分類されている。
§.成分の性質:堅果は約45%の脂質、約20%の蛋白質を含む。・果皮にはアルキルフェノール、アナカルジン酸が含まれる。
§.有効性:・メタボリックシンドロームと診断された62名 (試験群21名、平均45.7歳、南アフリカ) を対象とした無作為化比較試験において、試験食とともに63-108g/日の無塩カシューナッツを8週間摂取させたところ、血圧反射機能 (Baroreflex sensitivity) の改善が見られたが、血液凝固因子 (フィブリノーゲン、PAI-1等) には変化が見られなかったとする報告がある。
§.肥 満:・メタボリックシンドロームと診断された64名 (平均45±10歳、試験群21名、南アフリカ) を対象とした無作為化比較試験において、試験食とともに63-108g/日の無塩カシューナッツを8週間摂取させたところ、体重、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、炎症性マーカー (C反応性蛋白) 、フルクトサミン、尿酸値、血圧に変化は見られなかったとの報告がある 。
§.禁忌対象者:調査文献中に見当たらない。
§.危険情報:
1)通常の食品として摂取する場合はおそらく安全と思われる。
2)妊娠中・授乳中に多量に摂取した場合の安全性は、信頼できるデータが見当たらないため避ける。カシューナッツの摂取によるアレルギーが多数報告されており、アメリカやカナダ、オーストラリア等では、カシューナッツを含むナッツ類はアレルギー表示対象品目と定められている。
3)ナッツアレルギー患者を対象とした調査によると、ピーナッツアレルギーよりカシューナッツアレルギーで重篤なアナフィラキシーを発症する場合が多いとの報告がある。
4)カシューナッツアレルギーでは、ウルシ科食物 (マンゴー、ピスタチオ)及びペクチン、アーモンド、ブラジルナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミなどによる交差反応性が報告されている。
5)果皮に含まれるアルキルフェノールによる接触皮膚炎が報告されている。
1)iPS使いALS新薬京大グループ有効な物質特定;読売新聞,第49023号,2012.8.2.
2)独立行政法人国立健康・栄養研究所[「健康食品」の安全性・有効性情報],2013.4.4.
3)田中平三・他監訳:健康食品のすべて-ナチュラルメディシン・データベース-;同文書院,2006
[011.1.ANA:2013.4.4.古泉秀夫]