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「晋耆について」

水曜日, 4月 17th, 2013

 

KW:健康食品・機能性食品・生薬・漢方・晋耆・シンギ・紅耆・コウギ・多序岩黄耆・タジョガンオウギ・黄耆・オウギ・キバナオウギ・内蒙黄耆・ナイモウオウギ・疥癬

Q:晋耆(シンギ)が疥癬に有効ということで試用したいの希望があるが、この入手方法について。なお、晋耆は紅耆ともいわれるとのことである。

A:晋耆(シンギ)では、詳細な資料の入手は出来なかったが、紅耆(コウギ)については、次の報告がされている。

紅耆:マメ科の植物、多序岩黄耆(タジョガンオウギ)、Hedysarum polybotrys Hand.Mazz.の根で、産出量も比較的多い。微弱だが特有の臭いがあり、味は僅かに甘い。ただし、黄耆が本来の生薬である。

黄耆・黄芪(オウギ)。

基原:マメ科の植物。和名:キバナオウギ又は内蒙黄耆(ナイモウオウギ)等の乾燥した根。

異名:戴糝(タイサン)、戴椹(タイジン)、独椹(ドクジン)、蜀脂(ショクシ)、百本、王孫、百薬綿、綿黄耆、土山爆張根(ドサンバクチョウコン)、独根等。

原植物

1)黄花黄耆:キバナオウギ。Astragalus membranaceus(Fisch.)Bge.、膜莢黄耆(マクキョウオウキ)。
2)内蒙黄耆:ナイモウオウギ。Astragalus mongholicus Bge.
3)金翼黄耆:キンヨクオウギ。Astragalus chrysopterus Bge.
4)塘谷耳黄耆:トウコクオウギ。Astragalus tongolensis Ulbr.
この他、多くのゲンゲ属植物が薬として用いられている。

成分:ショ糖、グルクロン酸、粘液質、数種のアミノ酸、苦味質、コリン、ベタイン、葉酸(乾燥根100g当たり65μg)、また2′,4′-dihydroxy-5,6-dimethoxyisoflavone、l-canavanine、phenol配糖体、saponin、isoflavone等が報告されている。
また韓国産黄耆の血圧下降成分としてγ-aminobutyric acid(0.024%)が主体であるとする報告もされている。
その他、cycloaraloside C、cycloaraloside F、β-D-glucopyranoside等のseroid glycosideが分離され、astragaloside I-VII、isoastragaloside I-II、4種のisoflavone glucoside等が含まれる。
また、クマタケニン(3-O-メチルラムノシトリン)も検出される。内蒙黄耆はflavonoids配糖体を含む。ゲニンはクェルセチン、イソラムネチン、ラムノシトリンである。一説には、根はsaponinを含み、その糖はアラビノース、ブドウ糖、ガラクトースであるという。また脂質の鹸化物からリノール酸、リノレン酸が検出され、非鹸化部分にはβ-sitosterolが含まれる。多序岩黄耆[紅耆]は抗菌成分の3-ヒドロキシ-9-メトキシプテロカルパンを含む等の報告がされている。

薬理

1.利尿作用:黄耆の煎剤を皮下注、静注により利尿作用発現。ラットに皮下注射した場合、体重1kg当たり黄耆0.5gの煎剤の利尿効果はアミノフィリン0.05g及びジヒドロクロロチアジド0.2mgに相当する。利尿作用の持続時間は比較的長く、連続7日間の投与でも耐性を生じない。健常人が黄耆の煎剤を服用しても利尿効果があり、ナトリウムの排出量が増加する。

2.実験性腎炎に対する作用:黄耆粉4-5gを3日前から前投薬した事例では、実験的腎症に由来する蛋白尿の排出を軽減する。この効果は黄耆の低投与量及び煎剤投与では発現しない。

3.強壮作用:マウスに連日黄耆を経口投与すると遊泳時間は明らかに延長し、四塩化炭素による肝障害に抵抗し、肝保護作用を示した。黄耆の煎剤はマウスの非特異性免疫、細網内皮系の貪食能、脾臓の殺菌機能を増強し、マウスの液性免疫及びウイルスに対するインターフェロン誘発能力を促進する。黄耆の多糖(ブドウ糖とアラビノースの集合体)をマウスの腹腔に注射すると、液性免疫を促進する作用がある。正常人が黄耆を服用すると血中のIgM、IgE及びcAMPいずれもが顕著に増加する。

4.心臓血管系に対する作用:黄耆の煎剤を麻酔した動物に静脈注射すると、明らかに降圧作用がある。黄耆を重複して注射すると急速に耐性現象があらわれる。降圧作用は血管の拡張と直接関係がある。

5.その他の作用:マウスの発情を延長し、ウサギの血糖を低下させるとする報告もあるが、血糖低下については否定的報告も見られる。

適応:漢方では止汗、利尿、強壮の効果を期待し、身体虚弱、栄養不良、皮下組織に水毒が停滞するものに配合する。

用量:1日量3-10g。

以上の各報告から『晋耆』は『紅耆』として生薬を販売している薬局において入手可能であると考える。ただし、『紅耆』の入手困難な場合、『黄耆』を使用する。なお、疥癬に対する直接的な効果-殺虫効果に関する報告は入手できなかった。

1)上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
2)和漢薬ハンドブック;富山県薬剤師会,1992
3)第十四改正日本薬局方解説書;広川書店,2001

   [015.9.HED:2002.5.21.古泉秀夫]