『調剤一部負担金のポイント化について』
火曜日, 4月 2nd, 2013魍魎亭主人
調剤薬局で調剤した結果、個人負担分の支払いに対して、ポイント付与が行われている問題で、厚生労働省はポイント付与を認めないとする文書を発出した。
大体、医師の処方箋に基づく調剤は、いわゆる商品としての医薬品の販売ではなく、治療の一環として調剤しているのである。医療の一環である以上、調剤に対するサービスとして金銭的なサービスはあってはならない。調剤に対するサービスは、飽く迄医療としてのサービスが主体であり、薬剤の情報提供に力点を置くべきである。
薬による有害作用の発生から患者の生命を守るのが薬剤師の役割であり、使命である。従って薬剤師のするべきサービスはそこに収斂すべきであり、ポイント付与などと云う物質的サービスを行うべきではない。第一ポイントを付けなければ処方箋が集まらないという発想が既におかしくはないか。親切な対応と充実した服薬指導。有効性の保証と同時に有害作用を回避するための手段を提供することが重要なのである。
医師からの処方箋を受領すると同時に、処方箋上の薬の組合せに問題がないかどうかを検討する。OTC薬や健康食品の使用を確認する。これらは全て相互作用に対する配慮である。更に再来患者であれば、前回の処方箋との間に内容的に変更はないのかどうか。変更があれば服用中の薬で効果がなかったのか、あるいは有害作用が発現したのかどうかの確認が求められる。
更に患者に対して、服用中の薬について、服み難い等の問題はないか?。薬を服み始めて何か体調の変化はないか?。医師の指示通り服めているのかどうか?等々について、確認する。これらの指示や会話は、患者との間に信頼関係がなければ、ただ煩がられるだけで会話は成立しない。
尤も調剤におけるサービスが、単に物理的なもので済むと薬剤師が思っている限り、患者との間に信頼関係は出来ない。
最近、病院勤務薬剤師と、調剤薬局の薬剤師の間に、“薬薬連携”が必要だとする意見を耳にするが、ポイントサービスにのみ眼を向けている薬剤師に、“薬薬連携”のパートナーとしての期待を持つことは出来ないのではないか。
クレジットカードのポイントと同じだから認めろという話も聞かれるが、クレジットカードのポイントは現金を使わずに買い物をするというあの仕組みに慣れて貰うために付けていたものではないのか。従って現金により商品を購入する行為に対してポイントを付けるということと意味が異なりはしないか。
いずれにしろ厚生労働省から次のような文書が出されること自体、調剤におけるサービスの内容を踏み間違えていると云わざるを得ない。
(2013.3.21.)
保医発0914第1号
平成24年9月14日
地方厚生(支)局医療課長 殿
厚生労働省保険局医療課長
( 公 印 省 略 )
保険医療機関及び保険医療養担当規則及び保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部改正に伴う実施上の留意事項について
標記については、保険医療機関及び保険医療養担当規則及び保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第26号)が公布され、平成24年10月1日より適用されるが、本改正の趣旨は下記のとおりであるので、その取扱いに遺漏のないよう貴管下の保険医療機関及び保険薬局に対し、周知徹底をお願いいたします。
記
本改正は、保険薬局における調剤一部負担金に対するポイント付与が行われている事例が認められたことに鑑み、次の考え方を踏まえ、一部負担金等の受領に応じて専らポイントの付与及びその還元を目的とするポイントカードについては、ポイントの付与を認めないことを原則とするものです。
・保険調剤等においては、調剤料や薬価が中医協における議論を経て公定されており、これについて、ポイントのような付加価値を付与することは、医療保険制度上、ふさわしくない。
・患者が保険薬局等を選択するに当たっては、保険薬局等が懇切丁寧に保険調剤等を担当し、保険薬剤師等が調剤、薬学的管理及び服薬指導の質を高めることが本旨であり、適切な健康保険事業の運営の観点から、ポイントの提供等によるべきではない。
ただし、現金と同様の支払い機能を持つクレジットカードや、一定の汎用性のある電子マネーによる支払いに生じるポイントの付与は、これらのカードが患者の支払いの利便性向上が目的であることに鑑み、当面、やむを得ないものとして認めることとしますが、その取扱いについては、引き続き年度内を目途に検討することとしているので、ご留意願います。