Archive for 4月 2nd, 2013

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「TPPと国民皆保険の破綻」

火曜日, 4月 2nd, 2013

                  魍魎亭主人

TPPに参加すると、国民皆保険が破綻すると云うのが大方の意見である。

例えば国の保健でやっている医療について、健康保険の対象に出来ないのであれば混合診療の枠の拡大をしろということになり、自己負担分が拡大する。自己負担分を一時払いで払うのは大変だと云うことなら、民間の医療保険に加入すればいいじゃないかと云うことになる。米国では保険会社がのさばっている。保険の査定を口実にして、診療内容にまで口を出すという。

更に薬の値段について、日本では国が決めているが、米国では製薬会社が自分で決めている。その意味では、今でも薬価の設定について、米国の製薬企業は不満を持っている。漏れ承るところによると、韓国では特許権の関係で自国製の後発医薬品が販売不能になり、米国の後発品に置き換わるのではないかとの心配がされているようである。我が国でも多くの薬が外国製である。TPPに加盟することでこのあたりが変わるのかどうか。

しかし、考えようによっては、我が国の保険制度は、TPPへの加盟とは関わりなく、崩壊する世界が見えている。2013年3月14日の新聞で『中央社会保険医療協議会において、患者本人の軟骨細胞を体外で培養して移植する再生医療製品に、4月から保険を適用することを承認した。事故などで傷ついた膝関節の治療用で、実際の利用は今年夏頃からの見通し。価格は1回の治療辺り208万円。軟骨の欠損部分が4平方㌢以上のばあいが対象となる。高額療養費制度により、患者の負担は10万円程になる見込み。』とする記事が掲載されていた[読売新聞,第49246号]。

今後、『再生医療』という化け物は、益々色々な姿を伴ってこの世界に生み出されてくる。

それを治療に活かす方策を考えた場合、より高額な価格設定が求められる治療になることは明らかである。それら高額な医療の全てを保険財政で賄うことは、理想の姿ではあっても現実的には不可能である。そのためには混合診療の枠組みを広げて、民間医療保険の参入を認めざるを得なくなる。つまりTPPに参加すると起こるであろうと予測されている中身は、医療の進歩により自ずから自己倒壊を起こす定めにあると云うことである。さて国民はどうするのか。

     (2013.3.19.)

『調剤一部負担金のポイント化について』

火曜日, 4月 2nd, 2013

             魍魎亭主人

調剤薬局で調剤した結果、個人負担分の支払いに対して、ポイント付与が行われている問題で、厚生労働省はポイント付与を認めないとする文書を発出した。

大体、医師の処方箋に基づく調剤は、いわゆる商品としての医薬品の販売ではなく、治療の一環として調剤しているのである。医療の一環である以上、調剤に対するサービスとして金銭的なサービスはあってはならない。調剤に対するサービスは、飽く迄医療としてのサービスが主体であり、薬剤の情報提供に力点を置くべきである。

薬による有害作用の発生から患者の生命を守るのが薬剤師の役割であり、使命である。従って薬剤師のするべきサービスはそこに収斂すべきであり、ポイント付与などと云う物質的サービスを行うべきではない。第一ポイントを付けなければ処方箋が集まらないという発想が既におかしくはないか。親切な対応と充実した服薬指導。有効性の保証と同時に有害作用を回避するための手段を提供することが重要なのである。

医師からの処方箋を受領すると同時に、処方箋上の薬の組合せに問題がないかどうかを検討する。OTC薬や健康食品の使用を確認する。これらは全て相互作用に対する配慮である。更に再来患者であれば、前回の処方箋との間に内容的に変更はないのかどうか。変更があれば服用中の薬で効果がなかったのか、あるいは有害作用が発現したのかどうかの確認が求められる。

更に患者に対して、服用中の薬について、服み難い等の問題はないか?。薬を服み始めて何か体調の変化はないか?。医師の指示通り服めているのかどうか?等々について、確認する。これらの指示や会話は、患者との間に信頼関係がなければ、ただ煩がられるだけで会話は成立しない。

尤も調剤におけるサービスが、単に物理的なもので済むと薬剤師が思っている限り、患者との間に信頼関係は出来ない。

最近、病院勤務薬剤師と、調剤薬局の薬剤師の間に、“薬薬連携”が必要だとする意見を耳にするが、ポイントサービスにのみ眼を向けている薬剤師に、“薬薬連携”のパートナーとしての期待を持つことは出来ないのではないか。

クレジットカードのポイントと同じだから認めろという話も聞かれるが、クレジットカードのポイントは現金を使わずに買い物をするというあの仕組みに慣れて貰うために付けていたものではないのか。従って現金により商品を購入する行為に対してポイントを付けるということと意味が異なりはしないか。

いずれにしろ厚生労働省から次のような文書が出されること自体、調剤におけるサービスの内容を踏み間違えていると云わざるを得ない。

(2013.3.21.)

 

                                                              保医発0914第1号
                                                              平成24年9月14日

地方厚生(支)局医療課長 殿

                                                        厚生労働省保険局医療課長
                                                              ( 公 印 省 略 )

保険医療機関及び保険医療養担当規則及び保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部改正に伴う実施上の留意事項について

 

標記については、保険医療機関及び保険医療養担当規則及び保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第26号)が公布され、平成24年10月1日より適用されるが、本改正の趣旨は下記のとおりであるので、その取扱いに遺漏のないよう貴管下の保険医療機関及び保険薬局に対し、周知徹底をお願いいたします。

                                      記

本改正は、保険薬局における調剤一部負担金に対するポイント付与が行われている事例が認められたことに鑑み、次の考え方を踏まえ、一部負担金等の受領に応じて専らポイントの付与及びその還元を目的とするポイントカードについては、ポイントの付与を認めないことを原則とするものです。
・保険調剤等においては、調剤料や薬価が中医協における議論を経て公定されており、これについて、ポイントのような付加価値を付与することは、医療保険制度上、ふさわしくない。
・患者が保険薬局等を選択するに当たっては、保険薬局等が懇切丁寧に保険調剤等を担当し、保険薬剤師等が調剤、薬学的管理及び服薬指導の質を高めることが本旨であり、適切な健康保険事業の運営の観点から、ポイントの提供等によるべきではない。

ただし、現金と同様の支払い機能を持つクレジットカードや、一定の汎用性のある電子マネーによる支払いに生じるポイントの付与は、これらのカードが患者の支払いの利便性向上が目的であることに鑑み、当面、やむを得ないものとして認めることとしますが、その取扱いについては、引き続き年度内を目途に検討することとしているので、ご留意願います。