「SFTSウイルス感染症について」
水曜日, 4月 17th, 2013KW:感染症・SFTSウイルス感染症・重症熱性血小板減少症候群・SFTSウイルス・ブニヤウイルス科フレボウイルス属
Q:ダニが媒介する新興感染症について
A:厚生労働省は30日、中国で2009年ごろから発生しているダニ媒介性の新感染症が、国内で初めて確認されたと発表した。患者は山口県の成人で、昨年秋に死亡した。患者に最近の海外渡航歴はなく、日本国内でウイルスに感染したとみられる。原因ウイルスを媒介するマダニは日本でも全国に分布しており、厚労省では「全国どこでも発生し得る感染症と考えられる」として注意を呼び掛けている。
感染症は「重症熱性血小板減少症候群」で、2009年以降に中国で報告され、2011年に原因ウイルス「SFTSウイルス」が初めて特定された。また、米国でも似たウイルスによる症例が報告されている。今回の山口県の症例は、中国で見つかったウイルスとほぼ同じという。主な症状は発熱、倦怠感、食欲低下、消化器症状、リンパ節の腫れ、出血で、致死率は10%を超える。治療法は対症療法に限られる。
厚労省によると、予防には、マダニが主に生息する草むらや藪などに入る時には長袖、長ズボンを着用するなど肌の露出を少なくすることや、屋外活動後にはマダニにかまれていないか確認することが重要。特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては要注意という。
厚労省では、
▽吸血中のマダニに気付いたら、できるだけ病院で処置してもらう。
▽マダニにかまれた後に発熱などの症状があれば病院を受診する。
■医療機関に情報提供を依頼
厚労省は同日付で、この感染症が疑われる患者を診察したら情報提供するよう、医療機関に依頼することを求める通知を都道府県などに出した。情報提供を求める患者の要件は、「38度以上の発熱と消化器症状を呈し、血液検査所見で血小板減少、白血球減少、血清酵素の上昇が見られ、集中治療を要したか、死亡した」で、ほかの原因が明らかな場合は除く。
重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)はブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルス、SFTSウイルス(SFTSV)、によるダニ媒介性感染症である。2011年に中国でSFTSと命名された新規感染性疾患が報告されて以来、中国国内の調査から現在7つの省(遼寧省、山東省、江蘇省、安徽省、河南省、河北省、浙江省)で患者発生が確認された。
(別紙2)
事務連絡
平成25年2月13日
都道府県
各 保健所設置市 衛生主管部(局) 御中
特 別 区
厚生労働省健康局結核感染症課
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の国内での確認状況について
(情報提供)
日頃より感染症対策にご協力賜りありがとうございます。
平成25年1月30日付け健感発0130第1号により、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の疑いのある患者を診察した場合について情報提供をお願いしたところです。
今般、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症例
・愛媛県(成人男性1名:昨秋に死亡。最近の海外渡航歴なし。)
・宮崎県(成人男性1名:昨秋に死亡。最近の海外渡航歴なし。)
が、確認されましたので、情報提供いたします。
引き続き、医療機関から情報提供があった場合には、その内容について当課までご連絡ください(様式任意)。
(参考)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について(厚生労働省ホームページ)
事務連絡
平成25年2月19日
都道府県
各 保健所設置市 衛生主管部(局) 御中
特 別 区
厚生労働省健康局結核感染症課
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の国内での確認状況について
(情報提供)(その2)
日頃より感染症対策にご協力賜りありがとうございます。
平成25年1月30日付け健感発0130第1号により、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の疑いのある患者を診察した場合について情報提供をお願いしたところです。
これまでに重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症例が3例確認されましたが、今般、新たな症例(成人男性1名:昨夏に死亡。国内感染疑い。)が、広島県において確認されましたので、情報提供いたします。
引き続き、医療機関から情報提供があった場合には、その内容について当課までご
絡ください(参考様式は任意)。
(参考)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について(厚生労働省ホームページ)
基安労発0221第2号
平成25年2月21日
都道府県労働局労働基準部長 殿
厚生労働省労働基準局
安全衛生部労働衛生課長
重症熱性血小板減少症(SFTS)の予防対策等の周知等について
平成25年1月に国内で初めて重症熱性血小板減少症(Severe Fever withThrombocytopenia Syndrome: SFTS)の症例が確認され、これまで山口県、愛媛県、宮崎県、広島県の4県で合計4名の死亡例が確認されている。本疾患は、特に春季に、原因ウイルスを媒介するマダニの活動が活発になることから、林業等の事業場において発生する可能性がある。重症熱性血小板減少症に関する基礎知識や感染予防等については、厚生労働省ホームページ「重症熱性血小板減少症候群」、「重症熱性血小板減少症Q&A」にまとめられていることから、関係事業者等に対して予防対策等の周知及び指導を行うに当たっての参考とされたい。
また、関係団体に対し、別紙のとおり要請を行ったので、了知されたい。
○「重症熱性血小板減少症候群」について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002u1pm-att/2r9852000002u21t.pdf
○「重症熱性血小板減少症候群に関するQ&A」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
(厚生労働省ホームページ)
(別紙)
基安労発0221第3号
平成25年2月21日
(別記関係団体)の長 殿
厚生労働省労働基準局
安全衛生部労働衛生課長
重症熱性血小板減少症(SFTS)の予防対策等の周知等について
労働基準行政の運営につきましては、日頃から格別の御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、重症熱性血小板減少症(Severe Fever with ThrombocytopeniaSyndrome: SFTS)に関しましては、平成25 年1月に国内で初めての症例が確認され、これまで山口県、愛媛県、宮崎県、広島県の4県で合計4名の死亡例が確認されております。本疾患は、特に春季に、原因ウイルスを媒介するマダニの活動が活発になることから、林業等の事業場において発生する可能性がございます。重症熱性血小板減少症に関する基礎知識や感染予防等については、厚生労働省ホームページ「重症熱性血小板減少症候群」、「重症熱性血小板減少症Q&A」にまとめられております。
つきましては、貴団体におかれましても、会員その他関係事業場に対する本疾患の予防対策等の周知及び指導とともに、当該事業場が対策を実施される際は、特段の御配慮を賜りますようお願いいたします。
○「重症熱性血小板減少症候群」について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002u1pm-att/2r9852000002u21t.pdf
○「重症熱性血小板減少症候群に関するQ&A」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
(厚生労働省ホームページ)
別記関係団体
林業・木材製造業労働災害防止協会
建設業労働災害防止協会
SFTSVは3分節の1本鎖RNAを有するウイルスで、クリミア・コンゴ出血熱やリフトバレー熱、腎症候性出血熱やハンタウイルス肺症候群の原因ウイルスと同様にブニヤウイルス科に属する。中国からの報告では、マダニ[フタトゲチマダニ(Haemophysalis longicornis )、オウシマダニ(Rhipicephalus microplus )]からウイルスが分離されており、SFTSVの宿主はダニであると考えられている。また、ダニに咬まれることの多い哺乳動物からSFTSVに対する抗体が検出されていることから、これらの動物もSFTSVに感染するものと考えられる。ヒトへの感染は、SFTSVを有するダニに咬まれることによるが、他に患者血液や体液との直接接触による感染も報告されている。ウイルス血症を伴う動物との接触による感染経路もあり得ると考えられる。SFTSVに感染すると6日-2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳、咽頭痛)、出血症状(紫斑、下血)等の症状が出現し、致死率は10%を超える。SFTSはダニ媒介性ウイルス感染症であることから、流行期はダニの活動が活発化する春から秋と考えられる。ダニは日本国内に広く分布する。
基本的に対症療法となる。有効なワクチンはない。
医療機関における院内感染予防には、ヒトからヒトに感染する接触感染経路があることから、標準予防策の遵守が重要である。また、臨床症状が似た患者を診た場合にはSFTSを鑑別診断に挙げることが重要である。
SFTSVに感染しないようにするには、ダニに咬まれないようにすることが重要である。草むらや藪など、ダニの生息する場所に入る場合には、長袖の服、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが重要である。
参考文献
1) Yu XJ, et al., N Engl J Med 364:1523-32, 2011
2) Li S, et al., Biosci Trends 5:273-6, 2011
3) Zhang YZ, et al., J Virol 86:2864-8, 2012
4) Tang X, et al., J Infect Dis ahead of print. 2013
5) Xu B, et al., PLoS Pathog 7:e1002369, 2011
<医療従事者等の専門科向け>
Q1.SFTSウイルスはどのようなウイルスですか?
A.SFTSウイルスは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に属する、三分節1本鎖RNAを有するウイルスです。ブニヤウイルス科のウイルスは酸や熱に弱く、一般的な消毒剤(消毒用アルコールなど)や台所用洗剤、紫外線照射等で急速に失活します。
Q2.日本で見つかったSFTSウイルスは、中国や米国で見つかっているものと同一のウイルスですか?
A.日本で見つかったSFTSウイルスは、中国のSFTSウイルスとほぼ同じです。米国で見つかったウイルスは、SFTSウイルスに近縁のウイルスです。
Q3.潜伏期間はどのくらいですか?
A.(マダニに咬まれてから)6日-2週間程度です。
Q4.重症熱性血小板減少症候群にかかると、どのような症状が出ますか?
A.原因不明の発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が中心です。時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳など)、出血症状(紫斑、下血)を起こします。
Q5.検査所見の特徴はどのようなものですか?
A.血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少、血清電解質異常(低Na血症、低Ca血症)、血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CK上昇)、尿検査異常(タンパク尿、血尿)などが見られます。
Q6.どのようにして診断すればよいですか?
A. マダニによる咬傷後の原因不明の発熱、消化器症状、血小板減少、白血球減少、AST・ALT・LDHの上昇を認めた場合、本疾患を疑うことが大事です。確定診断には、ウイルス学的検査が必要となります。なお、患者がマダニに咬まれたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も多くあります。
Q7.確定診断のための検査はどこでできますか?
A.保健所や地方衛生研究所を通じて国立感染症研究所ウイルス第一部に検査を依頼することができます。
Q8.治療方法はありますか?
A.有効な抗ウイルス薬等の特異的な治療法はなく、対症療法が主体になります。中国では、リバビリンが使用されていますが、効果は確認されていません。
Q9.患者を取り扱う上での注意点は何ですか?
A.中国では、患者血液との直接接触が原因と考えられるヒト-ヒト感染の事例も報告されていますので、接触予防策の遵守が重要です。飛沫感染や空気感染の報告はありませんので、飛沫予防策や空気予防策は必要ないと考えられています。
Q10.患者検体(サンプル)を取り扱う場合の注意点は何ですか?
A.患者の血液や体液にはウイルスが存在する可能性があるため、標準予防策を遵守することが重要です。
Q11.重症熱性血小板減少症候群が疑われる患者がいた場合、どう対応したらよいですか?A.最寄りの保健所に連絡をお願いします。
Q12.検査方法等、技術的な内容の相談窓口を教えてください。
A.国立感染症研究所info@niid.go.jpにお問い合わせください。
[SFTSV:2013.4.17.]