「マイスリー錠の副作用」
火曜日, 3月 26th, 2013
KW:副作用・マイスリー錠・zolpidem tartrate・ゾルピデム酒石酸塩・もうろう状態・睡眠随伴症状・夢遊症状警告・重要な基本的注意・重大な副作用・アムネジア・amnesia・記憶喪失・健忘
Q:マイスリー錠の副作用にアムネジアはあるか。
A:マイスリー錠(アステラス製薬)は1錠中にzolpidem tartrate(ゾルピデム酒石酸塩)5mg・10mgを含有する入眠剤である。本品は非benzodiazepine系薬剤であるが、benzodiazepine受容体に結合し、GABA receptorに影響を及ぼすことでGABA系の抑制機構を増強する。速効型で短時間型である。
本品は警告として『本剤の服用後に、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)があらわれることがある。また、入眠までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがあるので注意すること。』の記載がされている。
本品の適応上の注意として『本剤の投与は、不眠症の原疾患を確定してから行うこと。なお、統合失調症あるいは躁うつ病に伴う不眠症には本剤の有効性は期待できない。』とする指示がされている。また、適用上の注意事項として『1.本剤に対する反応には個人差があり、また、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)は用量依存的にあらわれるので、本剤を投与する場合には少量(1回5mg)から投与を開始すること。やむを得ず増量する場合は観察を十分に行いながら慎重に投与すること。ただし、10mgを超えないこととし、症状の改善に伴って減量に努めること。2.本剤を投与する場合、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、患者が起床して活動を開始するまでに十分な睡眠時間がとれなかった場合、又は睡眠途中において一時的に起床して仕事等を行った場合などにおいて健忘があらわれたとの報告があるので、薬効が消失する前に活動を開始する可能性があるときは服用させないこと。』等の報告がされている。
その他、重要な基本的注意として『1.本剤の投与は継続投与を避け、短期間にとどめること。やむを得ず継続投与を行う場合には、定期的に患者の状態、症状などの異常の有無を十分確認のうえ慎重に行うこと。2.本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。』等の注意事項が記載されている。
本品の重大な副作用として、次の事項が報告されている。
1.依存性、離脱症状:連用により薬物依存(頻度不明)を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に投与すること。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、反跳性不眠、いらいら感等の離脱症状(0.1-5%未満)があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
2. 精神症状、意識障害:せん妄(頻度不明)、錯乱(0.1-5%未満)、夢遊症状(頻度不明)、幻覚、興奮、脱抑制(各0.1%未満)、意識レベルの低下(頻度不明)等の精神症状及び意識障害があらわれることがあるので、患者の状態を十分観察し、異常が認められた場合には投与を中止すること。
3. 一過性前向性健忘、もうろう状態:一過性前向性健忘(服薬後入眠までの出来事を覚えていない、途中覚醒時の出来事を覚えていない)(0.1-5%未満)、もうろう状態(頻度不明)があらわれることがあるので、服薬後は直ぐ就寝させ、睡眠中に起こさないように注意すること。なお、十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告がある。異常が認められた場合には投与を中止すること。
4. 呼吸抑制:呼吸抑制(頻度不明)があらわれることがある。また、呼吸機能が高度に低下している患者に投与した場合、炭酸ガスナルコーシスを起こすことがあるので、このような場合には気道を確保し、換気をはかるなど適切な処置を行うこと。
5. 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-Pの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
以上の各報告から本品には、アムネジア(amnesia:記憶喪失、健忘)あるいはtransient amnesia(一過性健忘)が報告されており、服用時には注意が必要である。特に短時間型作用薬は健忘・譫妄等の発現の恐れがあるとされており、服用に際しては注意が必要である。
1)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012
2)マイスリー錠添付文書,2012.10.
[065.ZOL.2012.10.16.古泉秀夫]