トップページ»

『タンドスピロンクエン酸塩とジブラシドンの作用機序』

火曜日, 3月 26th, 2013

KW:臨床薬理・タンドスピロンクエン酸塩・ジブラシドン・セロトニン作動性抗不安薬・セロトニン-ドパミン拮抗薬・非定型抗精神病薬・非定型統合失調症治療薬・Atypical antipsychotic・SDA

Q:タンドスピロンクエン酸塩とジブラシドンの構造相似性と効果について

A:両剤の作用機作について、次の通り報告されている

一般名

tandospirone citrate

タンドスピロンクエン酸塩

ziprasidone又はziprasidone hydrochloride
ジプラシドン又はジプラシドン塩酸塩

セディール錠
(大日本住友)

ジオドン(geodon)
(ラクオリア創薬:国内第II相臨床試験中)
(ファイザー:国内未発売)

薬効分類 セロトニン作動性抗不安薬

セロトニン-ドパミン拮抗薬
非定型抗精神病薬



心身症(自律神経失調症、本態性高血圧症、消化性潰瘍)における身体症候ならびに抑うつ、不安、焦躁、睡眠障害

神経症における抑うつ、恐怖

通常、成人にはタンドスピロンクエン酸塩として1日30mgを3回に分け経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減するが、1日60mgまでとする。

統合失調症(治療抵抗性統合失調症の長期治療薬として有効と示唆)
統合失調症での再発遅延
統合失調症に伴う急性の激越(筋肉内製剤)

双極性障害の急性躁病及び混合性エピソード
(米国での適応症)




抗不安作用:臨床における抗不安作用の指標となるコンフリクト試験で、ジアゼパムと同等の効力を示す(ラット)。

抗うつ作用:従来の三環系抗うつ薬が有する生体アミンの神経終末への再取り込み阻害作用は示さないが(ラット)、臨床における抗うつ作用の指標となる嗅覚球摘出ラットのマウス攻撃行動(ムリサイド)の抑制、オペラント試験における強化数の増加(ラット)、また、強制水泳試験での無動時間の短縮(ラット)等の作用が認められている。

心身症モデルでの検討:視床下部刺激による昇圧反応(ネコ)、電撃ショックストレス負荷による血漿中レニン活性の上昇(ラット)を抑制する。また、心理的ストレス負荷による胃潰瘍の発生(マウス)、水浸拘束ストレス負荷による摂食低下(ラット)を抑制する。

dopamine 2受容体を遮断し、精神病の陽性症状を軽減し、感情症状を安定化する。

serotonin 2A受容体を遮断することにより、特定の脳部位でのdopamine遊離を増強し、それによって運動系の副作用を軽減し、おそらく認知や感情症状を改善する。

他の多彩な神経伝達物質受容体での相互作用はziprasidoneの効果に寄与しているのであろう。

特に5HT2Cと5HT1A受容体での相互作用は、認知や感情症状への効果に寄与している患者がいるかもしれない。特に5HT1D受容体及びserotonin・norepine-

phrine・dopamineのトランスポーター(特に高用量)における相互作用は、感情症状への効果に寄与している患者がいるかもしれない。

陽性症状および陰性症状の双方に有効であるとされ、一方で、錐体外路系症状や遅発性ジスキネジア、高プロラクチン血症などの副作用が少なく、MARTA系の抗精神病薬にみられる体重増加に関する問題が少ないとされる。また、高用量では抗うつ作用も示すとされる




脳内セロトニン受容体のサブタイプの1つである5-HT1A受容体に選択的に作用することにより、抗不安作用や心身症モデルにおける改善効果を示すと考えられる。また、抗うつ作用の主な発現機序は、セロトニン神経終末のシナプス後5-HT2受容体密度の低下が関与していると推定される。 serotonin 5-HT2A受容体拮抗作用とdopamine D2受容体拮抗作用を有する非定型統合失調症治療薬。5-HT2A/D2比が最も高く、また他のdopamine、serotoninサブタイプ受容体にも強力な作用を持つことから有効性が高く、錐体外路性副作用や遅発性ジスキネジアが少ない。更に非定型統合失調症治療薬では異色のノルエピネフリン取込阻害作用も有する。米では臨床試験で心電図にQT時間の延長が見られたため、新データを添えて再申請、2001年2月20日FDAが承認、発売した。米での適応は適応症欄参照。


image image

非定型抗精神病薬(Atypical antipsychotic)

定型抗精神病薬に対応して用いられる用語である。第二世代抗精神病薬ともいう。
定型抗精神病薬は、その薬理学的作用機序により錐体外路症状、高プロラクチン血症などの副作用が出やすい傾向にあった。それに対して非定型抗精神病薬はそのような副作用が少なくなるように作られている。基本的な薬理学的作用機序はdopamine 2受容体とserotonin 2A受容体の遮断にある。dopamine 2受容体の遮断は、中脳辺縁系に作用し特に統合失調症の陽性症状に対して効果を示すが、中脳黒質経路、漏斗下垂体経路、前頭前野経路に働くことによりそれぞれ錐体外路症状、高プロラクチン血症、陰性症状などの副作用、有害事象が出現するとされている。serotonin 2A受容体の遮断は、中脳辺縁系以外のdopamineの遊離を促進するため非定型抗精神病薬ではこれらの有害事象が出難いと考えられている。serotoninとdopamineの遮断が非定型抗精神病薬の主たる薬理作用であるため、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬:serotonin・dopamine antagonist)又はDSAと呼ばれることもある。

現在日本で使用できる非定型抗精神病薬はrisperidone、quetiapine、perospirone、olanzapine、aripiprazole、blonanserinの6種類であるとする報告が見られる。

1)セディール錠添付文書,2009.6.改訂
2)仙波純一:精神科治療薬処方ガイド;MEDSi,2006
3)New Current,20(14):28(2009.6.20.)

            [015.4.ZIP:2009.9.6.古泉秀夫]