『医薬品販売の意味をはき違えていませんか』
金曜日, 2月 1st, 2013魍魎亭主人
大手スーパーの西友(東京)が『登録販売者』の受験資格が得られるよう、実務経験時間を水増しした証明書を発行していた疑いがあることが、4日、厚生労働省や東京都の取材で分かったとする報道[読売新聞,第49118号,2012.11.5.]がされていた。
2008年-2011年の4年間に19都道府県で200人を超える合格者が、実際には受験資格がなかったとみられ、各都道府県は不正があったケースについて合格を取り消す。
登録販売者試験を受けるには、薬剤師らの指導の下販売などの実務を1年間、月80時間以上、経験する必要がある。受験の際、勤務先が発行する実務経験証明書を都道府県に提出する。都によると8月に匿名の情報が寄せられ、都が同社に調査を指示したというものである。
引き続きの報道[読売新聞,第49119号,2012.11.6.]で、同社は6日に都内で記者会見し、2008年以降、19都道府県の試験に合格した従業員200人に実務経験が不足していたとして、証明書が虚偽だったことを認めた。
同社は2008年以降登録販売者試験を受ける従業員352人に実務経験証明書を発行したが、このうち8割に当たる282人は実務経験の時間が不足していたという。会社ぐるみの関与について「現段階ではなかったと考えている」と否定ししつ「年内までに更に詳しく調査したい」とした。
この問題を受け、三井厚労相は6日の閣議後記者会見で、各都道府県に対し、西友の登録販売者について早急に調査を行うよう指示する考えを示した。
西友は会社ぐるみの関与はなかったとしているが、一人や二人のことではなく、19都道府県に亘って受験者の8割が受験資格不適任者だと云うことであれば、明らかに統一的な対応意思の下に指示が出されていたと考えるのが普通であり、会社の誰か偉いのが指示をしたと考えるべきだろう。
一体、西友は薬を売ることの意味をどう考えていたのか。取扱いに便利な、単なる利潤の多い商品位の認識だったとすれば、それはとんでもない間違いだと云わなければならない。薬は効果だけではなく、有害作用も併せて販売し、更には無効も販売するのである。売った薬が効かなくとも、金を返せと言われないのは、説明によって曖昧性の軽減が行われているからである。
その説明の根拠になるのが、薬剤師の資格であり、『登録販売者』の資格なのである。つまり勉強した知識に基づき、専門職能として説明することによって購入者の安全・安心を保証する役割を果たすことが責任なのである。
今回の西友の対応は、その根源を崩す行為であり、決して許されてはならない。少なくとも医薬品の販売には不向きだと言うことで、医薬品販売業の免許を取り消すぐらいの処分を課すべきである。
等ということを書いていたら、驚いたことにドラッグストア「フィット・ケア・デポ」を運営する「カメガヤ」(神奈川県)で、登録販売者試験の受験に必要な実務経験証明書について、合格した従業員190人に不正があったと発表したと言う[リスファックス,第6211号,平24.11.16.]。2008-2011年に同社が発行した証明書で、受験資格に必要な実務経験が充足していなかった。不正が明らかになったのは190人で、同社に在籍する登録販売者350人のうち110人(80人は退職)で判明。
何ともはや言いようがない話が連続して出たが、あるいはこれは氷山の一角ではないのか。また、退職した80人の登録販売者の免許の返却は完全に終了したのか。
いずれにしろ徹底的に精査し、他にも類似の不正がされていないのかどうか、調査することが必要である。更に不正が確認された場合、店舗の販売許可の停止とともに、登録販売者としての受験資格の停止等の厳しい処分を科すべきである。
(2012.11.22.)