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「AD/HDについて」

木曜日, 1月 24th, 2013

 

KW:語彙解釈・ADHD・AD/HD・attention-deficit・hyperactivity disorder・注意欠如・多動性障害

Q:ADHDの略号で記載される病名と病態について。

A:通常、略号の正式な表記は『AD/HD』で、

attention-deficit / hyperactivity disorderの略号である。日本語での表記は『注意欠如・多動性障害』である。

注意欠如・多動性障害(AD/HD)は、幼児期に始まり、注意集中の困難、衝動性、多動性を示す。AD/HDに気分障害と不安障害が合併している率は高い。

ICDに沿った概念として『多動性障害群は、不注意、多動性及び衝動性を主症状とし、それらが状況にかかわらず認められ、適応上の問題を生じるものである。微細脳機能障害(MBD)は、多動、注意欠陥、不器用を主徴とし、多動性障害と重なる点が多い。DSM-IVでは注意欠陥/多動性障害が用いられているが、ICD-10の多動性障害と同様である。

[疫学]有病率は小学生で3-7%で、性比は3-6:1で男子優位である。
[症状と診断]主症状は、不注意、多動性及び衝動性である。
●不注意
?細かい注意が払えずミスが多い。
?注意が集中できない。
?云われたことを聞いていない。
?理解はあるが指示に従えない。
?課題や作業をまとめられない。
?精神的集中を要する課題を嫌う。
?学校で必要なものをよくなくす。
?外からの刺激で注意がそがれやすい。
?物忘れをしやすい。
の9項目中6項目以上が6ヵ月以上持続する。
●多動性
?座っていても手足や体を動かす。
?離席が多い。
?じっとしているべき状況で動き回る(年長者では落ち着かない感じのみ)。
?過度にうるさく一緒に遊べない。
?状況によって変わらず活動的すぎる。
の5項目中3項目以上が6ヵ月以上持続する。
●衝動性
?質問が終わらないのに答え始める。
?順番を待てない。
?他人の邪魔をする。
?遠慮なく過剰にしゃべる。
の4項目中1項目が6ヵ月以上持続することで診断される。

以上の症状は、家庭や学校など状況にかかわらず存在し、適応上の問題を生じる。発症は7歳以前である。鑑別診断は、広汎性発達障害の各亜型、躁病エピソード、うつ病エピソード、不安障害などである。

[治療]

AD/HDの治療として、「心理社会的治療」と「薬物療法」の2種類がある。治療に取り組んだとしても、直ぐに治癒するという病気ではなく、治療は直すことを目指すのではなく、病気を持っていても普通の子供と同じように日常生活、社会生活を送ることが出来る様になることを目的とすることが重要である。

AD/HDの治療で、薬物療法は精神刺激薬が中心であるが長期間用いる治療法ではなく、教育的及び心理的側面からの対応と家族への心理的支持も必要である。

AD/HDの治療においては、いかに有効な治療プログラムを組むかが重要で、子供と家族、医師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、担任教師や養護教諭などの学校関係者、福祉行政担当者等、治療に携わるさまざまな人達が連携して取り組むことが必要である。

[予後]

多動性障害を有する子供の2/3は、症状の一部を成人期まで持ち続ける。多動性障害の約1/4に後遺障害が合併する。

1)井上令一・他監訳:精神科薬物療法ハンドブック第3版;MEDSi,2001
2)山口 徹・他総編集:今日の治療指針;医学書院,2011
3)上島国利・他編:NEW精神医学改訂第2版;南江堂,2008

                [615.8.ADHD:2012.12.14.古泉秀夫]