「ロートコンの薬理作用と副作用」
土曜日, 11月 3rd, 2012
KW:薬名検索・OTC薬・ロートコン・薬理作用・副作用・莨
KW:薬名検索・OTC薬・ロートコン・薬理作用・副作用・莨
KW:副作用・スルホンアミド基・光線過敏症・光線過敏性反応・sulfonamide・サルファ剤・毒性・副作用
Q:構造中にスルホンアミド基を持つ薬剤は光線過敏性反応の原因となるか
A:スルホンアミド(sulfonamide):別名:スルファミド、スルファミン。一般式RSO2NH2で標記される。スルホン酸(-SO3H)のOH基をNH2基で置換したアミド。またスルファニルアミドの医薬品としての慣用名。サルファ剤とも云う。
一般式のRはアルキル基又はアリール基。アミノ基の水素が更にアルキル基又はアリール基で置換されたものを総称する。スルホクロリドとアミンの反応で得られ、一般に融点の高い結晶性の化合物である。
カルボン酸のアミドに比べ、酸や塩基による加水分解、ヒドリド還元などに対して一般に安定である。生体内でも代謝を受け難く、水溶性もよいことから医薬の部分構造として多用される。
sulfonamideの毒性は、経口及び局所sulfonamideにより起こることがある。発疹、スティーブンジョンソン症候群、脈管炎、血清病、薬物熱、アナフィラキシー及び血管性浮腫等の過敏性反応、結晶尿、乏尿及び無尿、胃腸炎、顆粒球減少、血小板減少、新生児における核黄疽(スルホンアミド系はアルブミン上のビリルビン結合部位を競合し、胎児の血中の非抱合型ビリルビン濃度を上昇させて核黄疽のリスクを高める)。及びG6PD欠損患者における溶血性貧血などの血液学的反応、光線過敏症、末梢神経炎、不眠及び頭痛などの神経学的作用である。分娩間近の妊婦及び新生児にはsulfonamide系を投与してはならない。
『sulfonamide 系薬剤の添付文書の記載例』
§本剤はスルホンアミド基を有するため交叉過敏症(皮膚過敏からアナフィラキシーまで)が発現する可能性がある[投与禁忌:スルホンアミド系薬剤に過敏症の既往歴のある患者]。
acetazolamide(アセタゾラミド)[ダイアモックス錠250mg(三和化学)]
benzylhydrochlorothiazide(ベンチルヒドロクロロチアジド)[ベハイド錠4mg(杏林)]
celecoxib(セレコキシブ)[セレコックス錠(アステラス)]
chlorpropamide(クロルプロパミド)[アベマイド錠250mg(小林化工)]
furosemide(フロセミド)[ラシックス錠10mg(サノフィ・アベンティス)
gliclazide(グリクラジド)[グリミクロンHA錠20mg(大日本住友)]
glibenclamide(グリベンクラミド)[オイグルコン錠1.25mg(中外)]
indapamide(インダパミド)[ナトリックス錠(京都)]
meticrane(メチクラン)[アレステン錠150mg(日本新薬)]
naratriptan hydrochloride(ナラトリプタン塩酸塩)[アマージ錠2.5mg(GSK)]
salazosulfapyridine(サラゾスルファピリジン)[サラゾピリン錠500mg(ファイザー)]
sulfamethoxazole(スルファメトキサゾール)[バクタ配合錠(塩野義)]
sulfanilamide(スルファニルアミド)
sulfisoxazole(スルフイソキサゾール)[サイアジン点眼液(アステラス)]
sumatriptan(スマトリプタン)[イミグラン錠50(GSK)]
torasemide(トラセミド)[ルプラック錠4mg(田辺三菱)]
trichlormethiazide(トリクロルメチアジド)[フルイトラン錠1mg(塩野義)]
brinzolamide(ブリンゾラミド)[エイゾプト懸濁性点眼液1%(アルコン)]
dorzolamide hydrochloride(ドルゾラミド塩酸塩)[トルソプト点眼液0.5%(MSD)]
1)薬科学大辞典 第2版;廣川書店,1990
2)志田正二・編集代表:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1985
3)福島雅典・総監修:メルクマニュアル第18版日本語版;日経BP社,2007
4)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012
[065.SUL:2012.3.7.古泉秀夫]
KW:物理化学的性状・滑沢剤・absorbable dusting powder・滑剤・エチコンエス・タルク・手術手袋用滑沢剤・滑剤除去法・ethicon S
Q:手術用ゴム手袋装着時に用いる滑沢剤エチコンエスの代替品はないか。手術時に患部に滑沢剤が付着すると困るため。
A:エチコンエス(日本化薬)は、精選コーンスターチを特殊な化学的並びに物理的処理をして得られた澱粉誘導体に2%以内の酸化マグネシウムを添加した物で、米国薬局方absorbable dusting powderの規格に適合している。
手術ゴム手袋用滑沢剤として使用されているタルクは、開腹手術にともなって往々にして引き起こされる腹膜癒着の一因とされている。1933年にタルクを腹腔内に散布すると腹膜間肉芽腫、腸管膜癒着、その他の障害の原因になることが確認され、タルクに代わる無害な滑沢剤が要望され、トウモロコシ澱粉に特殊処理を施したエチコンエス(ethicon S)が製造された。本品は蒸気滅菌を行っても糊化せず、滅菌後も活性を失うことなく、且つ害の少ない滑沢剤である。
本品は腹腔内に飛散しても比較的短時間で生理的に吸収代謝されて局所に残留せず、癒着、その他の障害を殆ど起こさない。手術用手袋一組に付着するタルクの量は、普通0.2-0.3gで、犬による実験ではこの半量(0.15g)でも明らかに軽度ないし中等度の腸管膜癒着を生ずるが、エチコンエスは約3倍量(0.8g)を散布しても異常はなく、1週間以内に吸収されて局所に殆ど残留していないことが報告されている。
本剤の用法については、本品を手、指によく散布し、ゴム手袋を装着する。装着後手袋の表面に付着した粉末は十分に除去するとされているが、除去する方法については、手袋装着後の手を叩くことによって、付着したエチコンエスを物理的な力によって取り除くかあるいは消毒剤を用いて洗い流す方法が用いられているようである。
本品の使用上の注意として、『本品でも一時に大量のものが腹腔内に入れば吸収されず、Starch-granuloma(澱粉肉芽腫)や癒着を起こす恐れがあるので、手袋に付着した粉末は十分に除去し、できる限り腹腔内に入らないよう注意すること』の記載がされているが、動物実験の結果から見て、通常、手袋に付着している程度の本品の量で、特に問題になるとは考えられず、また、手袋装着後、手を叩くことで手術部位に影響しない程度まで、除去は可能であると考えられる。
尚、本品に代わる滑沢剤を用いたとしても、ゴム手袋に滑沢剤が付着することは避けられず、同様の処理は必要である。
1)エチコンエス添付文書,1986
2)日本化薬株式会社学術課・私信,1991
3)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.103,1991.6.18.
[790.FD15.014.45ETH.1991.6.17.古泉秀夫・1999.3.31.一部修正]
追記:産婦人科で使っていた粉末「タルク」に混入したアスベスト(石綿)が原因で中皮腫になったとして元准看護師が労災認定された問題で、2012.8.27.大阪市内で当事者が記者会見した。医療現場での日常的な作業で石綿に触れていたことを知らず、病気の原因が分からずに悩んできた心情を吐露し、「私と同じ状況にいる人が救済されるきっかけになれば」と語った。1981年から約5年、産婦人科医院に勤務。当時、手術用ゴム手袋を再利用する際、手袋がくっつかないよう、袋に入れてタルクをまぶす作業をし、袋を開く時にタルクを吸い込んだという。(2012年8月28日 読売新聞)。
上記の報道を受けてエチコンエスに興味が持たれたようであるが、残念ながら本品は2006年3月31日までの経過措置品目の扱いとなっている。