Archive for 9月 2nd, 2012

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「シンバスタチンと健康食品の相互作用」

日曜日, 9月 2nd, 2012

KW:相互作用・シンバスタチン・simvastatin・西洋弟切草・セイヨウオトギリソウ・セント・ジョーンズ・ワート・St.John’sWort

Q:シンバスタチンの添付文書中に西洋弟切草との相互作用は記載されていないが、報告例はあるか

A:simvastatin[リポバス錠5・10・20(MSD株式会社)] の薬効分類名はHMG-CoA還元酵素阻害剤及び高脂血症治療剤である。承認適応症は「高脂血症、家族性高コレステロール血症」である。

本剤の薬理作用について『simvastatinは吸収後、コレステロール合成の主要臓器である肝臓に選択的に分布し、活性型のオープンアシド体に加水分解される。オープンアシド体はコレステロール生合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を特異的かつ拮抗的に阻害し、肝臓のLDL受容体活性を増強させることによって、血清総コレステロールを速やかにかつ強力に低下させる。』と報告されている。また本剤の代謝系について『主に肝代謝酵素チトクロームP4503A4 (CYP3A4) により代謝される』とする報告が見られる。

セント・ジョーンズ・ワート(St.John’sWort):ヨーロッパ・中央アジア原産オトギリソウ科植物の地上部由来エキスで、ヒペルフォリン、ヒペリジン等の含有成分がセロトニンの濃度を増加させることで、抗うつ作用を発揮するとされている。独逸では医薬品として承認されている。その他、精神鎮静効果、セロトニン増加作用等が報告されている。St.John’sWortの連用により肝臓・小腸の薬物代謝酵素、特にCYP3A4・CYP2C9・CYP2C19・CYP1A2・CYP2D6等の誘導が生じ、酵素量が増加することが明らかになっている。その結果、これらの薬物代謝酵素で代謝される薬物の血中濃度が低下する。

その意味では、simvastatinの服用時にSt.John’sWortを摂食した場合、simvastatinの効力が減弱する可能性があることは予測可能である。従って単なる健康食品であるSt.John’sWortを、simvastatin服用中の患者に摂食させることは回避すべきである。

1)リポバス錠添付文書,2011.10改訂
2)奥村勝彦・監修:一目で分かる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とマネジメント<改訂版>;フジメディカル出版,2007
3)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012

            (015.2.SIM:2012.7.4.古泉秀夫)

「語彙解釈について」

日曜日, 9月 2nd, 2012

KW:語彙解釈・UKPDS・HOT研究・JSH2009・糖尿病合併高血圧・ARB・代謝面影響・有害事象

Q:次の語彙について、お調べ戴きたい。臨床試験(UKPDS、HOT研究など)、JSH2009ガイドラインでは『糖尿病合併高血圧の降圧目標は心血管病のリスク低下を図る観点から、その外来血圧を130/80mmHg未満という厳格な血圧管理を行うことが求められている』、
2006年12月に本邦初の降圧薬合剤、ロサルタン/ヒドロクロロチアジド合剤、ARB/利尿薬合剤のその強力な降圧効果を示すメカニズムについては、サイアザイドが示す利尿作用後にレニン活性面、代謝面への影響はやはり拭い去れない。有害事象は全体の約3%に認め、合剤の継続を中止した。

A:質問の事項について調査した結果は次の通りである。

*UKPDS:United Kingdom Prospective Diabetes Studyは、『2型糖尿病を対象に、主として大血管合併症について厳格な血糖コントロールによる合併症抑制効果を検討すべく計画された研究』。

*HOT(Hypertension Optimal Treatment)研究:至適治療血圧値設定のために行われた研究。

*JSH2009ガイドライン:日本高血圧学会(Japanese Society of Hypertension:JSH)から出された高血圧治療のためのガイドライン2009年版のことである。

*糖尿病合併高血圧:厳格な降圧療法の達成には併用療法が必要となるが、糖尿病合併例等高リスクの患者ほど薬剤数が多くなる傾向があった。ARBと利尿薬の配合薬、ARBとCa拮抗薬の配合薬が使用可能になり、薬剤数を減らすことにより服薬アドヒアランスの向上が図られるという利便性が増した。但し、利尿薬との配合薬使用に際しては、代謝系への副作用に留意することが必要である。我が国の臨床試験で基礎薬とCa拮抗薬を使用し、利尿薬ないしARBを併用することが心血管イベントの抑制に適していることが報告されている。

*ロサルタン/ヒドロクロロチアジド合剤:プレミネント配合錠(MDS)。持続性ARB/利尿薬合薬。本剤はRAS(レニン・アンジオテンシン系)活性化状態で著明な降圧効果を示すロサルタンとRASを活性化させるヒドロクロロチアジドとの配合剤であるため、両成分の併用投与は各単剤投与に比較しより顕著な降圧効果を示すとする報告が見られる。
                  
*ARB:Angiotensin II Receptor Blocker。ARB型降圧薬。アンジオテンシンII受容体拮抗薬。第一選択薬として使用される。ACE阻害薬同様、心保護、腎保護作用があり、副作用が少ないと報告されている。

*サイアザイドが示す利尿作用後にレニン活性面、代謝面への影響:本人又は両親、兄弟に痛風、糖尿病のある患者、及び高尿酸血症のある患者[高尿酸血症、高血糖症を来し、痛風、糖尿病の悪化や顕性化のおそれがある]。腎機能障害、コントロール不良の糖尿病等により血清カリウム値が高くなりやすい患者では、高カリウム血症が発現するおそれがあるので、血清カリウム値のモニタリングを定期的に実施し、観察を十分に行う。本剤の成分であるヒドロクロロチアジドは血糖値上昇若しくは糖尿病顕性化のおそれがあるので、観察を十分に行うこと等の報告がされている。

*有害事象は全体の約3%に認め、合剤の継続を中止:重篤な副作用として次の副作用が報告されている。
1.アナフィラキシー様症状。2. 血管浮腫(顔面、口唇、咽頭、舌等の腫脹)。3. 急性肝炎又は劇症肝炎。4. 急性腎不全。5. ショック、失神、意識消失。6. 横紋筋融解症。7. 低カリウム血症、高カリウム血症。8. 不整脈(心室性期外収縮、心房細動等)。9.汎血球減少、白血球減少、血小板減少。10. 再生不良性貧血、溶血性貧血。11. 壊死性血管炎。12. 間質性肺炎、肺水腫。13. 全身性エリテマトーデスの悪化。14. 低血糖 (糖尿病治療中の患者であらわれやすい) 。15. 低ナトリウム血症(倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐、意識障害等を伴う低ナトリウム血症)。

1)松岡博昭:高血圧の診断と治療[III]高血圧治療のupdate-4.降圧目標と治療効果;第118回日本医学会シンポジウム,2000.12.
2)プレミネント配合錠添付文書,2011.1.
3)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012

     [615.8.UKP:2012.4.14.古泉秀夫]