Archive for 9月, 2012

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「一物二名称」

月曜日, 9月 24th, 2012

    魍魎亭主人

 

中央社会保険協議会は、8月22日の総会において、富山化学/エーザイの関節リウマチ治療薬イグラチモド(一般名)について、『コルベット(大正富山)』、『ケアラム(エーザイ)』の商品名で併売するのは好ましくないとする意見が診療側委員から出たという。

いわゆる「一物二名称」は問題だという意見である。
三浦洋嗣委員(日本薬剤師会副会長):「患者や国民にどういうメリットがあるのか」と疑問視。薬局の在庫負担だけでなく、医療安全の観点からも「好ましくない。ルールを見直すべきではないか」と問題提起した。これに対し、

厚生労働省保険局医療課の吉田易範薬剤管理官は一物二名称は「別会社が別に承認を取って販売するもので、特段の保健衛生上の問題があるとは考えにくい」と指摘。メーカーMRが競うことで情報提供が充実することや、競争原理が働き、市場実勢価格が下がれば、薬剤費の適正化にもつながることなど、利点もあることを説明した。

この返答に、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は「両社が頑張るから詳細に情報提供が可能と云うが、こんなものを利点と思われたら困る。両社がMRを抱えて耳元で(医師に)囁き続ける。余計に囁いた方が耳に残るだけ」と反論。1社による販売よりMR雇用の人件費が嵩み、それが薬価にも上乗せして反映されることから「二社併売は好ましいとは思わない」と述べたと云う記事[リファックス,第6151号,平24.8.23]が紹介されていた。

“iguratimod”は、大正富山で創薬し、エーザイが共同開発の形で参画した薬剤である。2社共同開発に持ち込んだと云うことは、創薬した大正富山が、開発に伴う危険負担を軽減したい為と、治験実施医療機関の確保、市販後の販売戦略を考慮して提携したと考えられる。開発段階で膨大な経費をかけて、開発中止などと云うことになれば、損害は大きい。開発段階での危険性の分散ということで、両社がそれぞれに賭けたということだろう。

さて、厚生労働省は一物二名称について企業のMRが競うことで、情報提供が充実するとしているが、そんなことはあり得ない。大正富山とエーザイは、その品揃えは自ずから異なる。更には得意分野も異なっている。更に医療機関に対する影響力は、大きく差が開いている。従って、市販が開始される段階で企業は完全に担当医療機関の配分を決定し、全国的に担当病院を決めてしまう。つまり両社間に競争は起こりえないのである。しかし、担当施設を振り分けることで、個々の会社の売り上げではなく、全体の売り上げが嵩上げされる。その意味では商品名は何も二つにする必要はない。

競争原理が働き、市場実勢価格が下がれば、薬剤費の適正化にもつながるなどと脳天気なことを期待しているようであるが、競争は起こらない以上、競争原理は働きようがない。実勢価格が下がるとすれば、期待するほどの効果がなく、使用する医師が乗り気にならず、企業に嫌気がさした時である。大体、価格の設定は厚生労働省がやっているはずである。競争原理で値が下がることを期待するのではなく、最初から期待する価格を設定したらどうか。

医薬品の開発には膨大な経費が掛かる。二社協同で開発するという流れを止めることは出来ない。当然併売と云う形式は存続する。そのたびに一物二名称にするのではなく、統一名称で販売することで何の問題もないはずである。

      (2012.9.6.)

ぬらりひょん

月曜日, 9月 24th, 2012

      魍魎亭主人

 

民主党の鳩山さんという方は、よほど政治音痴にお育ちになった方だと呆れてしまう。少なくとも嘗て短期間とはいえ一国の総理をやったと思われるにも係わらず、我が国の置かれている状況を全く考えておらず、未だ党内の問題に口出しをしている。

今彼が元総理の立場で意見を述べるとすれば、我が国の国益に添った発言で有り、尖閣諸島に対する中国の対応についてで有り、朝鮮の竹島に対する対応の問題についてのはずである。にも係わらず18日に行われた千葉県鴨川市の講演で「民主党の軌道を大きく戻すことが出来なかった時に(党に)居続けることが適当かどうかという判断が必要になってくる」と述べたという。9月21日の党代表選で、野田首相の再選を阻止できなかった場合、離党する可能性を示唆したものだとされる[読売新聞,第49040号,2012.8.19.]。

総理が頻繁に替わるという我が国の現状、政治状況の不安定さが、外国に悪い影響を与え、日本は何も出来ないという侮りを与えているのだと云える。政治家たるもの国家を守るために如何にあるべきかを常に考えておかなければならないのではないか。その意味では国会内において、お互いに脚を引っ張り合う愚は避けなければならない。

失礼だが、この間の国会内の動きを見ていると、国家を考えて行動しているとは思えない。国会議員の行動の全てが、自分が当選できるかということ以外、何もないように見える。残念ながら今の民主党は鳩山・菅という前任の総理が、何をやったか解らないうちに退任し、国民の多くはその無責任さに呆れ果てている。その上、小沢氏の内乱である。小沢氏について出た連中も、消費税反対、反原発を叫べば当選すると考えているようであるが、多くの国民はその程度のことで投票しようとは思わない。

この国をどうしようと考えているのか、閉塞した経済状況をどう打開しようとしているのか、高齢化社会を迎え、増大する経費の補填をどうするのか。具体的に何をするのかの訴えがなければ、間違いなく票を得ることは出来ない。民主党の国会議員の皆様方は、落選を覚悟して国民のために何が出来るか、何をするのかを考えるべきである。

米国の大統領に沖縄の基地問題は任せろと云っておきながら知らん顔が出来る人である。次の選挙には出ないといいながら自分だけでは決められないと前言を取り消して知らん顔の出来る人である。今回も真際になれば又何か口実を付けて知らぬ顔の半兵衛さんを決め込むつもりかもしれないが、その様な人が元総理だということ自体、外国には悪影響を与えるのではないか。

民主党を出るなどという謎かけをしていないで、この間の政治家としての失敗の責任を取って止めるぐらいのことを云ってみてはどうか。最もそれを云ってみた所でまたもや知らん顔を決め込む事になるのかもしれないが、その様な方に付き従う国会議員がいると云うことにも理解が行かないところである。

   (2012.8.19.)

『金沢駆け足紀行』

月曜日, 9月 24th, 2012

   鬼城竜生

 

『薬剤師認定制度認証機構』という組織がある。この組織は「薬剤師に対する各種の生涯学習と認定制度を第三者評価する機関」である。英名はCouncil on Pharmacists Credentials。略称はCPCと標記されている。

金沢-0012012年3月24日(土曜日)金沢でCPCの参加組織の協議会の会合があったので出かけた。新幹線で越後湯沢迄行き、乗り換えてほくほく線で金沢に行く旅程を選んだが、現地の人に言わせると、冬にこの行程は選ばないとのことであった。確かに越後湯沢の駅を出ると、いきなり廻りの風景は変わり、雪の中に潜っていた。

金沢駅を降りた時から曇天で風は冷たく、暖かな東京から来た身には、些か寒さが応えた。幸い駅からホテルまでの距離は短く、差ほど歩かなくて済んだが、突然パラパラと雨が降り出したのには驚いた。尤も、本日は会議が主体で、外に出る必要はないため問題にするほどのことは無いが、さて明日はどうなのかと明日の天気の方が気になった。

3月25日(日曜日)は朝から金沢市内を見学し、午後の汽車に乗る予定にしていたが、何たる不幸せ、霧雨のような雨が降っていた。それに寒さは昨日より酷く、思わず身震いをするほどであった。取り敢えず駅前から車に乗り、兼六園に向かった。

突然、運転士が
金沢-002「ここの人でなければ、近江町市場を見ながら行きますか」と声を掛けて来たので、
「ええいいですよと」返事はしたが何か見所があると云うことなのか。
「兼六園からの帰りに寄ってみるといいですよ、賑やかな所だから」とまで云ってくれた。「ありがとうございます、しかしこの天気じゃね、歩く元気も出ない」なんて失礼なことを申し上げていた。

右手に城左手に公園入口が見える所で車が止まり、
「偉く綺麗な城ですね」と申し上げた所、
「塀だけが復元された」と妙なお言葉を伺った。今回は城を見る予定にはなっていないので、
「ああそうなんですか」で終わったが、後で調べたところ、『金沢城公園の新しいシンボル、新しく復元された菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓』という紹介がされていた。

早速、兼六園に入ったが、何しろ“降りみ降らずみ”のなか片手に傘、片手にカメラでは落ち着かないことこの上ない。何しろ雨と風、挙げ句の果てに霰まで降り出す始末で、庭の梅の木も花金沢-003を付けているのは、ほんの僅かばかりという体たらくである。

兼六園は、江戸時代の代表的な林泉廻遊式庭園である。金沢城に面した傾斜地に五代藩主綱紀が延宝四年(1676年)、別荘「蓮池御亭」を建て、その周辺を作庭した。これが兼六本園の始まりで、当時、蓮池庭と呼ばれていたという。宝暦九年(1759年)の金沢大火で、蓮池庭も大半が焼失した。十一代藩主・治脩(ハルナガ)が復興に取り組み、安永三年(1774年)に現在に見られる夕顔亭や翠滝を築造している。

東南の平坦地である千歳台一帯は、7人の家臣の屋敷があったり、藩校が建てられるなどの変遷があったが、文政五年(1822)には十二代藩主・斉脩(ナリナガ)の豪壮な隠居所、竹沢御殿が完成している。その庭には辰巳用水を取り入れて曲水をつくり、各種の石橋を架けた。竹沢御殿の完成した年に、斉広(ナリナガ)は、奥州白河藩主・白河楽翁に庭園の命名を依頼した。楽翁は中国宗時代の詩人李格非の書いた洛陽名園記の文中から取って宏大・幽邃、人力・蒼古、水泉・眺望のを兼備するという意味で『兼六園』と命名したとされている。

兼六園は林泉廻遊式庭園の要素を取り入れながら、様々な時代の庭園手法を駆使して総合的につくられた庭園だとされる。廻遊式とは、寺の方丈や御殿の書院から見て楽しむ座観式金沢-004の庭園ではなく、土地の広さを最大限に活かし、庭のなかに大きな池を掘り、築山を築き、御亭(おちん)や茶屋を点在させ、それらに立ち寄りながら全体を遊覧できる庭園であると説明されている。幾つもの池と、それを結ぶ曲水があり、掘りあげた土で山を築き、多彩な樹木を植栽しているので「築山・林泉・廻遊式庭園」とも言われている。

兼六園を見たことで、日本三名園といわれる岡山の後楽園、水戸の偕楽園、金沢の兼六園の全てを見たことになるが、天気のせいで一番印象が悪かったが、季候のいい時に再度訪問して印象を変えないと、金沢県民に失礼かもしれない。ただ、時雨亭にあげて戴いて、御茶を頂けたのは感謝。何せ膝が悪くて正座が出来ない。それでもいいですかねと尋ねたところ、結構ですよと云う。他の方達は皆さん正座をされていたが、一人だけ膝を崩していたのは些か格好の悪い話。

兼六園の随身坂に至る道から金沢神社という案内が見えたので、一瞬公園を出て覗くかと思ったが、雰囲気から神官がいない可能性があると判断し、覗くのを止めてしまった。その代わり真弓坂口からでて、広坂を渡り直ぐの所にある石浦神社に行ったが、残念ながら“初宮参り”の神事が行われており、神主以下忙しそうなので、御朱印は御願いせず、次の神社を目指した。

金沢-005次の目的地は尾山神社で、兼六園から百万石通りを歩いて目的地まで辿り着いた。
現在の尾山神社は、明治四年(1871)の廃藩で、藩主前田家が華族として東京に移ることになったときに、元重臣の前田直信を代表とする旧藩士たちが、藩祖の偉功を守ることを希望し、さびれていた旧社殿を再興する運動を起こした。
新たな社殿は、旧社殿のあった卯辰山麓ではなく、金沢の中心部金沢城の出丸金谷御殿跡地が選ばれ、明治六年(1873)に本殿、拝殿が建てられたという。卯辰八幡宮から御神体が遷座されて尾山神社と命名されたという。

明治八年(1875)建立の神門は、三層のアーチ型楼門で、屋根には日本最古といわれる避雷針、最上階の三層目の窓にはステンドグラスがはめ込まれている。夜には灯りが点され、その灯りは海をゆく船からも見え、灯台がわりにもなったとの説明がされている。神門のデザインは、現在では斬新と評されるが、創建時は「醜悪」と言われて不評だったとされる。不評の声は昭和十年(1935)に価値が認められて国宝(現在は重要文化財)に指定されるまで続いたそうである。因みに神門の設計は加賀藩の大工だった津田吉之助と紹介されている。

拝殿の右側の神苑にはアーチ型石橋の図月橋(とげつきょう)があり、また、裏門にあたる東神門は、金沢城の二の丸殿舎にあった唐門を移したもので、旧金沢城の現存する建造物とし金沢-006金沢-007て貴重なものとなっているという。現在の尾山神社は、平成十年(1998)に、利家の妻まつも合祀され、金沢の総鎮守的な神社として親しまれているという。

境内には前田利家の銅造が建立されている。利家は最初小姓として織田信長に仕え、青年時代は赤母衣衆として信長に従軍、槍の名手だった故「槍の又左」の異名をもって怖れられたとされる。その後柴田勝家の与力として、北陸方面部隊の一員として各地を転戦。信長より能登一国23万石を拝領し大名となる。

利家の銅造が背負っている母衣(ホロ)は、元来は平安時代末期に生まれた懸保侶(かけぼろ)という補助防具であるという。背中に長い布をたわませたもので、馬を駆けると風をはらんでふくらみ、背後に長く引いて背面からの流れ矢を防ぐ役割を果たすので、大鎧とともに馬を駆り弓を主武器とする、当時の武士の戦闘法に適していたというが、風で膨らんでしまったら走り難いことこの上ないのではないか。絶対後ろに引っ張られる。最もこの当時の馬は、サラブレッドやアラブ系の現在のスピードのある馬とは違い、日本産の小型の馬で、それほどスピードは速くなかったのではないかと思われる。騎馬戦闘が廃れた室町時代の頃から、内部に竹などで編んだカゴを入れることで。常にふくらんだ形状を維持した装飾具に変化し、指物の一種となったとされている。馬上に母衣付きの武士が騎乗している像は、初めて見せてもらった。
本日の総歩行数10,334歩。

                 (2012.6.22.)

「ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)の感染防御」

火曜日, 9月 4th, 2012
感染症分類

4類感染症・全数[ウエストナイル熱患者を診断した医師は、直ちに指定の届出様式により最寄りの保健所に届け出る]。

一般的性状

ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)は、フラビウイルス科フラビウイルス(Flavivirus)属に属する。日本脳炎ウイルスやセントルイス脳炎ウイルスに近い。野生・飼育の鳥類に感染するが、時に哺乳類にも感染し、馬科では時に脳炎を起こす。人でも発病する。下水道から集めてプールした蚊からWest Nile Virusが分離されると共に、河畔で死亡していたカラスが見つかるようになり脳・腎臓・肝臓等からWest Nile Virusが分離された。またカラス以外にblue jay(青カケス)、Red tail hawk等も感染して死亡している。

1999年10月19日West Nile Virus感染症による馬の死亡が報告された。輸液療法や抗炎症薬の投与など対症療法が行われている。ウイルスの感染経路は不明な点が多いが、感染した鳥を吸血した蚊を媒介して馬に感染したと考えられる。2001年8月1日USDA(米国農務省)は、West Nile Virus感染症不活化ワクチン(動物用 Fort Dodge Animal Health社)に対する条件付きの認可を与えた。

小型球形のウイルス。envelopeを持ち、核酸は1本鎖RNAである。節足動物媒介性ウイルスである。蚊が主な媒介者(vector)であるが、単にウイルスを運ぶのではなく、自己の体内でウイルスの増殖を許すが、自身は発病せずウイルスを持ち続ける。

棲息部位

アフリカ(ウガンダ、コンゴ、中央アフリカ、マダガスカル、ケニア、エジプト)、地中海沿岸(仏蘭西のカマルグ地方)、印度等の極めて広い地域に分布している。

West Nile Virusの感染環は、Culex(イエカ)-鳥のサイクルで維持される。鳥以外の中間宿主としてコウモリも考えられている。ダニにも感染するが、ダニが媒介するとする確証はない。

病原性・感染経路

主としてCulex(イエカ)の吸血により感染する。Culex(イエカ)の中でもアフリカや中東においてはCulex univittatusとCulex pipiens molestusが、アジアにおいてはCulex tritaeniorhynchus(コガタアカイエカ)が主要な媒介蚊である。温帯地域ではウエストナイル熱・脳炎が発生するのは夏の後半から初秋にかけてである。

[註1]米疾病対策センター(CDC)は、2002年9月19日、同国で過去3年間に感染が広がり、多数の死者が出ているウエストナイル熱について、『輸血や臓器移植を介して感染』することが確認されたと発表した。ウエストナイル熱のウイルスには、蚊を通してのみ感染するとこれまで考えられていた[読売新聞,第45429号,2002.9.20.]。

[註2]米疾病対策センター(CDC)は2002年9月27日、全米で猛威をふるうWest Nile Virusに感染した女性の母乳から、ウイルスの痕跡が見つかったと発表した。母乳中での発見は初めて。CDCでは母子感染の危険性を考慮、更に詳しい調査を続けるという。この女性はミシガン州在住で、今月2日に出産。直後に発熱などの症状がでて、感染を確認。母乳中から、ウイルスの遺伝子の断片が見つかった。女性は2週間子供に母乳を与えたが、子供の感染は今のところ確認されていない。原因ははっきりしないが、出産後に受けた輸血の提供者が、同ウイルスに感染していたことが判明しており、ウイルスが混入していた可能性があるという[読売新聞,第45437号,2002.9.28.]。

潜伏期間:5-15日

通常ヒトでは不顕性感染あるいは発病しても短期間内に回復するが、高齢者では重篤な脳炎症状を示し、死亡することもある。発症した場合、次の病態がみられる。

通常型:急激な熱性感染として発症し、頭痛、背部痛、眩暈、発汗。ときに猩紅熱様発疹(約半数の症例で認められる)、リンパ節腫大、口峡炎を合併する。患者は第3-7病日に解熱し、短期間に回復する。発熱は二峰性を示すこともある。

脳炎型:重篤である。高齢者によく見られる。中央アフリカでは劇症肝炎を併発した症例が報告されている。また心筋炎、膵炎の併発例も報告されている。

治療 West Nile Virusを対象とした、特定の治療法は報告されていない。
感染防御

*抵抗性:envelopeを保有するウイルスは、エーテル、クロロホルム、石鹸などの脂質溶解薬で処理すると感染性が著しく低下する。

?蚊の活動(吸血)時間帯は、昼間ではなく、日暮れから朝方にかけてであり、特に日暮れから数時間は最も活動が活発になるので、この時間帯の戸外での活動を回避する。?蚊は明るい色を嫌うので、服の色は明るいものとし、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出部は少なくする。?虫除けスプレーを使用する。?夜間は窓を閉めるか又は網戸で蚊の侵入を防ぐ。蚊帳を吊るのも効果的である。?住居の内外で水が溜まる場所・物(プール、鳥の水入れ、空き缶、空き瓶等)を取り除き、ボウフラの繁殖場所をなくす。?昼間活動する別種の蚊の関与も想定されており、これらの蚊は藪等にいるので、昼間でもこの様な場所は避ける。

ヒトからヒト、馬から馬への水平伝播はないと報告されている。

滅菌・消毒

West Nile Virusを対象とした特別な消毒法は報告されていない。
-大部分のウイルスに効果を示す消毒法-
?煮沸消毒:98℃以上・15-20分間
?2w/v%-グルタラール
?0.5%(5000ppm)-次亜塩素酸ナトリウム
?消毒用エタノール(76.9-81.4v/v%)
?70v/v%-イソプロパノール
?2.5w/v%-ポビドンヨード

1)山西弘一・他編:標準微生物学 第8版;医学書院,2002
2)West Nile Virus(西ナイルウイルス),2002.8.9.

3)米国における西ナイルウイルス感染症の発生に関する情報;軽防協ニュース速報 号外;http://www.equinst.go.jp/keibokyo-homepage/worldinfonews/News.extra.99.10.27.html,2002.8.9.
4)米国における西ナイルウイルス感染症の最新情報;軽防協ニュース速報 号外;http://www.equinst.go.jp/keibokyo-homepage/worldinfonews/News.extra.2002.5.15.html,2002.8.9.
5)ニューヨーク(アメリカ):ウエストナイル脳炎の発生;外務省・海外安全相談センター,2000.8.16.
6)ウエストナイルウイルス脳炎の最新情報(日本医師会);http://www.med.or.jp/kansen/terro/nail20020925.html,2002.10.8.
                                               

[015.11.WES:2002.10.7.古泉秀夫]
[2002.10.22.一部改訂]
  [2003.11.11.一部改訂]

「シンバスタチンと健康食品の相互作用」

日曜日, 9月 2nd, 2012

KW:相互作用・シンバスタチン・simvastatin・西洋弟切草・セイヨウオトギリソウ・セント・ジョーンズ・ワート・St.John’sWort

Q:シンバスタチンの添付文書中に西洋弟切草との相互作用は記載されていないが、報告例はあるか

A:simvastatin[リポバス錠5・10・20(MSD株式会社)] の薬効分類名はHMG-CoA還元酵素阻害剤及び高脂血症治療剤である。承認適応症は「高脂血症、家族性高コレステロール血症」である。

本剤の薬理作用について『simvastatinは吸収後、コレステロール合成の主要臓器である肝臓に選択的に分布し、活性型のオープンアシド体に加水分解される。オープンアシド体はコレステロール生合成系の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を特異的かつ拮抗的に阻害し、肝臓のLDL受容体活性を増強させることによって、血清総コレステロールを速やかにかつ強力に低下させる。』と報告されている。また本剤の代謝系について『主に肝代謝酵素チトクロームP4503A4 (CYP3A4) により代謝される』とする報告が見られる。

セント・ジョーンズ・ワート(St.John’sWort):ヨーロッパ・中央アジア原産オトギリソウ科植物の地上部由来エキスで、ヒペルフォリン、ヒペリジン等の含有成分がセロトニンの濃度を増加させることで、抗うつ作用を発揮するとされている。独逸では医薬品として承認されている。その他、精神鎮静効果、セロトニン増加作用等が報告されている。St.John’sWortの連用により肝臓・小腸の薬物代謝酵素、特にCYP3A4・CYP2C9・CYP2C19・CYP1A2・CYP2D6等の誘導が生じ、酵素量が増加することが明らかになっている。その結果、これらの薬物代謝酵素で代謝される薬物の血中濃度が低下する。

その意味では、simvastatinの服用時にSt.John’sWortを摂食した場合、simvastatinの効力が減弱する可能性があることは予測可能である。従って単なる健康食品であるSt.John’sWortを、simvastatin服用中の患者に摂食させることは回避すべきである。

1)リポバス錠添付文書,2011.10改訂
2)奥村勝彦・監修:一目で分かる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とマネジメント<改訂版>;フジメディカル出版,2007
3)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012

            (015.2.SIM:2012.7.4.古泉秀夫)

「語彙解釈について」

日曜日, 9月 2nd, 2012

KW:語彙解釈・UKPDS・HOT研究・JSH2009・糖尿病合併高血圧・ARB・代謝面影響・有害事象

Q:次の語彙について、お調べ戴きたい。臨床試験(UKPDS、HOT研究など)、JSH2009ガイドラインでは『糖尿病合併高血圧の降圧目標は心血管病のリスク低下を図る観点から、その外来血圧を130/80mmHg未満という厳格な血圧管理を行うことが求められている』、
2006年12月に本邦初の降圧薬合剤、ロサルタン/ヒドロクロロチアジド合剤、ARB/利尿薬合剤のその強力な降圧効果を示すメカニズムについては、サイアザイドが示す利尿作用後にレニン活性面、代謝面への影響はやはり拭い去れない。有害事象は全体の約3%に認め、合剤の継続を中止した。

A:質問の事項について調査した結果は次の通りである。

*UKPDS:United Kingdom Prospective Diabetes Studyは、『2型糖尿病を対象に、主として大血管合併症について厳格な血糖コントロールによる合併症抑制効果を検討すべく計画された研究』。

*HOT(Hypertension Optimal Treatment)研究:至適治療血圧値設定のために行われた研究。

*JSH2009ガイドライン:日本高血圧学会(Japanese Society of Hypertension:JSH)から出された高血圧治療のためのガイドライン2009年版のことである。

*糖尿病合併高血圧:厳格な降圧療法の達成には併用療法が必要となるが、糖尿病合併例等高リスクの患者ほど薬剤数が多くなる傾向があった。ARBと利尿薬の配合薬、ARBとCa拮抗薬の配合薬が使用可能になり、薬剤数を減らすことにより服薬アドヒアランスの向上が図られるという利便性が増した。但し、利尿薬との配合薬使用に際しては、代謝系への副作用に留意することが必要である。我が国の臨床試験で基礎薬とCa拮抗薬を使用し、利尿薬ないしARBを併用することが心血管イベントの抑制に適していることが報告されている。

*ロサルタン/ヒドロクロロチアジド合剤:プレミネント配合錠(MDS)。持続性ARB/利尿薬合薬。本剤はRAS(レニン・アンジオテンシン系)活性化状態で著明な降圧効果を示すロサルタンとRASを活性化させるヒドロクロロチアジドとの配合剤であるため、両成分の併用投与は各単剤投与に比較しより顕著な降圧効果を示すとする報告が見られる。
                  
*ARB:Angiotensin II Receptor Blocker。ARB型降圧薬。アンジオテンシンII受容体拮抗薬。第一選択薬として使用される。ACE阻害薬同様、心保護、腎保護作用があり、副作用が少ないと報告されている。

*サイアザイドが示す利尿作用後にレニン活性面、代謝面への影響:本人又は両親、兄弟に痛風、糖尿病のある患者、及び高尿酸血症のある患者[高尿酸血症、高血糖症を来し、痛風、糖尿病の悪化や顕性化のおそれがある]。腎機能障害、コントロール不良の糖尿病等により血清カリウム値が高くなりやすい患者では、高カリウム血症が発現するおそれがあるので、血清カリウム値のモニタリングを定期的に実施し、観察を十分に行う。本剤の成分であるヒドロクロロチアジドは血糖値上昇若しくは糖尿病顕性化のおそれがあるので、観察を十分に行うこと等の報告がされている。

*有害事象は全体の約3%に認め、合剤の継続を中止:重篤な副作用として次の副作用が報告されている。
1.アナフィラキシー様症状。2. 血管浮腫(顔面、口唇、咽頭、舌等の腫脹)。3. 急性肝炎又は劇症肝炎。4. 急性腎不全。5. ショック、失神、意識消失。6. 横紋筋融解症。7. 低カリウム血症、高カリウム血症。8. 不整脈(心室性期外収縮、心房細動等)。9.汎血球減少、白血球減少、血小板減少。10. 再生不良性貧血、溶血性貧血。11. 壊死性血管炎。12. 間質性肺炎、肺水腫。13. 全身性エリテマトーデスの悪化。14. 低血糖 (糖尿病治療中の患者であらわれやすい) 。15. 低ナトリウム血症(倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐、意識障害等を伴う低ナトリウム血症)。

1)松岡博昭:高血圧の診断と治療[III]高血圧治療のupdate-4.降圧目標と治療効果;第118回日本医学会シンポジウム,2000.12.
2)プレミネント配合錠添付文書,2011.1.
3)高久史麿・他編:治療薬マニュアル2012;医学書院,2012

     [615.8.UKP:2012.4.14.古泉秀夫]