『岩煙草なるもの』
日曜日, 8月 19th, 2012鬼城竜生
最初にイワタバコを見たのは、御嶽山の参道にある茶店の窓の外、植木鉢に植えられていたものである。但し、花は咲いていなかった。次にイワタバコを見たのは、北鎌倉駅から4-5分のところにある松岡山東慶寺の境内であった。この時も右側の崖一面に密集する葉を見ただけだったが、花は六月にならないと咲かないといわれた。特に六月の初旬から中旬ということで、昨年から六月になったら花の写真を撮りに行くと決めていた。
6月13日(水曜日)梅雨の晴れ間を狙って北鎌倉を目指した。京浜急行で横浜駅迄行き、横浜駅で横須賀線に乗り換え、北鎌倉駅で下車。駅の右手の改札口、建長寺とは反対側の鎌倉街道側に出る。今回は、朝飯を食っていないので、駅を出て直ぐの所にある蕎麦屋“やも本”で、朝昼兼用の蕎麦を食うことにした。何時も蕎麦屋では天ざるを頼むのだが、天麩羅ネタが切れたということで山かけざる蕎麦を頼んだ。この蕎麦屋で喰うのは二度目だが、この様な観光地にしては、そこそこの蕎麦を食わせていると思うが、驚くほどではないという、微妙な位置を保っている。
所で東慶寺の境内には色々の花が咲いていたが、イワタバコの花も咲いていた。あまり派手な花ではないが、それなりに綺麗な花だと思う。イワタバコはいわたばこ科イワタバコ属の植物である。学名:Conandron ramondioides Sieb.et Zucc.。岩壁に生え、葉が煙草の葉に似ているので岩煙草という。本州から沖縄及び台湾の山地の谷間の湿った岩壁に生える多年草。葉は10-30cm、翼のある柄を持ち数枚を根生、軟らかい。冬は堅く丸まって径1-2cmになって越冬する。花は6-8月、長さ6-12cmの花茎を出し散形花序、花冠は1.5cm位。葉は苦味強く胃腸薬に用いる。萼は5深裂、雄蕊5。別名:イワヂシャ(岩萵苣)。
イワタバコの花を撮りに行った東慶寺で、珍しい花を紹介された。本堂の裏の岩壁に咲いている花で、普段は眼に触れることがないものだが、この時期だけ本堂の回廊に泥除けを敷き、時間を区切って公開しているようである。その謎の植物の名前は『岩がらみ』である。これも東慶寺での見頃は6月初旬から中旬とされている。
イワガラミは“ゆきのした科イワガラミ属”の植物。学名:Schizophragma hydrangeoides Sieb.et Zucc.、気根で岩に絡みつくことからこの名がある。北海道、本州、四国、九州及び鬱陵島の山地の林内に生える落葉つる性植物。茎から気根を出し、岩や木によじ登る。大きいもので茎8cm、樹皮は厚い。葉は対生、細長い柄を持ち長さ7cm位。花は7月、枝先に平たい集散花序をつける。花弁5、雄蕊10。花序の周囲に装飾花が数個あり、1個の白い萼片が花弁状に広がる。別名:岩絡み。
イワタバコの花を初めて見ることができ、写真を撮ることが出来たが、花のアップの写真は見事に失敗した。カメラを買い換えたのはいいが、そのカメラの使用法に慣れていないという弱点を露呈したと云うことである。何時もそうだが、カメラの説明書はカタカナ語が氾濫しており、読んでいるうちに解らなくなってくるので、使いながら使用法に慣れればいいという対応の仕方をするので、時に訳の解らない操作を指示し、その解消が出来ずにシャッターボタンを押してしまい、ピンボケの写真が出来上がる。今回のイワタバコもそういうことで、ピントがずれていた。岩絡みの花については、岩絡みそのものを初めて見たため、小型カメラで写すためにはどう処理すればいいのか迷っているうちに、行列につれて押し出されてしまった。
東慶寺の門前にある喫茶吉野で珈琲を飲み、しばらく休憩した後、近くにある福源山明月院に寄ることにした。ここは紫陽花の花で有名なお寺で、先日もテレビで青いアジサイの色に明月院ブルーというのがあると紹介していたが、今回はまだ少し速すぎたようである。後2-3日過ぎればいい色になると思われた。
自然相手の写真は、しみじみ難しいと思わされるが、単発で絶好のタイミングを選ぶのは至難のことなのかもしれない。まあ、行った時にドンピシャで喜んでいる当たりが素人のいいところかもしれない。
所で今回の総歩行数、残念ながら8,828歩で、一万歩は超えなかった。
1)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 I;北?館,2003
2)牧野富太郎: 原色牧野日本植物図鑑 II;北?館,2000
(2012.6.23.)