「どくだみの副作用-肝障害の発現機序」
水曜日, 8月 1st, 2012KW:副作用・どくだみ・ドクダミ・
KW:副作用・どくだみ・ドクダミ・
KW:薬名検索・BG・ブチレングリコール・butylene glycol・ブタンジオール・butanediol・保湿剤・化粧品等原料・107-88-0・接触性皮膚炎
Q:化粧品に配合されているBGについて
A:BGの略号で記載される成分について、合成溶剤、品質保持とする製品説明文書が見られる。ブチレングリコール[butylene glycol=ブタンジオール]。butanediol。別名:ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール。C4H10O2=90.1。butaneの二価アルコールで水酸基の位置により4種類の異性体がある。エチレングリコール系(E.O系)エーテルである。異物のない無色透明の液体。かなりの種類の化粧品に保湿剤として使用されている。CAS番号:107-88-0。
(1)1,4-ブタンジオール[HO(CH2)4OH]。アセチレンとホルムアルデヒドからレッペ反応により得られるブチンジオールを接触還元する。融点19℃、沸点235℃。テトラヒドロフランやγ-ブチロラクトンの原料。
(2)2,3-ブタンジオール[CH3(CHOH)2CH3]。DL、D、L、メソ形の4種類があり、ジアセチルの還元によりD、L形が、trans-2,3-エポキシブタンの加水分解や細菌による醗酵ではメソ形が生成する。
凍結防止剤、浸潤剤、軟化剤に用いられる。脱水によりブタジエンが生成する。
(3)1,2-及び1,3-ブタンジオール。いずれも甘味のある液体で、1個の不斉炭素を持つ。
用途:ポリエステル可塑剤、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アルキッド樹脂、高沸点溶剤、保湿剤、化粧品等の原料。
その他、接触性皮膚炎の原因となる基剤、保湿剤、防腐剤が挙げられており、基剤では、ラノリン、セタノール、亜硫酸ナトリウム、防腐剤ではパラベンが多数の外用剤に含まれており、接触皮膚炎の頻度も高い。また保湿成分であるプロピレングリコールや1,3ブチレングリコールも稀ではあるが接触皮膚炎の報告が増えている。点眼薬では、基剤のε‐アミノカプロン酸や防腐剤の塩化ベンザルコニウムの報告が多いとする報告も見られる。
1)志田正二・編集代表:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1985
2)厚生労働省:重篤副作用疾患別マニュアル-薬剤による接触皮膚炎;平成22年3月
[011.1.BG:2012.3.1.古泉秀夫]
KW:中毒・毒性・ウツボ・毒性・Ciguatera・シガテラ・渦鞭毛藻・Gambierdiscus toxicus・ウズベンモウソウ・シガトキシン・cigauatoxin・マイトトキシン・maitotoxin・マリントキシン・marintoxin
Q:伊豆のウツボ(Gymnothorax Kidako)にシガテラ毒は存在するか。またシガテラ毒の確認方法は
A:本来シガテラ(Ciguatera)はカリブ海でシガ(cigua)と呼ばれるニシキウズガイ科の巻貝(和名:チャウダーガイ、Cittarium pica)に起因する食中毒のことであったが、その後カリブ海で漁獲された魚貝類による食中毒をいうようになり、現在ではカリブ海に限定したものではなく、熱帯及び亜熱帯海域の主として珊瑚礁周辺に棲む魚貝類によって起こる低死亡率の食中毒の総称とされている。
ただし、複数のシガテラ毒素が単離され、構造が明らかにされたことからシガテラ毒素による食中毒と定義付けするとする意見も見られる。
ciguateraは南北回帰線に挟まれた広い海域(カリブ海、太平洋、インド洋)で発生し、世界中で年間2万人を超える人が中毒していると推定されている。日本では南西諸島が中毒海域に当てはまり、沖縄県、奄美大島、南鳥島、小笠原、伊豆七島等での中毒事例が多い。ciguateraを起こす魚貝類は300種又は500種ともいわれるが、毒化には地域差、個体差がある。特に問題になるのは、ウツボ科の毒ウツボ(Gymnothorax javanicus)、カマス科のオニカマス(Sphyraena picuda、毒カマス)、スズキ科のマダラハタ(Epinephelus microdon)、バラハタ(Variola loiti)、フェダイ科のイッテンフエダイ(Lutjanus monostima)、バラフエダイ(Lutjanus bohar)、ニダザイ科のサザナミハギ(Ctenochaetus striatus)を始めとして約20種程度とされており、食物連鎖により毒化する。このうち中毒が多いのはバラフエダイで、変わったところではカンパチやヒラマサでも中毒は起こった事例が報告されている。
有毒部位は肝臓やその他の内臓部だけではなく、筋肉にも毒性があることがあり、ciguatera中毒の多い原因の一つとされている。
ciguatera毒素は渦鞭毛藻(Gambierdiscus toxicus:ウズベンモウソウ)のプランクトンからシガトキシン(cigauatoxin)、マイトトキシン(maitotoxin)として単離され、脂溶性の毒素としてcigauatoxinが、水溶性の毒素としてmaitotoxinが存在する。cigauatoxinは分子内に多くのエーテル結合を有するポリエーテル化合物である。分子式C60H86O19=1,110。毒性は極めて強力でマウス(腹腔内投与)LD50=0.45μg/kgである。cigauatoxinは加熱調理では無毒化できない。
ウツボ
標記名 | 通称名 | 摂食部位 | 症状 |
Lycodontis javanicus | moray eel | 肝臓 | Ciguatera中毒 |
Gymnothorax javanicus | ドクウツボ | Ciguatera中毒 | |
Gymnothorax kiodako | ウツボ | 内臓以外の身 | 無毒 |
原則的にいえば、ウツボ(Gymnothorax kiodako)に関する限りciguatera毒素による毒化は報告されていない。また、ウツボの摂食は関東近県では千葉県沿岸部の一部でも干物としての摂食習慣が報告されている。従って『ウツボ』は無毒であるといえるが、ウツボ料理として一般に提供するということであれば、食習慣のない地域のウツボは、念のためciguatera毒素の検査をすることが無難である。
魚貝類の毒化の特徴、検査法については、以下の報告を参照されたい。
1.Marintoxinの特徴
Marintoxinに関する主な特徴
(1)魚種、棲息地域により毒性が異なる
日本近海には約30種のフグが棲息しているが、フグの種類や棲息場所によって毒力に差がみられる。例えば、岩手県越喜来湾、釜石湾及び宮城県雄勝湾のコモンフグ、ヒガンフグは、他の地域のものと異なり筋肉の毒力が強く、食用が禁止されている。
(2)筋肉、肝臓、卵巣等器官ごとに毒力が異なる
フグは同一種でも、器官ごとに毒力に差がみられる。肝臓、卵巣等内蔵は毒性が強く、全種で食用が禁じられている。食用にできるのは、筋肉については22種、皮は11種、精巣は18種のフグに限定されている。
(3)毒は耐熱性であるものが多い
フグ毒、下痢性貝毒、麻痺性貝毒、最近新聞紙上を賑わせたアオブダイの毒等は耐熱性で、通常の加熱調理では毒は失活しない。また、フグ毒は非水溶性である。
(4)食物連鎖により毒化するものが多い
魚介類の毒化原因は、有毒鞭毛藻類のプランクトンであることが多く、シガテラや下痢性貝毒、麻痺性貝毒はこれにあたる。巻貝のバイの毒は細菌 (Coryneform)が毒化の原因となっている。フグ毒についても、細菌が毒の第一次生産者とする報告が数多くなされている。
2.Marintoxinによる食中毒事件の解明
中毒の原因解明には、患者の臨床症状、喫食調査(魚介類の種およびその部位)、流通経路調査(産地)並びに摂食残品からのMarintoxinの検出が重要である。摂食残品が得られない場合は、流通経路調査により、同一ロットの入手に努め、毒を検出する必要がある。摂食残品や調理残品が得られない場合もあるが、フグ中毒では、患者の吐物、尿からの毒の検出が有効である。
3.診断、治療
Marintoxinの種類によって臨床症状は異なるが、胃腸障害、神経症状、皮膚症状等が主で、シガテラのように、複数の毒が存在する場合は症状も複雑である。下痢、嘔吐を臨床所見とするものについては鑑別診断が困難なため、喫食調査や調理・摂食残品等からの毒の検出が重要となる。
治療法としては胃洗浄が効果的であるが、フグ中毒の場合には、胃洗浄に加えて、利尿薬の投与や人工呼吸が有効とされている。その他のものについても、症状に合わせた治療法が行われている。
Marintoxinは魚介類の特定の器官に存在するので、当該部位をターゲットとして、検査を実施することが重要である。Marintoxinの検査法は、毒抽出液をマウス腹腔内に接種し、定量する方法(マウス試験法)、抽出試料の精製後、蛍光検出器や紫外分光光度計を装着した高速液体クロマトグラフ装置を用いて定量する方法(HPLC法)、HPLCと質量分析計との組合せによる定量法(LC-MS法)がある。しかし、このような検査法では、煩雑な操作と熟練を要し、結果が出るまでかなりの時間と費用が必要である。簡易検査法の研究がされており実用化されたものとして、下痢性貝毒の成分であるオカダ酸群化合物の ELISA法(米国特許取得)、テトロドトキシンのELISA法などがあるとする報告がみられる。
4.予防対策
フグ中毒は、素人調理による有毒部位の摂食や、魚介類販売店・飲食店が客の求めに応じて肝臓等を提供することが原因になることが多い。貝類については、生産地において毒化モニタリング等の実施により、毒化したものが出荷されることのないよう十分な対策が必要で、輸入魚介類の種類と量が共に増加する傾向にあり、当該食品の監視強化が望まれている。
ciguatera毒素については、簡易検査法の研究がされているようであるが、到達段階の詳細は不明である。いずれにしろ素人が出した結論では、安全性の保証にはならないので、専門機関に調査を依頼することが必要である。
1)塩見一雄・他:海洋動物の毒-フグからイソギンチャクまで-;成山堂書店,1997
2)新村壽夫・編:食品衛生学 第2版;愛智出版,2004
3)Anthony T.Tu,:中毒学概論-毒の科学-;薬業時報社,1999
4)奥村 収・他:日本の海水魚;山と渓谷社,1997
5)濱野 米一(大阪府立公衆衛生研究所):魚介類の自然毒による食中毒;公衛研ニュースNo.4,1998年6月25日
その他、関連情報として、次の文書が発出されている。
食安監発第0413003号
平成16年4月13日
都道府県
各保健所設置市衛生主管部(局)長 殿
特別区
厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長
麻痺性貝毒による二枚貝等の捕食生物の毒化について
貝類の貝毒については、昭和55年7月1日付け環乳第29号「麻痺性貝毒等により毒化した貝類の取扱いについて」及び昭和56年8月11日付け環乳第62号「毒化した貝類の流通防止について」等、従来から様々の対策の推進につき御配慮いただいているところですが、今般、別添のとおり、農林水産省の研究事業(研究事業名:「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」)において、検体として採取された複数のトゲクリガニの肝膵臓から、貝類の規制値である4MU/gを超える麻痺性貝毒が検出され、また、その毒化の機構として、麻痺性貝毒をもつ二枚貝をトゲクリガニが捕食することに起因することが示唆されました。
トゲクリガニに含まれる麻痺性貝毒に起因する食中毒事例はこれまで報告されていませんが、麻痺性貝毒による毒化が発生した海域周辺で採捕される二枚貝等の捕食生物についても注意を要すると考えられることから、今後は、下記のとおり取り扱うようよろしくお願いします。
なお、本件については、農林水産省と協議済みであるので念のため申し添えます。
記
1 二枚貝等において麻痺性貝毒による毒化が確認された海域を管轄する都道府県等においては、水産部局とも連携し、ヒトの食用に供する二枚貝等の捕食生物について、麻痺性貝毒に係る毒化実態の調査を積極的に実施すること。
2 上記1の調査における麻痺性貝毒の検査法は、昭和55年7月1日付け環乳第30号「貝毒の検査法等について」に定める麻痺性貝毒検査法によること。
3 上記検査の結果、二枚貝等の捕食生物において、その肝膵臓または付属肢筋肉等を含む可食部1g当たりの麻痺性貝毒の毒量が4MU(マウスユニット)を超える場合にあっては、食品衛生法第6条第2号の規定に違反するものとして取り扱うこと。
4 上記検査の結果、食品衛生法違反が判明した場合については、当課あて速やかに連絡されたい。
(別添)
(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業報告書要約)
大課題名:現場即応型貝毒検出技術と安全な貝毒モニタリング体制の開発
中課題名:生息環境に基づく二枚貝等の毒化予知技術の高度化
小課題名:二枚貝捕食者における貝毒成分の蓄積とその動態解明
担当機関:中央水産研究所
参考資料1 トゲクリガニ
参考資料2 主な生息地及び流通実態等について
[63.099.CIG:2005.3.28.古泉秀夫]