Archive for 7月, 2012

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「蛙の面に小便」

日曜日, 7月 8th, 2012

     魍魎亭主人

民主党の鳩山由紀夫元首相が、消費増税関連法案の衆院採決での対応について「棄権は国民に自分自身を正直に伝えない。きちんとした対応を取らないといけない」と述べ、反対票を投じる意向を表明したという報道がされていた。事実、彼はその通り投票した。

彼の理屈から言えば、4年間は消費税を上げないといって政権を取ったということだろうが、大体その公約の根拠は何処にあったのか。永年政権の座に就いていた自民党でさえ、消費税の導入を云わざるを得ない状況の中で、単に政権を取るための目眩ましだったのではないか。第一、鳩山氏は後先の見境無しに適当なことを発言する性癖があるようで、沖縄の基地問題では、沖縄県内には代替地を置かないような発言をし、結局はただ云ってみただけということで終わってしまった。普通ならこの段階で、恥じ入らなければならないにも拘わらず、今回も反対票を投ずると公言している。

しかし、中途半端とは云え、一国の総理大臣までお勤めになったお方が、国の借金まみれの現状について、全く気がついていないとは云わせない。また鳩山総理の時の幹事長だった小沢氏も消費税の導入前にやることがあると頻りに発言しているが、やることに関する具体的な提示は一つもない。2009年の衆議院選挙時の政権公約(マニフェスト)の実効を暗に指しているようであるが、このマニフェストの中身を最初に反故にしたのは当時の幹事長であった小沢氏自身であり、殆ど実行できないことが解っているため具体的な事例を挙げようとしていないと思われる。小沢派といわれる人達も、消費税反対、原子力発電所反対ということで、票を掠め取ろうと云う、御自身の選挙のことを考えているだけで、国をどうするかという政治家としての基本が欠けているのではないか。

さて、小沢さんが民主党を割って出るという情報がTVを賑わせている。新党を創るということで、消費税反対・脱原発で、国民の思いに答えたいと云っているが、果たしてどうか。消費税については順番の問題と云っているだけで揚げないとは一言も云っていない。更に脱原発と云って見たところで、もし彼が本当に国のことを考える政治家であれば、今直ぐに原発を止められないことは十分に解っているはずである。つまり今回もまた、耳に心地よい大衆迎合的なスローガンを打ち立てて、選挙で票を掠め取ろうとしているだけではないか。マニフェストと同様で、実行不可能な綺麗事並べているだけではないのか。

民主党にしては珍しく彼らの処分を早々に決めたが、速いところスッキリした方がいい。鳩山氏はTVに出てきて、またぞろ党の一体化に努力すべき所、野田首相が暴走したなどと発言している。一度は党首となり総理となった立場である。もっと正確な状況判断をした方がいいと思うが、この方も世間の常識は通用しないようである。しかし、小沢さんの取り巻き。何人かはとても付いていけないということで、脱落したが、残りの人達は、彼に付いていくことで選挙に勝てると本気で思っているのか。速いところ脱退を取り消して元に戻ることを検討した方がいい。今度だけは選挙上手と云われる小沢さんも、付き従う多くの人を当選させるだけの手品は使えないのではないか。

最も元に戻ったからと云って、選挙に勝てるという保証はない。これだけ曖昧模糊とした対応を見せられると、国民は呆れ果てており、民主党の議員に票を入れようとは思わないのではないか。但し、それなら自民かと云うことになると、それも些か妖しい。国会の対応を見ていると、国民の生活を考えていると云うよりは、政局に血道を上げているとしか思えない。

民主党も自民党も、もう少し政策論争に主眼を置いたらどうか。国会議員は、国の将来をどうするのか、それぞれの考えがなければおかしい。ただ給料をもらうための仕事として、国会議員になっているのだとすれば、それこそ池しゃあしゃあ、蛙の面に小便と云われても仕方が無い。

    (2012.7.3.)

『紅葉の等々力渓谷』

木曜日, 7月 5th, 2012

等々力渓谷等々力-001という名前は、若い頃耳にしたことがあったが、何かの雑誌で、汚れ放題という話を聞いて、その後忘れてしまっていた。今回、何処か、紅葉の写真を撮りに行きたいなということで探していたが、都内・紅葉で検索したところ、等々力渓谷が引っかかった。そこで等々力渓谷に写真を撮りに行くことにしたが、何せ変な刷り込みが入っているから、写真が撮れるかどうか解らん等とぶつくさ言っていた所、かみさんが一緒に行くと云うことになった。

東急大井町線等々力駅で降り、ゴルフ橋入口の階段を降りると谷沢川沿いに散策路が整備されていた。ただ、道は濡れていたので滑るといかんと思いながら歩いていたが、靴底が確実に道を捉えてくれる靴を履いていたので、滑る心配はなかった。ただ、眼に見える範囲に眼を引く紅葉はなく、失敗したのかなと思って歩いていると、やがて紅葉が眼に付くようになってきた。

等々力不動尊の庭なのかどうか境界がはっきりしないが、不動尊の境内に紅葉が集中しているように見えた。不動の滝の前に“雪月花”という茶店があり、くず餅と御茶を貰うことにした。本当は酒があればコップ酒を一杯というところだが、酒は置いていなかった。茶店の横にある石段を上ると不動尊の境内に出る。境内に出る前、滝の横の階段の途中に役の行者の像が祀られている岩穴が見られる。

等々力不動尊は、平安時代末期に紀伊国・根来寺を開いた興教大師が霊夢に導かれて、この地に役小角自刻と伝わる不動明王像を安置したのが始まりという古刹で、正式には瀧轟山(りゅうごうざん)明王院という。等々力駅の北方にある真言宗智山派・致航山(ちこうざん)満願寺(1470年創建)の別院となっている。

境内に案内所があったので御朱印を御願いしたが、現在住職は定例十五日の護摩供養中で、暫くお待ち下さいということだった。本堂の前で待っていた所、中に入って御参りして下さいと等々力不動-002いうことだったので、恐る恐る入ってみると、将に護摩供養の最中で、見ると相当高齢な方だと思われたが、経を読む声は朗々と響いていた。護摩供養を目の前で見たのは初めての経験だったが、細長く切った薪木を炉に入れて燃やし(護摩焚き)、火の神が煙とともに供物を天上に運び、天の恩寵にあずかろうとする信仰から生まれたものとされる。兎に角迫力のある光景を見せて戴けて、かみさんと2人で感動していた。

その後、等々力不動の近くにある善養蜜寺に廻った。善養寺は京都東山の総本山智積院の末寺で影光山仏性院善養寺という名称が正しい名前のようである。その他、大毘廬遮那殿という名前も見られる。紹介によると本尊は大日如来坐像、開山は祐栄(ゆうえい)阿闍梨で慶安五年(1652年)七月二十六日に遷化しているとされる。

「新編武蔵風土記稿」の記述によると、昔深沢村からここに移され、鎮守野毛六所神社の神輿をいれる神輿堂や閻魔堂があったとされている。昭和三十六年四月奈良唐招提寺様式の金堂が建立されたとされる。また境内にあるカヤの大木は昭和三十九年に都の天然記念物に指定されている。

善養寺の縁起については、中興開基の祐榮大阿闍梨が深沢のお寺にいた頃。不動の滝で修行を行ったり、八幡古墳、稲荷古墳、御岳古墳などを巡り地域発展の祈願を行なっていたという。 真言宗智山派という宗派の本質的なことは解らないから、この寺院の境内におかれている種々の石像等について、宗派の約束事なのか、住職の等々力不動-003等々力不動-007趣味なのか解らないが、
参道の左右にそびえる石造の『かい駝』はまだしも、印度の寺院にあるような像までおかれているのは、些かやり過ぎではないかと思われたが、まあ、日本の宗教というのはおおらかに出来ているんだろうからいいのかもしれない。

続いて近くにある六所神社に廻った。六所神社は、世田谷区野毛にある神社で野毛六所神社とも云われている。この神社は元和年間(1615-1623)の洪水のとき、府中の方から流れてきたというので、土地の人は六所明神(現大国魂神社)と崇めて創建したといい、江戸時代には上下野毛村の鎮守社だったと云われている。明治三十一年に村内の末社天祖神社、山際神社、日枝神社、北野神社の4社を合祀したとされている。

祭神は伊弉諾尊(いざなぎ)、伊弉冉尊(いざなみ)、その他で、大山都見之命、大山咋之命、菅原道真を奉斎したとされる。なお、境内社は北野神社であるとする紹介もされている。別当は善養寺。

帰りは道に迷って、取り敢えず神社の横に出て大塚古墳の方に向かい、最終的に玉川ICから環八通りを暫く歩き、上野毛通りに入って東急大井町線の上野毛駅から電車に乗り、大井町駅で乗り換えて我が家に戻ってきた。2011年12月15日(木曜日)の総歩行数は13,012歩。結構歩いたと思っていたが、実際には歩数は伸びていなかった。

(2012.5.29.)

『エパデールのスイッチに拘る厚生労働省』

水曜日, 7月 4th, 2012

  魍魎亭主人

2012年6月7日に開催した厚生労働省の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会で結論を得るはずだった高脂血症治療薬「エパデール」(持田製薬)のスイッチOTC薬化の論議が、猛反対を続ける医師委員を説得できないまま、8月の部会に先送りされる状況になったという。安全性の問題から『医療機関で医師の管理下に置いて投与すべき』と猛反対する医師委員を説得し、翻意させるだけの新たな材料がないということで、関係学会の専門医を招請して説得してもらうという話もあるとされる。

所で厚生労働省は、エパデールのスイッチOTC薬化に何故それほど拘っているのか。

エパデールの成分名は“イコサペント酸エチル(ethyl icosapentate)”で、承認適応は『閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善及び高脂血症。』である。

作用機序として『EPAは消化管より吸収されたのち、全身の血管や臓器などの細胞膜のリン脂質に取り込まれ、その細胞機能に変化を与える。血管や白血球・血小板の細胞膜のなかでは、炎症性サイトカインなどの産生抑制により炎症を抑えたり、トロンボキサンA3(XAT3)、プロスタグランジンI3(PGI3)となり血小板凝集を抑えるなど、EPAはさまざまな細胞膜に取り込まれることにより、多彩な作用を発揮する。』

? 血清リポ蛋白に取り込まれ、リポ蛋白の代謝を促進する。
? 肝ミクロソームに取り込まれ、脂質の生合成・分泌を抑制する。
? 血小板膜リン脂質に取り込まれ、血小板凝集を抑制する。
? 血管壁に取り込まれ、内膜肥厚の抑制や動脈の弾力性を保持する。
? 白血球に取り込まれ、抗炎症作用や粘着能の低下
? 赤血球に取り込まれ、赤血球変形能を亢進する。
等の報告がされている。

また、投与禁忌として『出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)[止血が困難となるおそれがある。]』の記載がされている。

更に本剤を高脂血症に用いる場合には、次の点に十分留意することの注意が添付文書に記載されている。

(1) 適用の前に十分な検査を実施し、高脂血症であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。
(2) あらかじめ高脂血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法や高血圧・喫煙等の虚血性心疾患のリスクファクターの軽減等も十分に考慮すること。
(3) 投与中は血中脂質値を定期的に検査し、治療に対する反応が認められない場合には投与を中止すること。

本品の添付文書には『警告』もなければ、『重大な副作用』の記載も見られない。しかし、本品の投与は1-2週間で済むという話ではなく、長期の連用が必要である。また、血中脂質値を定期的に検査し、治療に反応が認められない場合、投与を中止することとされているが、OTC薬の場合定期的な検査は何処でやるのか。

更にエパデールカプセルの薬価は1Cap.48.10円、Sカプセルで1Cap.49.40円/300mgである。スイッチOTC薬は一体幾らの価格を付ける気なのか。1日3Cap.服用するとして、医療用医薬品の薬価は144.3円である。

1日144.3円×60日分=8,658円 健康保険2割負担で1731.6円。3割負担で2597.4円

1Cap.に直すと9.62円-14.43円。OTC薬にした場合、患者側にとって1Cap:9.62円-14.43円以下でなければ何のメリットもない。つまり誰も購入しないということである。病院に通院していれば定期的な検査を受けることが出来、医師に助言を求めることも出来る。副作用を疑う症状があれば、医師に伝えれば済む話である。しかし、OTC薬では薬剤師に相談し、必要があれば医師の診察を受けなければならない。

また、高脂血症の治療を要する患者では、その他の年齢から来る疾患に罹患していることが考えられる。その場合、本薬だけでの治療は困難である。

第一、長期慢性疾患の治療薬はOTC薬化に馴染まないのではないか。

薬はOTC薬、検査は病院等という器用な仕組みは我が国にはない。更に限りなく廉価に設定しなければ、病院通いをセルフメディケーションに切り替えることはしないだろう。セルフメディケーションは、治療をする側がある意味危険を背負い込むことなのである。そのためには眼に見えるそれなりの利益がなければ話にならない。

1)RISFAX,第6090号,2012.5.25.
2)エパデールカプセルインタビューフォーム,2012.6.
3)エパデールカプセル300,2012.6.

         (2012.6.23.)