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『HMG-CoA還元酵素阻害薬の物性と副作用』

金曜日, 6月 29th, 2012

 

KW:副作用・物性・HMG-CoA還元酵素阻害薬・atorvastatin・fluvastatin・pitavastatin・pravastatin・rosuvastatin・simvastatin

Q:HMG-CoA還元酵素阻害薬の溶解性により横紋筋融解症の発現に差が見られるのか

 

A:2010年現在、我国で市販されているHMG-CoA還元酵素阻害薬はatorvastatin calcium hydrate、fluvastatin sodium、pitavastatin calcium、pravastatin sodium、rosuvastatin calcium、simvastatinの6種類である。

薬品名 性状 腎排泄 t1/2
(hr)
CYP 相互作用 効力 横紋筋融解症*
atorvastatin
リピトール錠
(アステラス)
脂溶性 2% 9.44 3A4 +++
(GF-j*)
strong約30%低下作用 61件(2004)・45件(2005)
fluvastatin
ローコール錠
(ノバルティス)
脂溶性 5% 1.32 主に2C9 +++ standard約15%低下作用 17件(2004)
pitavastatin
リバロ錠(興和創薬)
脂溶性 <2% 11.6 殆ど無影響 ++ strong約30%低下作用  
pravastatin
メバロチン錠(第一三共)
水溶性 10.7-11.8%(未変化体) 2.7-2.5 無関係(酸化等) + strong
約30%低下作用
23件(2004)・26件(2005)
rosuvastatin
クレストール錠(アストラゼネカ)
水溶性 4.9% 20.2 代謝受け難い ++ strong
約30%低下作用
 
simvastatin
リポバス錠(MSD)
脂溶性 0.34-0.42% 2 主に3A4 +++ standard約15%低下作用 21件(2004)・16件(2005)

*医薬品医療機器総合機構-医薬品医療機器情報提供ホームページ,平成16年度・17年度副作用報告
*GF-j:grapefruit juice

HMG-CoA還元酵素阻害薬は、親水性が高いpravastatin・rosuvastatinの群と親油性の高いatorvastatin・fluvastatin・pitavastatin・simvastatinの群の2種類に区分させる。親油性のsimvastatinは活性のないラクトンプロドラッグとして経口投与され、体内でエステラーゼにより加水分解され、β-hydroxy acid(シンバスタチン酸)となって薬理学的に活性体になるが、他のHMG-CoA還元酵素阻害薬は、活性なラクトン開環型であるβ-hydroxy acidとして投与される。一方、親水性のpravastatin・rosuvastatinは、母体が活性体であり、水酸基側鎖で親水性を増している。

HMG-CoA還元酵素阻害薬は、臨床的及び実験的に筋細胞障害が知られており、親油性の程度と細胞障害の強さが相関することがL6筋芽細胞を用いた研究で明らかにされた。その他、新生仔ラット骨格筋を用いた検討で、親水性のpravastatinが、親油性のsimvastatinより筋毒性が少なく、明らかな差が認められたとする報告が見られる。

臨床的にも、親油性のHMG-CoA還元酵素阻害薬が、親水性のHMG-CoA還元酵素阻害薬より、横紋筋融解症の発症が多いことから組織障害の特異性や発症機序を考える上で、物理・化学的性質が重要と思われる。骨格筋でより高い濃度に達するHMG-CoA還元酵素阻害薬の方が、筋原性疾患を発現し易い傾向があり、肝臓又は骨格筋への分布の選択性も横紋筋融解症などの発現頻度に影響を与える可能性がある。

grapefruit juice飲用により作用増大(生物学的利用能)が見られる薬剤として、次のdataが報告されている。

HMG-CoA-02

 

 

 

 

 

 

 

CYP酵素系によって代謝される薬物の分解が阻害され、生物学的利用能と最高血漿濃度が予想以上に高値 [Friedrich M