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『ボイセンベリーについて』

木曜日, 6月 28th, 2012

 

KW:健康食品・ボイセンベリー・boysenberry・ボイズンベリー・中皮腫・抗酸化作用・アントシアノサイド・anthocyanosides・エラグ酸・ellagic acid

Q:新聞報道されていたボイセンベリーとはどのようなものか

A:ボイセンベリーについて、『米原産ボイセンベリー 中皮腫 抑制効果』[読売新聞,第47023号,2007.2.5.]とする記事が収載されていた。

相模女子大グループ(安達修一・相模女子大助教授:公衆衛生学)による実験の結果を受けたもので、『アスベスト10mgを腹部に注入したラット40匹のうち20匹にボイセンベリーの粉末を2%混ぜた餌を、残りのラットに通常の餌を与え、1年間観察した。その結果、通常の餌を与えたラットの14匹が中皮腫を発症したのに対し、ボイセンベリーのグループでは7匹にとどまった。1匹目の発症時期もボイセンベリーを与えた方が2カ月ほど遅かった。
ボイセンベリーは米国やニュージランドで生産され、そのまま食べたり、ジャムに加工されたりしている。中皮腫の発症には活性酸素が関係すると見られており、研究グループによるとポリフェノールの抗酸化作用が発症を抑止している可能性がある』とするものである。

ボイセンベリー(boysenberry)とは、ローガンベリー(Logan berry)とデューベリー(Dew berry)の交配種で、1935年にカリフォルニアにおいて交配種を作ったボイセン氏の命名による。匍匐性又はつる性で果実は大粒。

学名:Rubus sp.Hybrid“Boysen”(ルバス属雑種ボイセン)

別名:ボイズンベリー

*boysenberryの水分は85%程度、総糖分は8.5-14%で、blueberryとほぼ同程度である。有機酸(クエン酸、リンゴ酸と共に少量の琥珀酸)は2%程度であり、適度な酸度を持つ。boysenberryのCaや鉄分は、他の果実に比べ、またベリー類の中でも多く含まれている。また亜鉛やSeのような微量元素を含有している。

boysenberryの一般分析値(可食部100g当たり)

項目 数値
pH 3.0-3.5
酸度(クエン酸%) 0.9-1.8
固形分 8.8-11.2°Brix(ブリックス:果物の糖度の単位)
総糖分 8.4-14g
ブドウ糖 3.6g
果糖 3.7g
蔗糖 0.7g
有機酸 クエン酸、リンゴ酸と少量のコハク酸(クエン酸とリンゴ酸の総計2%)

栄養成分比較(可食部100g当たり)

項目 ボイセンベリー* ブルーベリー**
水分 85g 86.4g
エネルギー 43Cal 49Cal
蛋白質 1.1g 0.5g
全脂肪分 0.7g 0.1g
炭水化物 7.2g 9.6g
繊維分(非消化性) 3g 3.3g
全糖分 7.1g ?
澱粉 0.2g ?
飽和脂肪酸 trace ?
低級不飽和脂肪酸 0.1g ?
高級不飽和脂肪酸 0.1g ?
コレステロール 0 0
Na 3mg 1mg
K 24mg 70mg
Ca 24mg 8mg
鉄分 0.8mg 0.2mg
亜鉛 0.5mg 0.095mg
Se 0.1mg ?
全vitamin A 50 IU 31 IU
カロチン 301 IU(μg) (55)
VB1(thiamine) 0.01mg 0.03mg
VB2(riboflavin) 0.02mg 0.03mg
全ナイアシン 1.1mg 0.2mg
VB6 0.01mg 0.05mg
VB12 0mg 0mg
全葉酸 63μg 12μg
VC 9.1mg 9mg

*ニュージランド食品組成表(NZ Food Composition Table 3rd Edition)から引用
**国内産ハイブッシュブルーベリー:五訂日本食品標準成分表-新規食品編(科学技術庁資源調査会・編)から引用

boysenberryの食物繊維は、果物中でも際だって多く含まれている。vitamin Aやカロチンは、他の果物との比較で多く含まれており、ナイアシンやvitamin Cも比較的多く、boysenberryはビタミン類摂取の上で、バランスのよい果物であるといえる。boysenberryの特徴の一つは、葉酸含有量の多さである。葉酸はvitaminB12とともに核酸やアミノ酸の代謝にとって重要であり、細胞や組織の代謝にも必要である。

フェノリックス(phenolics)は、クマリン(coumarin)、イソフラボン(isoflavone)、フラボノー(flavanols)アントシアニジン(anthocyanidin)を含む生理活性成分の総称である。そのル生理作用として、isoflavonesは更年期・月経閉止期障害改善、flavanolsは抗酸化作用、anthocyanidinは血液循環・抗酸化作用のあることが報告されている。boysenberryはphenolicsを含有することも特徴の一つである。

エラグ酸(ellagic acid)は、ゲンノショウコの葉や茎に含まれているポリフェノール性物質で、抗酸化作用がある。古くからゲンノショウコは健胃・整腸に有効な薬草として使用されてきた。ellagic acidはその他、ユーカリ、菱の成熟実など植物に広く分布するとされているが、boysenberryにも含まれている。ellagic acidには過酸化脂質の生成を抑え、抗老化・抗ガン化の作用があると報告されている。またellagic acidには強力な抗変異原性作用が認められているが、これは天然には殆ど結合型のHHDP基として存在している。

生体での活性酸素の作用は、癌、心臓血管疾患、各種の病気発生に関与している。生体での活性酸素の作用を抑制する酸化防止に、anthocyanin等のflavanol類が作用することが明らかにされた。boysenberryはphenolics、anthocyanosideを多く含有し、酸化防止効果は特に優れており、blueberryの6倍以上とする報告もされている。

1)ニュージーランド ボイセンベリー資料:久保村食文化研究所;http://www.kubomura.org/kfc/boysenberry_1.pdf,2007.2.8.
2)奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典-機能性食品・特定保健用食品-;東洋医学舎,2004・2005
3)中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
4)田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002

   [015.9.BOY:2007.2.26.古泉秀夫]