「アクロレインについて」
土曜日, 1月 28th, 2012
KW:薬名検索・アクロレイン・acrolein・アクリルアルデヒド・acrylic aldehyde・2-プロペナール・2-propenal・プロペンアルデヒド・propenaldehyde・脳梗塞・予知・
Q:脳梗塞の予知目的で血液中のアクロレインの測定がされると聞いたが、アクロレインとはどのような物か。
A:アクロレイン(acrolein)=アクリルアルデヒド(acrylic aldehyde)。[別名]アクロレイン、2-プロペナール (2-propenal)、プロペンアルデヒド (propenaldehyde)。CH2=CHCHO:56.07。CAS:107-02-8。最も低級な不飽和アルデヒド。刺激臭を有する無色、可燃性の液体。融点?87℃、沸点52℃。多量の水に可溶、アルコール、エーテルに易溶。油脂の熱分解によって生成し、実験室的にはグリセリンを硫酸水素カリウム、硫酸マグネシウム等を用いて脱水して得られる。
医薬品、繊維処理剤、アクリロニトリル、グリセリン、樹脂中間体、架橋結合剤等の原料。
熱、炎により分解、毒性の高い煙を発生し、眼、鼻、呼吸器系を激しく刺激する。気中濃度0.1ppmで刺激を感じ、涙を流す。ヒトで153ppm、10分間で死亡したという報告がある。許容濃度0.1ppm(産衛学会)。
acroleinはラット経口毒性LD50:82mg/kg、ウサギ経皮毒性LD50:250mg/kgと、毒性が強いほか、可燃性も強く、取り扱いには十分注意する必要がある。日本では毒物及び劇物取締法で原体が劇物に、消防法により第1石油類に指定されている。また重合を起こしやすいため、市販の物には重合停止剤としてヒドロキノンが含まれていることが多い。純粋なものが必要なときには、蒸留などで精製する必要がある。食用油を使って揚げ物等の調理作業を長時間行ったために気分が悪くなる現象を「油酔い」と呼ぶ。「油酔い」は加熱分解された油脂から発生するacroleinが原因だとされている。
acrolein(ACR)は非常に反応性の高いアルデヒドで、体内の蛋白質が有するアミノ酸残基などの求核基と反応して、発癌性等の生体毒性を示すと考えられている。ACRの起源は、従来、プラスチックあるいは食用油の加熱、タバコの燃焼、シクロホスファミドの生体内代謝などによると考えられている。煙草の煙中に含まれるaldehydeの中でACRの刺激性が一番強い。シクロホスファミドの副作用として出血性膀胱炎があるが、これはシクロホスファミドの代謝産物の一つであるACRが原因であると考えられている。
最近、ACRはin vitro における脂質の過酸化反応において、その生成が証明され、更にヒトの動脈硬化巣における存在が確認された。 抗ACRモノクローナル抗体は、ACRと蛋白質のリジン残基との安定な反応物[Nε-(3-formyl-3,4-dehydropiperidino)-lysine 構造〕を認識する。動脈硬化症、発癌等の病態究明研究などに、広く利用可能だとしている。
自覚症状の無いいわゆる隠れ脳梗塞は、MRI等の検査を受けなければ発見できないが、現在、血液中のacrolein量を測定することで、予測が可能であるとされている。まだ、一般的な検査では無く、保険適用は無いが、MRI検査を受けるよりは遥かに安い経費で検査が可能であり、検査の結果により精密検査を受けるか受けないかの判断を得ることが可能だとされている。
1.志田正二・編集代表:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1985
2.最新医学大辞典 第3版;医歯薬出版株式会社,2005
3.内藤裕史:中毒百科 -事例・病態・治療-改訂第2版;南江堂,2001
[011.1.ACR:2011.12.29.古泉秀夫]