『賛成しかねる-外来受診100円上乗せ』
金曜日, 11月 25th, 2011魍魎亭主人
厚生労働省は12日、『外来患者の窓口負担に一律100円を上乗せする“受診時定額負担制度”』を導入する案を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療保険部会で提示した。1ヵ月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合に払い戻しを受ける高額療養費制度で、癌患者が受ける長期高額医療などの負担軽減に充てる考えだという。同省は年内に結論を得て、来年の通常国会に関連法案の提出を目指す方針だという。
受診時定額負担は、初診や再診のために病院を訪れる全ての患者が負担するもの。一律100円負担が導入された場合、増収額は約1,300億円を見込んでいるという。[読売新聞,第48730号,2011.10.13.]
高額療養費制度における癌患者の長期高額医療の負担軽減のために、一般の患者が通院のたびに100円の支払いをするという方式が、厚生労働省の云う“受診時定額負担制度”だそうである。病人が病人のために、自分の治療とは係わりのない金を取られるというのはどういうことか。病人の中には、年金生活者もいれば、生活保護の受給者もいる、通院治療のため、正常な勤務時間の確保が出来ず、定職を辞し、時給で稼いでいる人達もいるはずである。そういう人達からも受診時定額負担金を徴収するというのか。
また、高齢者の場合、1箇所の診療機関では間に合わないことが多い。別に趣味で病院の掛け持ちをしている訳ではなく、診療科が細分化されている分、受診科が増えるという構図であり、膝痛たの整形外科受診を、循環器科で代行する訳にはいかない。せめて総合診療科でもあれば、内科は一纏めに出来るのかもしれないが、開業医の集団みたいな仕組みになっているところが多い総合病院では、結局は何回にも分けて通院することになってしまう。所でそのたびに受診時定額負担金を徴収されたのではたまったものではない。高齢者といえども、国保の負担金は支払っている。尤も、この考え方の根っこには、医療機関を彷徨い歩く高齢者の受診抑制を図りたいという思いが隠されているのだろう。
癌患者の医療費負担が大変なのは事実である。しかし、それを受診する他の患者が分担するという理屈は立たない。更に今後益々高額な医療費を必要とする治療が増加すると考えられるなかで、継ぎ接ぎだらけの補填方式を何時まで続ける気なのか。不足する金額を他の患者に振り分け続けることは困難であり、そのような姑息な考え方では本質的な解決にはならない。例えば、今後移植医療が増えてくることは間違いない。再生医療が増加すれば、当然、普遍化されるまでは高額な医療費が請求されることになる。この際、何処までが保険で、何処までが自己負担になるのか。全てを税金でまかなうとすれば、それこそ特別な税金を制度として導入しない限り間に合わない。何処まで税負担が可能なのか、国民の覚悟を聞いてみなければならない。
(2011.10.19.)