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「エチレンクロロヒドリンについて」

月曜日, 11月 14th, 2011

 

KW:薬名検索・エチレンクロロヒドリン・ethylene chlorohydrin・ECH・2-クロロエタノール・2-chloroeyhanol・2-クロロエチルアルコール・2-chloroethyl alcohol・グリコールクロロヒドリン・glycol chlorohydrin

Q:エチレンクロロヒドリンについて

A:エチレンクロロヒドリン(ethylene chlorohydrin:ECH) 99.0%以上を含有する。別名:2-クロロエタノール(2-chloroeyhanol)、2-クロロエチルアルコール(2-chloroethyl alcohol)、グリコールクロロヒドリン(glycol chlorohydrin)。ClCH2CH2OH=80.51、C2H5ClO。CAS No.107-07-3。本品はエチレンと塩素の混合ガスを水に通じて生成させる。工業製品は純度42.5%の含水物(共沸混合物、沸点96℃)が多いが、無水物とすることも出来る。無色油状の液体。水と混和してエチレングリコールや殺虫剤の製造原料。馬鈴薯や葡萄などの発芽促進剤として使われる。

本品は毒物劇物取締法「劇物」、消防法「危険物第4類引火性液体 第二石油類 水溶性」。
本品は無色の液体で、芳香がある。蒸気は空気より重い。引火点:60℃、爆発範囲:4.9-15.9%、沸点:128.6℃、比重:1.202。水に任意の割合で混和する。 本品は引火性液体及び蒸気である。水生生物に対する毒性は、長期的影響により水生生物に毒性を発現する。

エチレンクロロヒドリン(ECH)は、工業用原料や医療用器具の燻蒸殺菌などに広く使用されているエチレンオキシド(以下EO)の反応生成物である。食品へのEOの燻蒸殺菌については、香辛料、ハーブなどで報告事例)がある。殺菌処理後、使用したEOは揮散して食品からはほとんど消失するが、食品中の塩素化合物と反応して生成されたECHは残留することが報告されている。ECHの毒性についてはヒトに対する発癌性が指摘されているため、食品中の残留については問題がある。本品の毒性について、経口:飲み込むと有毒、経皮:皮膚に接触すると生命に危険、吸入:蒸気吸入は生命に危険、眼:強い眼刺激等の報告がされている。遺伝性疾患については、発生が疑われている。生殖能又は胎児に対する悪影響についても否定されていない。

吸収・排泄:全ての経路から吸収される。特に皮膚から急速に吸収される。酸化されてクロロ酢酸になり尿中に排泄される。

毒作用:鼻粘膜刺激、嘔気、嘔吐、頭痛、筋肉協調不能、昏迷、痙攣、及び呼吸停止により死亡。動物では、肝臓、腎臓及び肺臓の極度の損傷が見られる。皮膚に塗布すると、急激な致死作用。ラットの経口LD50は72mg/kg、許容限界値は5ppm、蓄積される。皮膚1ppm、3mg/m3。

応急措置をする者の保護:火気に注意する。有機溶剤用の保護マスクが有ればそれを着用する。

応急措置

直ちに胃洗浄。汚染された皮膚を十分に水で洗浄し、塩類下剤(水250mL中に硫酸ナトリウム30g)と保護剤。加圧下の酸素吸入。痙攣に対してジアゼパム5-10mgを緩徐に静注あるいは深く筋注。治療は補助療法かつ対症療法。12-18時間生存する場合は、通常完全に回復する。

吸入した場合:直ちに、新鮮な空気のある場所に移す。毛布等でおおって体を保温し、呼吸しやすい姿勢で安静にする。速やかに医師を受診する。呼吸していて嘔吐がある時は、頭を横向きにする。呼吸が止まっている場合、または呼吸が弱い場合には衣服を緩め、気道を確保した上で人工呼吸(又は酸素吸入)を行なう。

皮膚に付着した場合:直ちに、汚染された衣類、靴などを脱ぐ。皮膚を速やかに多量の水と石鹸で洗う。医師を受診する。皮膚刺激、発疹が生じた時、気分が悪い時は医師の手当てを受ける。汚染された作業衣は作業場から出さない。汚染された衣類は再使用する前に洗濯する。

眼に入った場合:直ちに、流水で30分以上注意深く洗う。その際、顔を横に向けてから緩徐に水を流す。水道の場合、弱い流れで洗う。水勢が強いとかえって眼に障害を起こすことがあるので注意する。目蓋を親指と人さし指で拡げ眼を全方向に動かし、眼球、目蓋の隅々まで水がよく行き渡るように洗浄する。コンタクトレンズを着用している場合、固着していなければ除去し、洗浄する。眼の刺激が持続する場合は、医師を受診する。眼の刺激が消失しても、遅れて障害が現れることがあるので、必ず医師を受診する。

飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡する。速やかに、口を濯ぎ、嗽をする。大量の水を飲ませ、指を喉に差し込んで吐かせる。痙攣や意識混濁がある時又は意識が朦朧としている時には嘔吐させない(窒息、吐物が気管に入って肺炎になることがあるため)。気分が悪い時は、医師を受診する。

予想される急性症状及び遅発性症状

吸入した場合:咳、眩暈、頭痛、吐き気、咽頭痛、嘔吐。
皮膚に付着した場合:吸収される可能性があるため、吸入時の症状に注意する。
眼に入った場合:発赤、痛み、重度の熱傷。
飲み込んだ場合:咳、眩暈、頭痛、吐き気、咽頭痛、嘔吐。

1)化学物質等安全データシート;昭和化学株式会社,平成23年8月1日改訂
2)志田正二・編集代表:化学辞典 普及版;森北出版株式会社,1985
3)山田洋子・他:食品中に残留するエチレンクロロヒドリンのGC/ECDによる分析;東京健安研セ年報 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 59:167-170(2008)
4)白川 充・他共訳:薬物中毒必携-医薬品・化学薬品・動植物による毒作用と治療指針-第2版;医歯薬出版株式会社,1989

            [63.099.ECH:2011.9.4.古泉秀夫]