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「紅麹による肝機能障害」

金曜日, 3月 4th, 2011

 

KW:健康食品・有害作用・紅麹・肝機能障害・紅麹菌・Red Yeast・ロバスタチン・lovastatin・モナコリンK・Monacolin・γ-アミノ酪酸・GABA

Q:紅麹の有害作用として肝機能障害は在るか

A:紅麹菌(Monascus purpureus Went)は、英名をRed Yeastといい、不整子嚢菌綱(Plectomycetes)ベニコウジカビ科(Monascaceae) Monascus属。
基原:Monascus pilosus、M.purpureus、M.ruber、M.ankaなど。Monascus属の糸状菌及び蒸し米などに培養した麹米。

使用部位:麹菌全体もしくは抽出物。

有効成分:Monacolin J、K(=lovastatin;ロバスタチン;モナコリンK)、L、M、γ-アミノ酪酸(GABA)、色素(黄・赤を主とする10種以上の色素の混合物)。原料となる米に紅麹菌を植菌、培養、回収し失活させた物である。

作用機序:モナコリン類はmevalonic acidの合成酵素であるHMG-CoA reductase(還元酵素)を阻害する作用があり、コレステロール合成を減少させる。Monacolin Kをlead化合物にしてコレステロール合成阻害の医薬品(simvastatin)が開発された。

紅麹菌が産生するlovastatinが、コレステロールを合成するHMG-CoA還元酵素の作用を阻害することは既に述べたが、HMG-CoA還元酵素を阻害することにより血中のコレステロール値を下げる。同じスタチン系の薬剤が医薬品として利用されている。紅麹色素に含まれるγ-アミノ酪酸(GABA)が、交感神経の抑制、血管拡張及び抗利尿ホルモンの抑制により、血圧の正常化に作用する。
相互作用:紅麹はHMG-CoA還元酵素を阻害する作用が認められており、高脂血症治療薬の作用を強め、薬の必要量を減少させることが期待できるが、併用する場合には注意する。

有効成分含有量:紅麹粉末1g中にロバスタチン1.5mg、γ-アミノ酪酸0.2mg(計算値)。

有害作用:3ヵ月までの経口による使用では殆どの事例で有害作用は見られなかった。更に長期になった場合はnon dataのため判断不能。胃の不調、胸焼け、鼓腸、眩暈、肝機能障害を惹起する可能性。稀に重篤な肝障害。紅麹を吸い込んだ後、重篤なアレルギー反応を生じる可能性がある。18歳未満の小児については安全性未確認、摂取禁止。妊婦・授乳婦は摂取禁止。肝臓疾患の者は摂取禁止。紅麹摂取者はalcoholの飲用により肝機能障害の危険性上昇。コレステロール降下作用を有するStatin系薬剤を服用中の者では紅麹の摂取は禁止。

CYP3A4の基質となる医薬品は、肝臓における紅麹の代謝を抑制する可能性がある。このような医薬品の服用者が紅麹を摂取すると、紅麹の作用が増強され、有害作用が強く発現する可能性があり、医薬品服用中の者では、紅麹の使用前に、医師、薬剤師に相談する。

その他、紅麹の有害作用について次の報告がされている。

*紅麹の副作用として頭痛、胃炎、腹部不快感、筋肉痛、腎障害、肝臓酵素活性の上昇を惹起することがある。臨床試験ではその他に胸焼け、鼓腸、眩暈などの副作用はあったが試験を中止するほどではなかった。
*肝不全患者およびそのリスクのある人、肝機能検査で異常が見られた人は使用を避ける。
*紅麹に含まれるメビニン酸により、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(Statin系薬剤)と同様の横紋筋融解が起きることが考えられる。
*simvastatin(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)40mg/日の使用による筋障害の経験を有する高脂血症の女性(61歳)が、紅麹のハーブ製剤を1,200mg/日、約3ヵ月間摂取したところ、激しい広範囲の筋痛と血清クレアチンキナーゼ値の上昇を示したという報告がある。
*62歳女性がモンテルカストナトリウム(気管支喘息治療薬)とフルオキセチン(抗うつ薬)を併用し、さらに紅麹米600mg/カプセルを2カプセル/日、4ヵ月程度摂取したところ、吐き気、嘔吐、下痢、悪寒、発熱などの症状を10週間呈した後、症候性肝炎と診断された。症状は紅麹米の摂取中止により改善した。

1)吉川敏一・他編:医療従事者のためのサプリメント機能性食品ガイド;講談社,2004
2)北川 勲・他:食品薬学ハンドブック;講談社サイエンティフィク,2005
3)田中平三・他監訳:健康食品のすべて;同文書院,2006
4)「健康食品」の有効性・安全性情報;http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail62.html,2011.1.5.

    [015.9.MON;2011.1.5.古泉秀夫]