「トリメチルアミンについて」
土曜日, 2月 5th, 2011KW:薬名検索・トリメチルアミン・trimethylamine・仮性アレルギー・食物アレルギー様症状・偽アレルギー反応
Q:エビ・カニ・イカ等に含まれるとされるトリメチルアミンと仮性アレルギーについて
A:トリメチルアミン(trimethylamine)、(CH3)3N=59.11。CAS-75-50-3。略号:t-MA。別名:N,N-ジメチルメタンアミン(N,N-Dimethylmethanamine) 。
第3級アミンの一つ。天然に広く存在し、動植物質が分解するときに生ずる。その母体としては、グリシンベタイン、トリメチルアミンオキシドコリン又はレシチンなどが考えられる。
合成する場合、塩化アンモニウムをホルムアルデヒドと熱して製造する。刺激性の魚類臭を持つ無色の気体。融点?124.0℃、沸点3.5℃、塩基性が強い。悪臭防止法による指定物質で、発生源は畜産農業、複合肥料製造業、魚腸骨処理場、水産缶詰製造業など。
また広く天然に分布している物質で、植物界ではバラ、キク等の花、穀物のカビ、またテンサイ糖蜜の濃縮液中にも存在する。動物界では、海魚、甲殻類の腐敗の際に生じる。この他、肝油、ゼラチン、チーズの腐敗の際にも生じるとする報告も見られる。
食物(果物・野菜・魚類・甲殻類)の中に自然な形として薬理活性をもつ物質が含まれている。これらの物質は免疫反応を介さずにアレルギー類似の反応を惹起するので、仮性アレルゲンと呼ばれ、通常の食物アレルゲンとは区別されている。
仮性アレルゲンには、血管作動性物質や神経伝達物質、あるいはそれらの前駆物質が多く含まれていたり、肥満細胞をはじめとする炎症細胞を非特異的に刺激して化学伝達物質を遊離させるような物質が含まれており、非アレルギー機序による食物アレルギー様症状(偽アレルギー反応)が起こる。
□仮性アレルゲンを多く含む食物
?薬理活性をもつ物質(果実・野菜)
化学物質 | 果実・野菜 |
histamine | 茄子、ホウレン草、トマト、えのき茸、玉蜀黍、セロリ、筍、馬鈴薯 |
serotonin | トマト、バナナ、キウイ、パイナップル |
acetylcholine | 茄子、トマト、筍、里芋、山芋、クワイ、松茸、ピーナッツ、栗 |
tyramine | アボガド、バナナ、オレンジ、トマト |
histidine | ピーナッツ、アボガド |
nicotine | 馬鈴薯、トマト |
tryptamine | トマト、プラム |
?サリチル酸化合物(果実・野菜)
トマト、キュウリ、馬鈴薯、苺、林檎 |
?薬理活性をもつ物質(魚類)
化学物質 | 魚類 |
inolin | 秋刀魚、鱈、鮭 |
trimethylamine oxide | エビ、蟹、烏賊、蛸、浅蜊、蛤、鰈、鱈、鱸 |
histidine | 鯖、鰹、鮪、鰯 |
甲殻類あるいは烏賊等に含まれるtrimethylamineは、仮性アレルゲンの一つであり、免疫反応を介さずにアレルギー類似の反応、つまりアレルギー様症状を発現する物質である。
trimethylamine oxide:トリメチルアミンオキシド=トリメチルオキサミン。(CH3)3NO=75.11。本品の二水塩は針状結晶で潮解性を示す。水、エタノールに可溶、強いアルカリ性を示す。海産物の体内に広く分布する。軟骨魚類では筋肉や体液中に含まれ、鰓を透過せず、また尿細管で再吸収されるので、体内に保持され、細胞と体液間及び体液と外界間の浸透濃度平衡を保つのに役立っている。また甲殻類では体内で合成されるが、魚類では合成されず、食物に由来するものと考えられているの報告が見られる。
1)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999
2)小林陽之助・監修:食物アレルギーの治療と管理;診断と治療社,2004
3)今堀和友・他編:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
[011.1.TRI:2009.12.27.古泉秀夫]