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「葉酸錠の相互作用について」

水曜日, 1月 5th, 2011

KW:臨床薬理・相互作用・葉酸錠・folic acid・フォリアミン錠・ヨモギ・ヨモギ茶

Q:関節リウマチということで、メトトレキサート錠と葉酸錠を処方されている。陰干ししたヨモギの葉を煎じ、ヨモギ茶として飲用していると言ったところ、葉酸との間に相互作用があるため好ましくないと言われたが、どのような作用があるのか

Q:葉酸(folic acid)の製品であるフォリアミン錠(日本製薬)の添付文書中に相互作用に関する記載は何らされていない。

葉酸(C19H19N7O6=98.0-102.0%)は、黄色?橙黄色の結晶性の粉末で、臭いはない。本品は水、メタノール、エタノール(95)、ピリジン又はジエチルエーテルに殆ど溶けない。本品は塩酸、硫酸、稀水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム+水和物溶液(1→100)に溶け、液は黄色になる。本品は光によって徐々に変化する。本品は明確な融点を示さず、約250℃で炭化する。水又は有機溶媒に溶け難く、酢酸、フェノール又はピリジンにあ程度溶ける。 本品は両性化合物で、1gは塩酸3mL、稀水酸化ナトリウム試液約40mLに溶ける。

本品の水溶液は、遮光、pH約6.8で、また、酸化性又は還元性物質が共存しなければ安定である。この水溶液に紫外線又は直射日光を当てると、蛍光を発する生理的に不活性な物質に分解する。

本質:増血薬、葉酸。名称:Folic Acid、叶酸(yesuan)L-Glutamic acid。

来歴:Dayら(1935)はサルの貧血状態に乾燥酵母あるいは肝エキスを与えると回復することを認め、これらの抽出物中の未知の有効因子をvitamin Mと名付けた。その他酵母エキスから溶離した因子が雛等の発育に不可欠であることを知り、これをNorit eluate factorと名付けた。Mitchellら(1941)はこれらをほうれん草から分離し、folic acid(葉酸)と名付けた。葉酸作用を現す天然物質は種々存在するが、各国薬局方ともpteroylmonoglutamic acid のみを取り上げている。動植物界には葉酸のグルタミン酸基と2-6個のグルタミン酸がペプチド結合した形で見いだされる。このペプチド結合は組織中の酵素により分解されて葉酸になる。このvitaminは酵母、糸状菌、肉、肝臓、緑野菜などに含まれる。

体内動態:経口投与された葉酸は主に小腸上部から、少量の場合は能動輸送で、大量の場合は受動輸送によって、そのままの形で比較的速やかに吸収される。ヒトに3Hで標識した葉酸を経口投与すると、50-60%が尿、糞便中に排泄される。一方、静脈注射では、短時間のうちに血漿中から大部分は消失するが、組織親和性が強く、1回の体循環でその60%が組織中に取り込まれるので、尿中排泄は著しく少ない。ヒトの体内には5-10mgの葉酸があり、その1/3は肝に主にN5-メチルテトラヒドロ葉酸として存在している。

薬効:vitamin B12と共に、生態の組織細胞の発育及び機能を正常に保つのに必要で、特に赤血球の正常な形成に関与し、巨赤芽球性貧血に際して網状赤血球及び赤血球の成熟をもたらす。抗貧血因子とも呼ばれるテトラヒドロ葉酸となって、プリン、チミジル酸、アミノ酸などにおける補酵素として働いている。本薬やvitamin B12 の欠乏は骨髄成分の成熟停止を起こすとされる。

副作用:時に食欲不振、悪心などの症状、紅斑、掻痒感、全身倦怠等のアレルギー症状が現れることがある。浮腫、ときに体重減少が現れることが

適用:葉酸欠乏症の予防及び治療、葉酸の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦など)、吸収不全症候群(スプルーなど)、悪性貧血の補助療法、アルコール中毒及び肝疾患に関連する大血球貧血、再生不良性貧血、顆粒球減少症などに投与される。また栄養性貧血、妊娠性貧血、小児貧血、抗痙攣薬・抗マラリア薬投与に起因する貧血で、葉酸の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合にも用いられるが、効果が見られなければ漫然と投与すべきでない。成人1日5-20mg、小児1日5-10mgを2-3回に分割経口投与する。一般に消化管に吸収障害がある場合、あるいは症状が重篤な場合は、成人1回15mgを1日1回皮下又は筋肉内投与する。

悪性貧血の場合、血液状態は改善するが、神経症状に効果がないので、vitamin B12製剤と併用する。また、診断の確立していない悪性貧血の患者では、血液状態の改善により悪性貧血を隠蔽し、診断及び治療に影響を与える為、注意が必要である。

ヨモギに関しては次の報告がされている。

基原:キク科(Compositae)の多年生草本。(ガイ)の乾燥した葉。原植物Artemisia argyi Levl.et Vant.。氷台(ヒヨウダイ)、蒿、医草、灸草、黄草、草蓬、蓬。日本各地に分布する。

来歴:「本草綱目」に葉(ガイヨウ)の記載があり、これで灸をすると諸経に透り、諸処の病気を治す。長患いの人も健康になるので、その効能は大きいとされている。また「本草彙言」には葉は血を暖め、経を温め、気を行り鬱を開く薬である。

用途・品質:芳香があり、味は僅かに苦く、辛いもの、臭いが強いものが良品とされる。薬用として慢性肝炎、肺結核喘息症、慢性気管支炎、急性赤痢、腹痛、吐瀉、出血などに用いられる。民間では草餅の材料、お灸のモグサ等として使用される。
また青汁や粉末は健康食品として糖尿病の改善、コレステロールの低下、血圧の低下、便通をよくする目的で使用される。

成分:主成分として精油成分のモノテルペン:1,8-cineole(25-30%)、terpinene-4-ol、α-pinene、camphene等の他、フェニルプロパノイド:eugenol、perillaldehyde、フラボノイド:quercetin、naringenin等を含む。またvitamin Aを初めとする各種vitamin類、鉄、リン等のミネラル類、カルシウムなどを豊富に含む。平喘効果の比較的よい成分はデルピネン-4-オールである。その他野(Artemisia vulgaris L.)はその他の植物に比べてヨウ素をかなり多く含むので、土壌の中からバリウムを比較的吸収し易い。

風干した葉は鉱物質10.13%、脂肪2.59%、蛋白質25.85%からvitamin A・B・B2・C等を含む。

薬理:抗菌作用、免疫増強作用、平喘作用、抗アレルギー作用、鎮咳・去痰作用、血液凝固・血小板凝集作用、利胆作用、子宮興奮作用等が報告されている。
その他、禁忌として「オウシュウヨモギは妊娠中・授乳中に用いてはならない」とする報告が見られる。

その他、相互作用に関する資料についても調査したが、葉酸とヨモギに関する相互作用は報告されていない。

以上の報告から『葉酸服用中に風干したヨモギ茶を飲用すること』に特に問題はないと考える。

1)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2010
2)奥村勝彦・監:一目でわかる医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とマネジメント 改訂版;フジメディカル出版,2007
3)古泉秀夫・他編:改訂3版 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用;薬業時報社, 2008
4)北川 勲・他:食品薬学ハンドブック;講談社サイエンティフィク,2005
5)第十五改正日本薬局方解説書;廣川書店,2006
6)中薬大辞典[1];小学館,1998

 

[015.4.FOL:2010.10.2.古泉秀夫]