トップページ»

『開発段階のアルツハイマー病治療薬』

日曜日, 12月 5th, 2010

KW:薬名検索・アルツハイマー病治療薬・T-817MA・LY450139・SMSN-001・KMI-1027・KMI-1036・CTS-21166

Q:開発段階のアルツハイマー病治療薬について

A:調査可能範囲で、次の報告が見られる。

治験記号・薬品名(会社名) 開発段階 特記事項

CTS-21166
(アステラス製薬)

前臨床段階(国内)。第I相臨床試験(米国)

本品は米・コメンティス社が開発したβ-セクレターゼ阻害作用を有する次世代アルツハイマー病治療薬である。本品はアルツハイマー病の原因蛋白質であるβ-アミロイドの病因説に基づいた治療薬として期待されている。Tg2576トランスジェニックマウスの試験で、300mg/kgの単回経口投与で脳内可溶型β-アミロイド40を23%低下させ、10-100mg/kg1日2回5日間の経口投与で大脳皮質内β-アミロイド42を15-20%低下させた等の報告が見られる。

E-2020(エーザイ)
donepezil hydrochloride
(ドネペジル塩酸塩)

製造承認申請中 新剤形として経口用ゼリー剤の追加。本剤はエーザイが創薬したacetylcholine esterase阻害剤。神経伝達物質である脳内acetylcholine濃度を高める作用を持つ。高齢者等の服薬困難者を対象にした剤形の追加。

KMI-1027/KMI-1036
(京都薬科大学)

 

京都薬科大学21世紀COEプログラムの木曽教授らが創製したアルツハイマー病治療剤である。beta-amyloid(Aβ)を産生する酵素の一つであるBACE1に着目した遷移状態アナログをリード化合物に用いて設計した非ペプチド性BACE1阻害剤である。本品はいずれも2μMでBACE1を96%阻害し、IC50値はそれぞれ50、96nMであったと報告されている。

LY450139
(米・イーライリリー)

第III相国際共同臨床試験(米国等) 本品は蛋白質を切断し、より短い凝集性蛋白質のbeta-amyloid(Aβ)を作り出す酵素γ-secretaseを阻害する。γ-secretaseを阻害することによりAβの産生を抑制し、脳細胞の破壊を遅らせる可能性があると報告されている。本品はin vitro、in vivoのいずれにおいても一定濃度以上でAβを低下させ、低濃度では上昇させた。剤型:経口。
PBT2   本品のランダム化比較試験を行った結果、同薬により遂行能力の指標のうち2項目が改善し、β-アミロイド蛋白の脊髄液濃度を低下させることができた[Lars Lannfel・et al;Lancet Neurology(2008;7:779-786)]に発表した。本品はβ-アミロイドと亜鉛イオン・銅イオンとの相互作用を妨げることで、作用を発揮する[Medical Tribune,41(42):3(2008)]。

PF-4360365
(米・ファイザー)
RN-1219・RI-1219

第I相臨床試験段階 アミロイドβ-ペプチドを標的としたアルツハイマー病ヒト化モノクロナール抗体。本抗体は、ファイザー社が開発したアミロイドβ-40(Aβ)を標的とするヒト化モノクロナール抗体であり、日本でもファイザー社がアルツハイマー型認知症を対象に臨床試験を進めている。剤形:静注剤。現在国内において軽度-中等度アルツハイマー病患者に対する第I相試験が行われている。

SMSN-001
(東京理科大- 理論創薬研究所)

  本品はアルツハイマー病の原因物質beta-amyloid(Aβ)を産生する酵素の一つであるBACE1を阻害することによって、Aβの産生を抑制しアルツハイマー病を治療することを目的とする。本品はin silico空分子設計手法によりBACE1低分子阻害剤のリード化合物を探索した結果、導出された。

SUN Y-7017(第一三共)
memantine hydrochloride
(メマンチン塩酸塩)

第III相臨床試験

独・メルツ社が開発したグルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体への拮抗作用を示す、新しいカテゴリーのアルツハイマー型痴呆治療薬であり、これまで上市された治療薬にはなかった高度アルツハイマー型痴呆の治療薬として大きな期待がもたれている。経口剤。錠剤。神経伝達物質acetylcholineの分解酵素を阻害するdonepezil とは作用機序が異なり、小規模オープン試験で両薬の併用による上乗せ効果が示唆されていたとする報告が見られる。

T-817MA(富山化学) 第II相臨床試験準備中(米国) 富山化学が開発した神経保護作用を有するbenzothiophen誘導体である。アルツハイマー型認知症の発症・進展にbeta-amyloid(Aβ)peptideの蓄積による神経毒性が関与するが、本品はin vitro、in vivoにおいてAβによる神経細胞死を抑制し、記憶障害を回復させたと報告されている。剤型:経口。

 

 

1)New Current,19;11,2008.5.10.
2)New Current,19;10,2008.5.1.
3)New Current,19;18,2008.10.
4)New Current,19;22,2008.10.

 

[011.1.ALZ:2009.2.10.古泉秀夫]